水道水フッ素化を理解するために質問と解答とその解説

インターネットで世界中に正しい情報を提供する
アメリカ歯科医師会編最新のFluoridation Facts
(1999年版)を引用して

説明、写真、図、表を補足してできる限り
わかりやすく構成しました。


翻訳
山下文夫 宮崎県子供の歯を守る会(左)
川崎浩二 長崎大学歯学部予防歯科 他


フロリデーションファクツとは、水道水フッ素化に関してよく尋ねられる質問にお答えするために、これまで世界中で発表された論文を要約してアメリカ歯科医師会がインターネットで世界中の人々のために情報を提供しているものです。
※本文中のコメントは山下の書いたもので、内容についての一切の責任は山下文夫にあることをお知らせします。


 

目次
はじめに   訳 山下文夫 (宮崎県子供の歯を守る会)
   背景
   水道水フッ素化の支持
   水道水フッ素化に関しての科学的情報
   水道水フッ素化の歴史
   公衆衛生対策としての水道水フッ素化
   むし歯減少における水道水フッ素化の役割
   水道水フッ素化の今後の必要性
   米国の健康行政機関と研究機関
利益 訳 山下文夫
   1.フッ素とは
   2.水道水フッ素化とは何か
   3.天然フッ化地区と水道水フッ素化地区における効果
   4.これ以上の証拠が必要か
   5.中止したら
   6.今でも効果が
   7.むし歯はまだ大問題
   8.成人への利益
   9.日常の補助剤(フッ素錠)
   10.二者択一
   11.ボトル詰の飲料水
   12.家庭でのろ過システム
安全性 訳 川崎浩二、西山 毅、古堅麗子、福本恵美子、田中景子、
        矢野真理子、菊池有一郎 富樫久美子 (長崎大学歯学部予防歯科)

   13.人間への偽害性
   14.もっと研究が必要か
   15.全ての摂取
   16.1日の総摂取量
   17.身体の摂取
   18.骨の健康
   19.歯牙フルオロージス
   20.フルオロージスの予防
   21.毒性
   22.癌
   23.酸素効果
24.アレルギー
25.エイズ
26.遺伝子リスク
27.ダウン症
28.神経障害
29.アルツハイマー
30.心疾患
31.腎疾患
32.水質
33.工学
公共施策  訳 山下文夫
   34.重要な方法
   35.裁判所の判例
   36.反対派
   37.インターネット
   38.住民投票
   39.国際的な水道水フッ素化
   40.ヨーロッパでも禁止していない
費用効果比 訳 山下文夫
   41.費用−効果比の高い方法
   42.現実的な予防法
参照  1〜237、 ※1〜4



はじめに

背景  

1956年、米国歯科医師会はフロリデーションファクツを発行しました。その後も定期的に更新しながら水道水フッ素化に関しての疑問に答えています。1999年版では米国歯科医師会担当委員会が個人及び団体に対して水道水フッ素化について最新情報を提供しています。現在、米国では水道水フッ素化を実施して50年以上の経験があります。水道水フッ素化が長く続いてきたのは、公衆衛生予防法としての重要性がよく認識されているからなのです。  
 
フッ素と水道水フッ素化の重要性について
.保健団体、科学団体、そして一般住民の大多数が水道水フッ素化を人類に役立つものと考えています。 .フッ素はむし歯を予防します。すべての土壌や水にはある程度の天然のフッ素が含まれています。もし公共の飲料水がフッ素不足(0.7ppm以下)であれば、むし歯予防のための推奨レベル(0.7〜1.2ppm)にするためにフッ素を添加して天然レベルのフッ素を調節することが必要なのです。(※1リットル中に1mg含まれている濃度を1ppmと言います)


.水道水フッ素化は子供にも成人にも利益を与える地域ぐるみの健康法です。− 至適フッ素濃度の飲料水を飲むだけで、収入差、教育レベルの差、人種等に関係なく地域の人々すべてに利益を与えるのです。単に歯科管理に利用しているのではありません。

.水道水フッ素化は世界中で広く利用され、約60ヶ国、3億6千万人以上の人々のむし歯予防に役立っています。米国では1万の地域の1億4千5百万人が利用しています。

.他の栄養素と同様に正しい利用で、フッ素は安全かつ効果的なものなのです。時々、反対派がその安全性と有効性に疑問を投げかけます。しかし、世に認められた科学でその反対派の言い分が実証されたことは1度もありません。水道水フッ素化の経験は50年になりましたが、水道水フッ素化が安全かつ有効であることを数多くの科学的研究が証明しています。

年間一人当り約50セントが平均的な規模の地域における水道水フッ素化の費用です。一生涯のフッ素化の予防費用は、わずか一回分の充填治療費にすぎません。水道水フッ素化はとても費用―効果比が高い方法なのです。

.米国では住民投票においても水道水フッ素化を圧倒的に賛成支持するようになってきました。

水道水フッ素化の支持  

1950年以来、米国歯科医師会は、米国公衆衛生局に協力して、「水道水フッ素化を安全、効果的なむし歯予防の公衆衛生法」として心から支持推進してきました。フッ素化に関する米国歯科医師会の政策は、フッ素の安全、効果に関する長年の科学的研究の評価をベースとしています。つい最近、1997年、米国歯科医師会は、水道水フッ素化支持推進を再確認しました。公共水道のフッ素添加地域を広げることは住民に大きな恩恵を与えることができると考え、強く推進してきたのです。今日、水道水フッ素化は生涯のむし歯予防、口腔保健を向上する唯一の大きな効果のある公衆衛生法なのです。   

米国歯科医師会、米国公衆衛生局、米国医師会、WHOはすべて水道水フッ素化を支持推進しています。むし歯予防のため、水道水フッ素化の公衆衛生的利益を認める他の国立機関、国際保健機関、専門団体の名称は次の通りです。


米国小児科学会
米国小児歯科学会
米国科学振興協会(AAAS)
米国歯学研究会(AADR)
米国歯科大学協会
米国歯科公衆衛生学会(AAPHD)
米国歯学協会
米国科学健康会議
米国歯科助手会
米国歯科医師会(ADA)
米国歯科衛生士会(ADHA)
米国栄養士会
米国労働総同盟産業別組合会議米国病院協会
米国栄養研究所
米国医師会(AMA)
米国看護婦協会
米国整骨療法師会
米国薬剤師会
米国公衆衛生協会
米国公共福祉協会
米国学校保健協会
米国臨床栄養協会
米国小児歯科学協会
米国獣医師会
米国水道事業協会(AWWA)
米国保健所学会
米国州.広域地方歯科管理官会議
米国州.広域地方保健官会議
英国歯科医師会
英国水道水フッ素化協会
英国医師会
カナダ事故&疾病保険協会
カナダ歯科医師会
カナダ看護婦会
カナダ公衆衛生協会
[米国]公共利益科学センター
[米国]消費者連盟
カナダ医師会
[カナダ]厚生省
デルタ歯科計画協会
欧州むし歯研究学会(ORCA)
国際歯科連盟(FDI)
[米国]食品栄養局
英国保健省
米国健康保険協会
カナダ保健連盟
国際歯学研究会(IADR)
Mayoクリニック
[米国]国立科学アカデミー
[米国]国立癌研究所(NCI)
[米国]菓子製造協会
[米国]父母と教師会議
[米国]国立保健評議会
[米国]国立歯科衛生研究所(NIDCR)
[米国]国立研究評議会(NRC)
ニューヨーク医学会
英国王立医学協会
[米国]旅行者保険組合
米国農業省
米国国防省
米国環境庁(EPA)
米国青年商工会議所
米国公衆衛生局(PHS)    
防疫予防センター(CDC)、
食品医薬品局(FDA)、
保健資源サービス局、    
インディアン保健局、
国立衛生研究所(NIH)、
世界保健機構(WHO)
全米保健機構(PAHO)






水道水フッ素化に関しての科学的情報

米国歯科医師会の水道水フッ素化に関する政策は、世に受け入れられている科学的知 識をベースにしています。この知識は、全国的に認められた科学者が科学的手法を用 いて行った研究をベースとしているもので、それらの研究所見に基づいて適切なバラ ンスのとれた結論を導き出しており,世に広く流布しているレフリー制を有した(十 分な診査制を持った)専門雑誌に掲載されたものです。   
再三再四,反対派は水道水フッ素化の安全、効果について異を唱えましたが、一 般的に世に認められた科学により、彼らの反対意見は一つも実証されたことがありま せん。批評家の目でフッ素化についての情報をよく調べる時、考えておくべき鍵とな る要素を示しました。

1. 著者の経歴と専門家としての信用,資格がその研究分野における専門知識として反映 されるべきです。

2. 発表した時が明確であるべきです。研究計画がきちんとしている研究がその時代の試 練や科学的精査に耐えうるものであったとしても(たとえば水道水フッ素化について は効果を証明する膨大な数の証拠が既にそろっているように),情報は比較的に新し いものであるべきです。文献をレビュー(総説)することによって古い研究結果が後 の研究によって修正されたかどうかを知ることができます。

3. もしその情報が他のいくつかの研究の総説であれば、オリジナルの研究論文を記載す るべきです。その情報が直接他の資料から引用されたものであるのなら、そのまま全 体を引用すべきなのです。

4. 研究は水道水フッ素化に適用されるべきで、適正なタイプのフッ素と濃度を扱うべき です。多くの研究プロジェクトでは、水道水フッ素化の推奨されるよりもずっと高い フッ素濃度で研究しています。例えば、125ppmのフッ素濃度での研究結果を0.7ppm〜 1.2ppmの水道水フッ素化とは比較することはできません。

5. どのように研究が行われたかがはっきりしていること。in vitro(生体外)の実験は in vitro(生体内)の実験と同じ結果にならないかもしれません。

6. 動物実験は注意深い調査が求められます。動物実験(例えばケッ歯類)ではよく過度 のフッ素量が用いられます。さらに、こういった実験ではしばしば飲料水以外の方法 によってフッ素が投与されます(たとえば注射で投与する)。従って動物実験から得 られた結果を水道水フッ素化に使われているような低濃度フッ素に対する人間への不安を訴える予言材料として扱うことは非常に疑問であるといえます。

7. 科学情報を掲載している出版物は、科学的に正しい記事が出版されていることを確認 できるような編集調査委員会を設けなければなりません。

8. 出版物は医学歯学図書館で容易に入手できるようにしておくべきです。  

情報化の時代の到来とともに、“偽科学印刷物”もでてきました。人々はインター ネットホームページから流れる印刷物、編者への手紙の印刷を引用した科学的技術的 情報をよく見ています。人々は印刷物だという理由だけで正しい情報だと勘違いします。しかし、情報は科学的方法による研究にいつも基づいているはありません。そ してそのような研究から得られた結論はいつも科学的に正しいわけではないのです。 水道水フッ素化の場合、誤った情報が数多く出まわっています。それ故、すべての印 刷物や電子化された資料は結論を下す前にきちんと再吟味すべきです。偽科学印刷物 は読者の興味をそそるものかもしれませんが,科学として読まれる場合には読者を誤 った方向に導くのです。フッ素化反対派の主張する科学的に確実であるとか適正であ るという主張は米国最高裁が発表した判断基準に反して判断するならば正しく映るの です(質問36にこの話題に関するさらなる検討が掲載されています)。  

フロリデーション ファクトは、冊子の中にある番号をふった参考文献に示した適 正な論文の要約を利用してよくある質問とそれに対する回答形式にデザインして作成 されました。参照文献リストはこの冊子のページにあげています。この冊子は水道水 フッ素化とフッ素に関しての膨大な文献を含みそれをレビューするものではありませ ん。


水道水フッ素化の歴史
        
人類にとって有益なフッ素の調査は、1900年代の初期に始まりました。フレデリック.マッケイは若い歯科医でコロラド州のコロラドスプリングスで歯科医院を開業しました。彼はそこで人々の永久歯に不思議な茶色斑があることに気づいて驚きました。マッケイは歯科の文献でこの症例がないことに気づき、専門家のG.V.ブラックにこの研究協力を依頼したのです。この研究を通してブラック、およびマッケイはこれは歯牙発育途中の形成不全で発現することをつきとめ、ブラックがエナメル斑と名付けました(エナメル斑は歴史的な用語です。今日では、これを重度の歯牙フッ素症と呼んでいます)。ブラックとマッケイはまた、歯牙フッ素症の歯牙は驚くほどの高いむし歯抑制効果があることに気づいたのです。  

数年後、調査研究によってマッケイは、エナメル斑は飲料水の高濃度の自然のフッ素が原因であることを発見しました。マッケイの推論は米国公衆衛生研究所のトレンディ.ディーンによって研究が続けられました。ディーンはアメリカ合衆国の最初のフッ素の研究を企画しました。重度の歯牙フッ素症が発現しないのはどの程度の飲料水のフッ素濃度であるかを査定することを目的としていました。1936年までにディーンと彼のスタッフは、白斑、重度の歯牙フッ素症は発現しない基準値をフッ素濃度1ppmであることを発見したのです。ディーンは飲料水のフッ素濃度とむし歯減少の間に相互関係があることに注目したのです。(4,5) ディーンの発見の後、フッ素濃度不足の飲料水にフッ化ナトリウムを添加し、その評価を行うために地域研究が実施されました。最初の水道水フッ素化プログラムはミシガン州グランドラピッズ市で1945年に開始されたのです。(6、7)

 (※1.)

マッケイ先生
米国国立歯科衛生研究所
初代所長 ディーン先生


公衆衛生対策としての水道水フッ素化

数十年の研究及び50年以上の実用経験を通して、公共水道のフッ素添加は、すばらしい口腔公衆衛生の向上に大きな貢献を果しました。1998年、健康と幸せの向上の必要性が求められる時代にあって、米国公衆衛生局は、2010年までに成し遂げる(べき)国家的健康目標値を改訂しました。もちろんその目的には水道水フッ素化の普及拡大が含まれています。(8)
1994年、米国厚生省は公衆衛生の業績を調査した報告書を提出しました。小児麻痺の実質的な撲滅や子供達の血中鉛の減少など成功した公衆衛生政策とともに水道水フッ素添加が米国において最も経済的に成功した予防法のひとつとして称えられています。(9)
1995年、米国公衆衛生局は、水道水フッ素化は、最も費用効果比が高く、地域ぐるみのむし歯予防として安全で効果が高く、現実的な方法であることを再確認しました。(10)
至適濃度のフッ素添加飲料水を飲用するだけで社会的階層、人種差、教育レベル、所得レベルなどに関係なく子供から老人まですべての人々に恩恵を与えるのです。(11)
水道水フッ素化は所得差、教育差、人種差でその効果に差が出ません。水道水フッ素化は個人の予防行動の有無に関わりなくすべての人々が利益が受けられます。水道水フッ素化は、歯科管理している人だけに効果があるのではなく、すべての人々に利益があるのです。

むし歯減少における水道水フッ素化の役割  

水道水フッ素化とフッ素の局所応用法は、口腔保健向上に大きな役割を果してきました。研究によると水道水フッ素化は乳歯では60%もむし歯が減少し、永久歯では約35%の予防効果を示しています。むし歯の減った成人は高齢者となってもその歯が残存しますが、それは水道水フッ素化による恩恵なのです。ひとりひとりの歯科治療費も減少します。また、必要のない疼痛、その治療にかかる膨大な時間はなくなるのです。  

むし歯の原因となる歯垢、これは歯牙表面を常に覆ううすく粘着性の無着色の細菌性の残留物ですが、このことはよく知っておいて下さい。砂糖や炭水化物を摂ると、歯垢の細菌は、エナメル質を溶かす酸を産生します。酸が歯牙を繰り返し攻撃すると、エナメル質は壊れ、う窩(穴)が形成されるのです。むし歯の個人的な危険度の増大はいろんな要因があげられます。

.むし歯の新しい病歴
.口腔細菌数の上昇
.フッ素利用の不足
.根面露出
.砂糖と炭水化物の摂取
.口腔衛生の不良
.不十分な唾液流量
.歯牙咬合面の深い窩と裂溝  

フッ素利用だけでむし歯の危険度が減少するわけではありません。むし歯予防プログラムをたてるときにはいろんな予防戦略が推奨されます。

水道水フッ素化の今後の必要性

前に述べたようにむし歯にはリスク要因があるので、多くの地域で多くの人々がまだむし歯の発生率は高いのです。水道水フッ素化のその効果と安全性についてすばらしい事実が発表されていますが、米国ではその総人口のわずか62.2%の普及率にとどまっています。(13)。不幸にもこの効果的な公衆衛生予防法の水道水フッ素化に不安を持ち続けている人がいます。もし水道水フッ素化の普及率拡大の予定があれば、水道水フッ素化の有益性について人々に正確な情報を提供しなければなりません。
写真1
軽度むし歯 中等度むし歯 重度むし歯
米国の健康行政機関と研究機関 (※2)

米国の国民の健康を守ることを優先し活動する米国の関係機関を紹介します。

◎米国厚生省(HHS) HHS(Department of Health and Human Services)
米国厚生省(HHS)は米国民の健康を守り、米国民に必要な医療サービスを提供する米国の主要な政府機関です。本部は首都ワシントンにあり、健康(Health)サービスとヒューマン(Human)サービスの2部局があり、日本の厚生省に相当するものです。もっとも、国民に対する健康サービス精神及びその積極的姿勢は、日本の厚生省とは大きく異なるようです。

◎米国公衆衛生局(PHS)
公衆衛生局PHS(Public Health Service)は、HHSの(健康部門―Health)を担当しています。この中で紹介している米国立衛生研究所(NIH)、米国立食品医薬品局(FDA)、米国立防疫センター(CDC)等 8部局がこのPHSに所属しています。その長官は(General Surgeon)と呼ばれ、米国の健康政策のトップとしてとても尊敬されています。尚、ヒューマンサービス部門には3部局が所属しています。 この中から関連する部局を簡単にご紹介します。

。米国立衛生研究所(NIH)  
米国立衛生研究所(National Institute of Health)は1887年に設立され、職員数15,200人、年間予算129億ドル(1998年)の世界最大の規模と権威を誇る総合医学研究所で、首都ワシントンの郊外メリーランド州ベセスダ市にあります。ボランティアだけでも500名を数える中央研究病院は全米から多くの難病患者を受け入れています。わが国でもテレビニュースなどでここの先端医療及び研究がよく紹介されています。 このNIHの敷地内にはガン研究所、エイズ研究所、アルツハイマー研究所、糖尿病研究所、慢性心臓病研究所など世界をリードする有名な研究所が広い敷地に点在しています。そのひとつに職員数450名の米国立歯科衛生研究所(NIDCR)があります。NIHとNIDCRは世界の医学、歯学分野の進んだ研究、医療をリードしています。その業績はすばらしく、これまでNIHからは約90名ものノーベル賞受賞者を輩出しています。    
尚、1998年に米国歯科衛生研究所はNIDR→現在NIDCRに名称を変更しました。   


NIH(米国国立衛生研究所)


NIH,NIDCRはアメリカ中の医学、歯学研究予算のほとんどを握り、アメリカのみならず世界の、進んで人類に貢献する研究に対して研究費を助成し、その研究活動を支えています。

。米国防疫センターCDC(Centers for Disease Control and Prevention、)
CDCはアメリカ国民を疾病から守るため、1946年に創設されたものです。本部はアトランタにあり、 職員数は6,500名、 年間予算23億ドル(1998年)となっています。また25ヶ国以上の国に係官を派遣し、国際的問題となる疾病の予防に真剣に取り組んでいます。水道水フッ素化訓練センターはこのCDCに所属し、国外の研修生を受け入れ、水道水フッ素化実施についての教育訓練に協力しています。  

。米国食品医薬品局FDA(Food and Drug Administration )  
FDAは食品、医薬品等の安全性を審査、保証する機関であり、1906年に創設されました。本部はメリーランド州ロックビルにあり、職員数 9,200名、年間予算 9億7,200万ドル(1998)で運営されています。


利益

質問1 
フッ素とは何ですか。またフッ素はどのようにむし歯を減少させるのですか。


解答  
フッ素とは歯牙の発育期に摂取したり、萌出後の歯に局所的応用することでむし歯を予防する天然の元素です。


 

フッ素は自然の恵みです


解説  
フッ素イオンはフッ素元素に由来します。フッ素は地球の地殻で17番目に多い元素で、自然界では単体としては存在しません。フッ素はフッ素複合体として他の元素と必ず結合した形で存在します。フッ化物は岩や土壌のミネラル成分です。水が岩石を通過する時、フッ素複合体を溶かしフッ素イオンをつくりだします。その結果、少量の溶解したフッ素イオンは海水を含めてすべての水中に存在します。またフッ素はすべての食物とすべての清涼飲料水にもある程度存在しますが、その濃度はさまざまです。(14〜15)

簡単に分けると、フッ素の利用は局所応用と全身応用の2通りとなります。 フッ素の局所応用は口腔内に萌出している歯牙を強化します。このフッ素の局所作用とはフッ素が歯牙表面に結合して、歯のむし歯抵抗性を一層強めるのです。フッ素の局所応用は歯牙表面の局所予防となるのです。局所応用のフッ素製剤とはフッ素配合歯磨剤、フッ素洗口剤、専門家の利用するフッ素ゲルと洗浄剤です。  

全身応用法ではフッ素は摂取されて体内に摂りこまれ、歯牙形成時にその構成成分になるのです。局所応用のフッ素と対象的に、全身応用のフッ素は規則正しく歯牙の発育時に摂取され、表面に十分に貯えられ、局所応用法のフッ素よりも長期間の予防効果を発揮します。(17) 全身応用法では摂取されたフッ素が唾液内に存在するので、局所的予防効果も発揮します。唾液はずっと歯を浸してむし歯予防するために歯の表面に結合したフッ素の貯蔵庫(歯垢)にフッ素を供給します。フッ素はまた歯垢に結合して再石灰化を促進します。(18)  飲料水や全身応用としてのフッ素は水中ほか、錠剤、ドロップ、ロージンといったフッ素補助剤に含まれ、また食品や清涼飲料水中にも含まれています。研究者は特殊な3つの機序作用を通してフッ素のむし歯予防効果を観察してきました。(19,20) 

1. フッ素は置換してハイドロアパタイトからフルオロアパタイトになり、エナメル質の酸溶解性を減少します。

2. フッ素は酸を産生する歯垢の能力を抑制することで歯垢に直接影響を与えます。

3. フッ素は再石灰化を促進し、酸による脱灰した部分のエナメル質を修復します。  

フッ素の再石灰化促進作用は最も重要です。エナメル表面、あるいはエナメル中にあるフッ素イオンはエナメル質を強化しますが、それはむし歯抵抗性ばかりでなく、細菌の酸により脱灰した初期むし歯を修復したり、再石灰するのです。(17,21−25) フッ素添加の飲料水や歯磨剤のようないろんなフッ素製品が再石灰化に必要なフッ素イオンを放出します。   
歯牙萌出前の全段階で全身応用的にフッ素が結合し、萌出後の局所応用が有効に働いた時に最大のむし歯予防効果が生まれます。(26)

質問2 
水道水フッ素化とは何ですか。

(付)写真、図   アメリカの水道水フッ素化プラント   韓国の装置

解答  
水道水フッ素化とは不足したフッ素濃度を健康のため推奨される天然のフッ素濃度レベルに調節することです。

 

サンフランシスコ市の水道水フッ素添加装置 サンフランシスコ市の上水道配給地図


解説  
膨大な研究により、米国公衆衛生局は米国の飲料水の至適フッ素濃度を0.7〜1.2ppmと決定しました。このフッ素濃度は効果的にむし歯を減少しますが、歯牙フッ素症はほとんど発現しません。至適濃度は地理学的に、1日の最高気温の年間平均値で決定します。(27)
※1ppmとは1リットル中に1mgの濃度を示します。   

質問3 
天然フッ素の水道水とフッ素添加水道水ではその効果に差がありますか。


解答  
差はありません。至適フッ素濃度であれば天然であってもフッ素の添加法であっても効果は同じです。

解説  
フッ素は"イオンあるいは電荷原子として水中に存在します。(27)     岩や砂にしみこむ水に存在するイオンも、管理下にあるフッ素添加した場合の水に存在するイオンも同じものなのです。  フッ素不足の上水道を管理してフッ素を添加しても天然フッ素飲料水で得られる効果と同様の効果が得られます。水道水フッ素化とはすべての飲料水に存在する天然のフッ素の単なる補充に過ぎないのです。   
水はすべてある程度フッ素を含んでいます。水道水フッ素化とは自然とは異なり、水道に異物を混入する"人工的な水道水フッ素化"という語句を使う人もいますが、それは誤りです。水道水フッ素化とは口腔保健の向上のため行う自然に即した方法なのです。(28) "調節する"水道水フッ素化を開始する前に天然フッ素地域の飲料水とフッ素不足の飲料水との効果を比較した昔の疫学研究がありますが、1ppmの至適のフッ素濃度の飲料水を飲用している人々はとてもむし歯が少ないことが判明していました。(5)   
水道水フッ素化の研究はカナダ、オンタリオ州のブランドフォード(調節した至適濃度地区)、ストラトフォード(天然フッ素地区)とサーニア(フッ素不足地域)で行われましたが、ブラントフォードとストラトフォードは両方ともフッ素不足地域のサーニアに比べて、とてもむし歯が少なかったのです。フッ素の天然地域と調節添加地域ではその効果は同じでした。(29)   

質問4 
水道水フッ素化は有効であるというこれ以上の証拠を必要としますか


解答  
水道水フッ素化の効果を証明する膨大な証拠がすでにそろっています。

解説  
水道水フッ素化の有効性は50年以上もの間に科学的研究論文で証明されてきました。 1945年に水道水フッ素化が始まりましたが、開始前の1930年代、1940年代の疫学研究では天然フッ素地区の子供達は非フッ素化地区の子供達に比べてむし歯が少ないことが判明していました。(4.5)  その時からむし歯減少のフッ素の有効性を証明し続けた莫大な研究があります。その中から3つの業績を選んで紹介します。   
1993年、23カ国の113の研究の結果を分析しました。(30) (113の研究の中の59は米国の研究でした) この評論の66の研究は乳歯についてであり、86の研究が永久歯についての有効性についてのものでした。これを総括したところ、最も多く報告されたむし歯減少率は次の通りです。 乳歯のむし歯減少率は40−49%、永久歯のむし歯減少率は50−59%でした。   
1976年〜1987年の第2回目の研究評論では、年齢グループに分けて水道水フッ素化地域でのむし歯減少率は次の通りです。(31)
 


乳歯の減少率    30−60%
混合歯列(8才―12才)の減少率  20−40%    
(混合歯列とは乳歯と永久歯からなる歯列をいいます)    
永久歯(14才―17才)の減少率  15−35%    
永久歯(成人と高齢者)の減少率 15−35%


米国の水道水フッ素化の50年の歴史を総合的に分析して、50年前に発見した飲料水のフッ素濃度が高くなると逆にむし歯が少なくなるという逆相関関係は今日においても正しいものです。(32)  正しく調査された数多くの研究で水道水フッ素化実施前と実施後における地域の子供達のむし歯の割合を比較してきました。天然フッ素地域あるいは非フッ素化地域の子供達でも同様に比較しています。
歯磨剤、洗口剤、専門家のゲルなどフッ素の局所応用がない時代には水道水フッ素化だけの効果が調査できました。その時代の水道水フッ素化の研究結果は劇的なものでした。時代とともにフッ素局所応用が広まってくると、水道水フッ素化は今でも重要なものですが、他の局所応用法の効果もあり、むし歯の減少率は低い数値を示すようになってきたのです。 頻繁な人口流動があり、フッ素歯磨剤、錠剤や他のフッ素局所応用法が広く利用されてきたため、水道水フッ素化の単一の予防効果を出すのが難しくなってきています。(31)   それでも、水道水フッ素化未実施地域に居住する人々には水道水フッ素化地域に居住する人々よりもむし歯の割合が多いことが、最近の資料で示されています。(30、33−36)
下記に、水道水フッ素化の効果がその後数十年間の研究でどのようになったかを示します。   
ミシガン州グランドラピッズは世界最初の水道水フッ素化都市ですが、15年間の歴史的な研究によると、誕生時からフッ素添加の飲料水を飲用していた子供達はベースラインとして検診された子供達よりもむし歯は50〜60%もすくなかったことが判明しています。(37)   
ニューヨーク州ニューバーフの水道水フッ素化10年後、6-9才の子供のむし歯は対照地区のフッ素不足のニューヨーク州キングストンの子供達に比べて58%少なかったのです。15年後ニューハーフの13〜14才児はキングストンの子供に比べて70%もむし歯が少なかったのです。(38)   
イリノイ州エバンストンの水道水フッ素化14年後、低フッ素の飲料水の対照グループに比べて14才児のむし歯喪失歯、処置歯は57%も低かったのです。(39)   
1983年、1974年の以前の調査で示されたように水道水フッ素化未実施地域の アルフォンよりも水道水フッ素化地域のアングレセイのむし歯の割合が少ないことを確認するために英国のノースウェールズでの研究を開始しました。アングレセイに生まれてずっと住んでいる5才、12才、15才児と水道水フッ素化未実施のアルフォンの同年齢児を比較しました。1974年の以前の調査から両域ともむし歯減少が研究結果から判明していました。しかし、水道水フッ素化を実施したアングレセイの子供達は非水道水フッ素化地域のアルフォンより45%もむし歯の平均的な割合が低かったのでした。(40) むし歯が減少傾向にあっても水道水フッ素化は継続する必要があることがこの研究で判明したのです。(41)   
1990年の対照研究によると、飲料水中のフッ素濃度の低い地域に生まれ、ずっと居住している学童達は至適濃度のフッ素飲料水を飲用している学童よりも61〜100%もむし歯経験率が高いことがわかったのでした。(36) その上、水道水フッ素化は有意義であり、公衆衛生的利益があり、シーラントはむし歯予防に重要な役割を果すことがこの研究で示されたのです。   
1991〜1992年と1993〜1994年の調査資料から英国では、5才児の水道水フッ素化によるむし歯減少率は平均44%と推定されたのです。社会経済的に低いグループでは水道水フッ素化の利益はもっと大きくなり、54%であったことが示されました。それ故、最も健康な歯を必要とする子供達にとって水道水フッ素化は最大の利益を与えるのです。(42)   
1993〜1994年、カリフォルニアでは水道水フッ素化未実施地域の子供達は水道水フッ素化地域の子供達よりもむし歯が多いという結果がでました。(43) 最も高い関心事は、低所得層の子供達がむし歯が多いということでした。特にK−3階層の子供達は対照地域となった至適濃度の水道水フッ素化地域に生まれてからずっと居住している子供達より乳歯で39%もむし歯が多かったのです。(35) (K−3階層の子供とは家族が生涯水道水フッ素化未実施地域に居住し、その所得が米国の貧困レベルより200%も低いものを言います。)

(注)疫学とは? (※3)
疫学とは医学的調査のことです。疫学者は調査官です。彼らはまず、病気や健康に関連した現象から調べはじめ、なぜある集団の人々がある種の病気になるのに、他の人々がならないのかを追求します。ここで重要視されるのが食物に関する習慣です。コンピュータの利用により、疫学はここ30年の間に健康科学の分野において先導的な役割を果してきました。私達の知識の多くは、このような疫学的調査から得られています。   

質問5 
もし水道水フッ素化が中断するとしたらどうなるでしょうか?


解答 
水道水フッ素化を1年以上中断したらフッ素歯磨剤、フッ素洗口剤が広く使われたとしてもむし歯は増加すると予想されます。

解説 
次の段落で水道水フッ素化中断でどのような結果になったかを歴史的な研究から要約して紹介します。
ウイスコンシン州アンティゴは1949年に水道水フッ素化を開始しましたが、1960年11月に中断しました。水道水フッ素化を中断して5年半後、2年生の子供達は200%、4年生の子供達は70%、そして6年生の子供達は91%も1960年当時の同年齢層の子供達よりもむし歯が増加していたのでした。アンティゴの住民は1965年に子供達のむし歯がとても増加したことから水道水フッ素化を再開したのです。(44)  
1979年、英国.北スコットランドのウィックでは水道水フッ素化実施後8年で中止しました。そのフッ素濃度は0.02ppmになりました。ウィックの子供達のむし歯の状況を追跡したところ、水道水フッ素化の中断の悪い影響がはっきり出てきました。水道水フッ素化中断5年後、永久歯は27%、乳歯は40%もむし歯が増加していたのです。国家的には全体的にむし歯が減少したと報告された時であり、フッ素歯磨剤が広く利用された時だったのに、水道水フッ素化中断はこの時期にむし歯を増加させたのです。(45) 水道水フッ素化が中断されると、フッ素歯磨剤の広範な利用があっても子供達のむし歯は増加することがこの資料から予想されるのです。  
同様にスコットランドのストランラエルの10才児のむし歯は水道水フッ素化中断後むし歯修復の平均的治療費は115%増加し、歯科全体の平均的治療費は21%増加しました。この資料から水道水フッ素化がむし歯抑制に重要な役割を果すことがわかります。(46)  
水道水フッ素化地域に住んでいて、後で未実施地域のミシガン州コールドウオーターに移り住み、3年以上経過した6-7才児の米国での調査研究によると、乳歯のむし歯経験歯数(むし歯、喪失歯、処置歯)は11%の増加が認められました。フッ素の局所応用だけに頼ることは効果的でなく、局所応用は公衆衛生の実践には及ばないことをこのデータから再確認できました。 (31、47) 水道水フッ素化が実施され、その上で局所応用としてフッ素歯磨剤、フッ素洗口が加わればむし歯の抑制効果は大きいものとなります。   
水道水フッ素化とむし歯の関係を報告した研究が、2.2ppmの天然フッ素濃度のイリノイ州ガレスバーグで行われました。1959年、ガレスバーグでは、水道の源水をミシシッピ川からとることに切り替えました。そのため水道のフッ素濃度は約0.1ppmになったのです。フッ素濃度が低い期間は14才児のカリエスフリーは10%減少し、むし歯は38%も増加したのです。そこで、2年後の1961年、推奨レベルのフッ素濃度1.0ppmで水道水フッ素化は再開されたのです。(48)

質問6 
今でも水道水フッ素化はむし歯予防効果のある方法なのですか


解答 
水道水フッ素化は子供、青年、成人すべてのむし歯予防にとても高い効果をもっています。しかし、人々のむし歯の変化の程度を続けて調査することは重要です。フッ素の他の利用法を用いても水道水フッ素化未実施地域の人々は、実施地域に比べてむし歯の割合が高いことが判明しています。

解説 
米国の子供達はむし歯が減少傾向にあることが数多くの最近の研究によって発表されています。この減少傾向は他の先進国でも報告されています。この減少を説明する要因の一つが水道水フッ素化、フッ素歯磨剤などのフッ素の利用の増加です。1976年〜1987年の間の研究で判明した先進工業国の水道水フッ素化によるむし歯の減少は(31)次の通りです。  

      
 

乳歯減少率 30−60%   
混合歯列減少率(※8〜12才児)20−40%   
永久歯減少率(14〜17才児)15−35%   
永久歯減少率(成人、熟年)15−35%


米国と同様、他の国々でも水道水フッ素化は最も安全で、最も費用効果比に優れ、とても有効なむし歯予防法なのです。(11、32、34、49−52)  1990年の対照研究によって飲用水のフッ素濃度の低い地域に生まれてずっと居住している子供達は、水道水フッ素化地域の子供達に比べて61−100%もむし歯経験率が高いということが判明しました。(36) その上、この研究により、水道水フッ素化は今でも公衆衛生的な高い予防利益があり、シーラントはむし歯予防に重要な役割を果しているということがわかったのです。   哺乳ビンむし歯は赤ん坊、ヨチヨチ歩きの幼児に重大な影響を与える重度のむし歯です。水道水フッ素化は赤ん坊、特に社会経済的に低いレベルのグループの赤ん坊に高いむし歯予防効果を示します。(33) 幼児にとっては、水道水フッ素化を行うことで歯科医院に行かずに済みます。また両親や世話係りの動機づけを必要としないただ一つの予防法なのです。(53)   
1940年、至適濃度で飲料水にフッ素が含まれている地域の子供達のむし歯抑制率は、非フッ素化地域に住む子供達に比べて約60%でした。その時代、食物に天然に含まれるフッ素を食べる他には、水を飲むこの方法しかフッ素を摂ることはできませんでした。 最近の研究では、フッ素天然地域や水道水フッ素化地域と同様に非フッ素化地域でもむし歯が減少しています。それは食品、清涼飲料水、歯科製品、フッ素錠などでフッ素の利用が一般的になったからです。(54) 食品と清涼飲料水は至適濃度で水道水フッ素化している都市で生産されます。この食品は生産した都市だけでなく、水道水フッ素化未実施地域に配達されて消費されています。(11) このハロー(後光)効果、あるいは拡散効果は、水道水フッ素化未実施地域の人々のフッ素摂取を増やし、そのおかげで人々はむし歯予防効果を増大させるのです。(32、52) このようないろんなフッ素の利用が広がった結果、水道水フッ素化地域と非実施地域でのむし歯の差は数十年前より小さくなりましたが、しかし、水道水フッ素化の意義は大きいのです。(55)   
1964年から水道水フッ素化を実施しているサウスバーミンガムと未実施のボルトンの14才児のむし歯の数を比較した研究が英国で発表されました。この2都市は同じような社会階層で、同じような割合で失業者グループとマイノリティーグループが存在していました。サウスバーミンガムの子供達の平均的なむし歯、喪失歯、処置歯の数は2.26でしたが、水道水フッ素化していないボルトンでは3.79でした。この2都市のDMFTは統計的に有意で40%の差が認められました。社会的及び人口統計学的要因は同じなので、研究者達はこのむし歯の差を水道のフッ素濃度にあると結論しました。(56)   
米国では1987年、約4万人の児童の完全な疫学調査を行いました。この研究の5〜17才の子供の約50%が永久歯はカリエスフリーでしたが、1980年の同様の研究ではカリエスフリーは約37%でした。この劇的なむし歯の減少は主に水道水フッ素化、歯磨剤、錠剤と洗口剤によるものです。むし歯はどこの地域でも減少していますが、水道水フッ素化地域にずっと住んでいる子供達ではフッ素錠剤やフッ素局所処置の影響を除いても25%もむし歯の割合が低かったことがデータから判明しました。   
ごく最近、1988年〜1991年の第3次全国保健及び栄養検査、調査(NHANESV)が行われました。そのデータは5800万人以上の米国の子供達を調査したものです。5〜  17才の55%もの子供達が永久歯にむし歯がなかったのでした。(57)

質問7 
むし歯はまだ重大な問題ですか


解答 
Yes, むし歯は今でも重大な口腔保健上の問題となる感染症です。

解説 
むし歯はすべての年齢層において最も一般的、かつ費用のかかる口腔保健上の問題です。(58) むし歯は子供の時から中年まで歯牙喪失の主原因です。劇的な歯牙喪失は35〜44才におこります。この年齢時の主な歯牙喪失の原因はむし歯と歯周疾患です。(8) むし歯は中高年の歯肉退縮のため生じた根面むし歯に特に障害を与え続けます。その上に、むし歯は食べる能力を阻害したり、精神的な苦痛を与えて幸せな生活を妨げ、また疼痛や違和感によって社会生活を妨げるのです。むし歯は特に前歯の審美性を損ない、本人の自尊心を傷つけることになります。   
過去20年間以上、米国の学童のむし歯経験率はいたるところで減少したにもかかわらず、むし歯はいまだに重大な口腔保健上の問題なのです。特にある階層の人々にとってはそうなのです。1986〜1987年米国立歯科衛生研究所の4万人の学童の調査では、5歳から17歳の子供の25%が永久歯う蝕本数の75%を占めていることがわ かりました。(58) 個人的むし歯リスクを増大するリスク因子は定期的管理不全、咬合面の深い溝、不適切な唾液の流れ、頻回な砂糖消費ととても多い口腔細菌数なのです。   
むし歯はごく一般的な病気で、生涯避けられないものと間違って考える傾向があります。NHANESVの調査からの資料で、18才以上の成人は94%が過去あるいは現在歯冠部のむし歯を有しており 、22.5%が根面むし歯であったことが判明しました。(59)   
精神的苦痛や社会的な幸せを害するばかりか、むし歯は結果としてその治療費に大きな影響を与えます。国家の歯科医療費は1997年で506億ドルでした。(60) 治療よりもずっと予防の方がいいことはわかっていることです。水道水フッ素化は米国民にとって最も費用効果比の優れたむし歯予防法なのです。(61、62)

質問8 
水道水フッ素化から大人も恩恵を受けられますか

解答 
水道水フッ素化は生涯を通じてむし歯予防の役割を果し、子供にも大人にも恩恵を与え続けます。

解説 
フッ素は全身的、局所的効果をもち、大人にも役立つものです。わずかな量のフッ素が頻回に歯に触れることで、まだ小さな早期むし歯のエナメル質の再石灰化に関与してむし歯を修復するのが第1の役割です。成人の歯にフッ素の局所応用を施すとむし歯の初期形成期ではその進行が止まり、次に襲う酸の攻撃に対して、より一層むし歯抵抗性をもったエナメル質の表面が出来あがることをはっきりと示す数多くの研究があります。全身応用による唾液中のフッ素の存在は、むし歯予防のため歯牙表面にとりこまれるフッ素イオンの供給源となります。(63)   
成人に対するもう一つの予防利益は、根面むし歯に対するものです。歯根面が露出すると口腔内細菌によるむし歯の原因になるので成人の歯肉退縮は歯根面むし歯のリスクが高いのです。フッ素が歯根面の歯質にとりこまれて、むし歯抵抗性を増大することを示す研究が発表されてきました。(19、63−66) カナダのオンタリオ州の天然フッ素地域(1.6ppm)ストラトフォードにずっと居住し続けている人々は非フッ素化地域ウッドストックの人々に比べて確かに根面むし歯が少なかったのです。(65) 米国では人々は以前より長生きして自分の歯が長く残っています。高齢者は歯肉退縮という問題をかかえているので、根面むし歯は年齢とともに増加します。露出根面の数や、過去の根面むし歯数が多いことは個人的にむし歯のハイリスクであることを示します。1988〜1991年のNHANES(V)調査資料によると、成人の22.5%が根面う蝕を経験していました。この数値は年齢とともに驚くほど増加していました。(59)
1. 18〜24才では、わずか6.9%
2. 35〜44才では 20.8%
3. 55〜64才では 38.2%
4. 75才以上では 約56%
歯肉退縮に加えて、高齢者は薬物治療や病気などにより、唾液流量の減少、あるいは唾液腺障害をおこしやすい傾向にあります。(67、68) 唾液流量が減少するとむし歯の危険性が高まります。(12) 唾液流量の減少は同様にむし歯の増加につながります。それは唾液は早期むし歯の修復に必要なフッ素などいろんな成分を含んでいるからなのです。   
生後から続けてフッ素添加の飲料水を飲むことは、最大のむし歯予防効果を発揮することを示す資料があります。一方、水道水フッ素化が始まると、萌出歯牙は口腔内でフッ素の局所応用効果の恩恵も受けるのです。1989年のワシントン州での研究によると、子供の時だけフッ素添加飲料水を飲んでいた成人は、14才以上にフッ素添加飲料水を飲用していた成人と同じ程度のむし歯の発生が見られたというのです。この研究は水道水フッ素化には局所応用効果と全身応用効果があることを実証するものです。14才以後の水道水フッ素化はこの局所応用効果を発揮するのです。また水道水フッ素化の歯牙萌出前と全身応用効果が14才以後だけ水道水フッ素化を経験した成人と同様に生涯を通じてむし歯予防効果をあげることがこの研究で示されています。同様の研究でも生涯、水道水フッ素化地域に住んでいた成人は非フッ素化地域の人々よりもむし歯が31%減少した(むし歯と充填した歯の数で)との報告がありました。(64)   
至適フッ素濃度地域と低フッ素濃度地域における成人のむし歯活性についてのスウェーデンでの研究がありますが、至適フッ素濃度地域では、むし歯経験率が少ないばかりか口腔内細菌、唾液緩衝能あるいは唾液流量によってむし歯経験率の違いが説明できなくなるのです。飲料水中のフッ素濃度がむし歯の割合を減少させたただ一つの原因なのだと言えます。(69)   
水道水フッ素化は、ただむし歯を減らしたというのではなく、健康のすべてに、とても役立っているのです。それは必要のない感染、疼痛、苦悩、そして歯牙喪失を予防するからなのです。そして生活の質を改善し、歯牙治療費にかかる莫大な費用を節約するのです。加えて、水道水フッ素化は初期充填やその再発による再治療充填の必要性を防ぎ、天然歯のままで残存することに役立つのです。(70)

質問9 
日常的なフッ素補助剤(フッ素錠剤、フッ素ドロップ)は有効ですか


解答 
水道水フッ素化地域に居住していない子供達にとって日常的なフッ素補助剤はむし歯予防のため水道水フッ素化の代用として必要で効果的なものです。(51、71−73) 解説 フッ素補助剤は処方箋が必要で、水道水フッ素化地域に住んでいる子供達と同様な予防効果が非フッ素化地域の子供達にも与えられるように使用されるものです。(74)  フッ素補助剤は2種類あります。ドロップ(液剤)は、生後6ヶ月以降の幼児用です。錠剤は子供用です。(12)

☆永久歯の歯牙フッ素症のリスクを避けるために、フッ素補助剤は水道水フッ素化未実施地域の子供達に医師の処方箋付きで使用しなくてはなりません。☆

フッ素錠剤の正しい使用量は子供の年齢と飲料水のフッ素濃度を目安にします。(16、54、75)  
 むし歯に対する子供のリスクと子供に利用されるすべてのフッ素材料も考慮されなければなりません。(むし歯リスク評価と予防に関する優れた情報源は米国歯科医師会の"むし歯診断とリスク評価"です。これは予防戦略と取り扱いについての評論に掲載されています。(12)   フッ素はとても広く利用されているので、フッ素を含んでいるものすべてを考慮に入れてその用量と処方に従って使用することが求められています。十分な効果を得るために、フッ素補助剤は生後6ヶ月に始めて、少なくとも16才まで毎日使用すべきです。(12)  最近のフッ素補助剤の使用法は表1に示しました。



   

表1 日常的フッ素補助剤の使用法 1994
(米国歯科医師会、米国小児学会、米国小児歯科学会認可) (12)

年齢  飲料水中のフッ素イオン濃度(ppm)
0.3ppm以下 0.3-0.6ppm 0.6ppm
以上 生後―6ヶ月 なし なし なし
6ヶ月―3才 0.25mg/日 なし  なし
3才―6才 0.50mg/日 0.25mg/日  なし
6才―9才  1.0mg/日 0.5m/日 なし

(2.2mgのNaFは1mgのフッ素イオンを含んでいる)


家庭での受け入れが長期間必要ということは、地域ベースのフッ素補助剤プログラムにとっては、実施上の大きな欠点であり、経済的にも欠点になります。公衆衛生法としての水道水フッ素化とどちらを選ぶかとなると、これは実用的な方法とは言えません。正しい管理を行った保健専門家の研究結果で示されるように、フッ素補助剤は、水道水フッ素化に匹敵する効果に達します。しかし、高い教育を受けて、動機付けができている両親グループにおいてさえ、フッ素錠を子供達に必要な何年もの間、与え続けられる両親は半分しかいませんでした。(76) 米国他いろんな国々の報告では、フッ素錠などフッ素補助剤を地域レベルで使用するには家庭での配布が必要となり、受け入れ体制が十分でないため、失敗したことが報告されています。(77) 一方、補助剤購入とプログラム管理の全費用は小さいものですが、(水道水フッ素化設備の初期コストに比べて)子供1人当りの補助剤のコストは、水道水フッ素化の1人当りのコストに比べるととても高価です(62)。加えて、水道水フッ素化は、年齢、社会経済的レベル、教育レベルや他の社会的要因に関係なく、すべての人々にむし歯予防の恩恵を与えます。(11) 水道水フッ素化は定期的な歯科管理を受けられない家族には特に重要な方法なのです。


 

フッ素錠剤 フッ素ドロップ(液剤)


質問10 
(食塩フッ素化とミルクへのフッ素添加)工業技術的な制約のため水道水フッ素化ができないところでは水道水フッ 素化の代用法はないのですか ?

解答 
Yes, 米国以外の国では水道配管設備のない国々がありますが、そこでは食塩へのフッ素添加が行われています。

解説 
米国以外の国での食塩フッ素化の効果を評価した研究はフッ素添加の食塩は、水道水フッ素化と同じレベルの予防効果を示したと結論したものもあります。(78) 食塩フッ素化はスイス、コロンビア、ジャマイカ、コスタリカ、メキシコ、フランス、スペイン、ドイツなど30カ国を越す国々で普及しています。(79、80) これらの国々の研究における効果発表では、12才児でむし歯減少率は35〜80%でした。(81) 食塩フッ素化の利点は、水道中央配管設備を必要としないことです。家庭用食塩と業務用食塩(パン屋、レストラン、施設、食品製造用食塩)の両方ともフッ素が添加されていると、長期間の水道水フッ素化に匹敵するむし歯減少効果を発揮しています。(81)  一方、家庭用食塩だけのフッ素添加であれば、その効果は低くなります。(78)  
食塩フッ素化は、水道水フッ素化にはないいくつかの欠点を持っています。食塩フッ素化を始めようとする時、飲料水の自然のフッ素が必要以上のレベルである場合はその地域で食塩フッ素化はしてはなりません。食塩フッ素化のためには近代的な技術と専門知識が食塩精製の上で必要です。(82) また、ナトリウムを摂取するために高血圧の危険性があることを考えておく必要があります。(83、84)  高血圧あるいは食塩制限の必要な人にとっては食塩フッ素化は受け入れにくい方法と思えます。



南米で使用されるフッ素添加の食塩


フッ素添加ミルクは、米国以外の国々で行われる水道水フッ素化の代用全身応用法です。フッ素添加ミルクを飲用した子供のグループの研究のむし歯の減少の報告があります。しかし、これらの研究は大規模な調査ではなかったのです。ミルクのフッ素添加を水道水フッ素化や食塩フッ素化と代わる方法として推奨するにはもっと調査が必要です。ミルクへフッ素添加する理由はフッ素を与えるターゲットを子供に絞ると いうことです。
しかし、水に比べてミルクからのフッ素の吸収は遅く、多くの人々が、特に成人はいろんな理由でミルクを飲みません。そんなことからミルクへのフッ素添加は大きな利益を生み出さないと考えられるのです。(86)  
またミルクのフッ素濃度のチェックは飲料水に比べて技術的に難しいのです。それは水道水フッ素化はチェックが一ヶ所で済むのに対してミルクはとても沢山のチェックすべき搾乳場があるからです。加えて、ミルクは原乳あるいは調節乳として販売店で売られるため、一定の規格が難しく、同一規格品をつくることができないのです。(17)

質問11 
ボトル飲料水を常時使用すると水道水フッ素化の利益を失いませんか


解答 
Yes, 市販のボトル飲料水の大半は至適レベル(0.7〜1.2ppm)のフッ素を含んでいません。

解説 
ボトル飲料水を飲用する人々は水道水フッ素化のもつむし歯予防の利益を失います。そのため、歯科医師からフッ素の摂取の必要性のアドバイスが必要です。ボトル飲料水のフッ素濃度はとても様々です。1989年の小児歯科患者と彼らの利用するボトル飲料水の調査から、それは9種類あり、0.04〜1.4ppmと様々でした(87)。 1991年の39ボトル飲料水サンプル調査では34がフッ素濃度が0.3ppm以下でした。 6つの銘柄では2年間の間にそのフッ素濃度が1/2〜1/4に変動しました( 88)。
ボトル飲料水の使用に関しては考慮すべきことがあります。 1番目は1日あたりのボトル飲料水の金額です。2番目はボトル飲料水を飲用に使うか、食事の準備に使うか、またスープ、ジュースなど飲み物用の粉末を水にもどすときに使うかです。3番目は水道水フッ素化地域の保育所、学校や職場で飲用に使うことです。最も重要な問題は、ボトル飲料水のフッ素濃度を決定することです。もし、ボトル飲料水のフッ素濃度がラベル標示がない場合、製造工場に問い合わせできます。ボトル飲料水の源水はフッ素濃度が小さくなったり、年間の基準値も変化するので、このフッ素濃度に関しての正しい情報を得るために、その源水のフッ素濃度は定期的に検査しなければなりません。(87)  
また公共水道のフッ素濃度に関しての情報を得るため、地方の歯科医師、地方及び州の保健局、あるいは地方の水道局に尋ねるべきです。

質問12 
家庭の水処理システム(例えば水ろ過器)は、至適フッ素濃度の飲料水供給に影響しますか

解答 
Yes, 家庭ろ過器の何種類かは、むし歯予防効果のある飲料水のフッ素濃度を減少してしまいます。

解説 
ろ過器には、水差し型フィルター、蛇口フィルター、逆浸透性システム、蒸留器、飲料水軟水化装置などいろんな種類の家庭用水処理装置があります。この装置の水道水フッ素化に対する影響を大きな規模で取り扱った調査はありません。これに関して入手できる研究結果にはしばしば矛盾があり、不明確です。しかし、逆浸透性システムと蒸留装置は水道の水から確かにフッ素を除去することが文献に紹介されています。(16、89)
一方、飲料水軟化装置に関して最近の研究では、硬水から軟水へかわる過程でフッ素濃度は変化はおきないことがわかってきました。(90、91)  水ろ過器において、飲料水中のフッ素濃度はろ過器タイプ、その使用されるろ過器の品質、状態、そして、その使用年数に関わるようです。家庭でろ過器に通した飲料水を飲む人々は水道水フッ素化のむし歯予防効果を失うことになります。それ故、その人々は歯科医師からのフッ素利用についてアドバイスを求めなければなりません。   
家庭用ろ過器を使っている人々には少なくとも年1回は処理した水のフッ素濃度を検査しなければなりません。もっと頻繁な検査が必要かもしれません。検査は地方あるいは州政府、公衆衛生局を通してできます。民間の検査施設でも飲料水フッ素濃度検査はできます。  公共水道のフッ素レベルに関しては歯科医師、町や州政府健康課あるいは地方水道局に尋ねると情報が得られます。  人々は歯科医からフッ素の必要性についてアドバイスを求めなければなりません。



安全性

質問13
むし歯予防のための至適濃度の水道水フッ素化は,人の健康に悪い影響を及ぼしますか?


解答
水道水フッ素化が安全でかつ有効であることは膨大な数の科学的な証拠によって支持されています。

解説
数世代にわたる数百万人の人々が,むし歯予防に推奨されているフッ素濃度、あるいはそれよりも高い濃度の天然フッ素地域で生活してきました。飲料水フッ素添加の安全性を確かめるために,これらの集団を対象とした調査が行われました(54 ,92-95)。実際,1993年8月,米国科学アカデミーの米国研究協議会は,現在許容されている飲料水のフッ化物レベルでは癌や腎不全あるいは骨の疾患のような健康問題を起こさないことを確認する報告書を米国環境庁に提出しました(96)。フッ化物の毒性に関するデータの再調査に基づいて,その報告書を作成した専門委員会は,米国環境庁による飲料水中天然フッ素の上限値4ppmは「暫定基準として妥当」であると結論しました(96)。その後,米国環境庁は上限値4 ppmが安全の上での適正な限界で,健康に悪影響を与えないことを発表し,米国連邦政府官報の飲料水フッ素濃度基準を改訂しない旨を通告しました (97)。
他の栄養剤と同様に,フッ素は安全で,適切に飲用すると効果があります。フッ素添加の有効性と安全性は,これまで受け入れられた科学的研究知見によって実証されています。50年にわたる調査研究と実践経験を経て,水道水フッ素化が安全でかつ有効であることは十分に科学的に証明されていることなのです(98)。
(このテーマに関するさらなる議論は質問19,および32をご参照ください。)

健康問題に従事している米国や世界中の多くの機関が水道水フッ素化の有効性を認めています。米国歯科医師会は1950年、水道水フッ素化支持の決議を採用し,フッ素添加の安全性や効果の継続的な評価に基づいて、何度となくその公的な立場を再確認してきました(3)。米国医師会は1951年にフッ素添加を支持しました。1986年そして1996年に,米国医師会はフッ素添加支持を「むし歯を減少する効果的な方法」として再確認しています(99)。世界保健機構(WHO)は、1969年に第一回目の飲料水のフッ素添加の実施を推奨しましたが(100)、1994年にそのフッ素添加支持を再確認し,次のように公表しました。「もしパイプで水道水が送られる地域ならば、水道水フッ素化は全住民が利用できる最も効果的な方法です。それによってすべての社会階層の人々が個人で積極的に参加しなくても予防利益を得ることになります(82)」。1991年の包括的な総説(レビュー)と フッ素の利益とリスクに関する公衆衛生的な評価にしたがって、米国公衆衛生局はフッ素添加の支持を再確認し、むし歯予防にフッ素の使用を推奨し続けることになりました(54)。 むし歯予防のために水道水フッ素化による公衆衛生的な利益を認めている合衆国および国際的な保 健,サービス,専門機関は既に述べた通りです。 (はじめにの水道水フッ素化の支持を参照)

質問14
人に対するフッ素の影響を調査したその他の研究はありますか。


解答
Yes 当初から、水道水フッ素化は継続的な再評価が行われてきました。他の科学領域と同様に,人に対するフッ素の影響についての追加研究は、フッ素をどのように利用すれば、より高い効果があるかを示唆しています。米国歯科医師会および米国合衆国公衆衛生局は、現在も行っている研究を支持しています。

解説
この50年間にわたって、詳細な報告書が水道水フッ素化のあらゆる見地から発表されてきました(54、96)。歯学、医学および公衆衛生学分野のフッ素添加に関する膨大な証拠所見が精密に調査され、アカデミー会員や専門委員会、政府、世界的規模の機関および国際的な保健機関の特別協議会において幾度となく再評価されてきました。これら科学機関の答申は,推奨されるレベルでの飲料水フッ素添加は,口腔保健に大きな利益をもたらすものであるということです。生涯を通じて至適濃度で飲用したフッ素によって起こるかもしれない二次的健康被害に対する疑問の調査が、医学調査の目的でしたが、その結果は水道水フッ素化は全く健康への害がないというものでした(82、92-95)。
科学研究には「最終的知見」なるものは存在しません。新しい情報が継続的に明らかにされ,そして広まっていきます。研究を続けるうちにわかったことは、科学的に重要なことは水道水フッ素化がむし歯予防法として安全でかつ効果的であることなのです(54)。 (このテーマに関するさらなる議論は質問36をご参照ください。)

質問15
大気、水および食品からのフッ化物の摂取総量は、健康に危険を及ぼしますか


解答
米国の至適濃度の水道水フッ素化地域において、大気、水および食品からのフッ化物摂取総量は健康に危険を及ぼしません。

解説
大気からのフッ素
通常、大気中にあるフッ素の濃度は無視できる程度です。米国での大気中のフッ素レベルに関する研究から、大気のフッ素はフッ素総摂取量にはほとんど関係しないことが示されています(101、102)。

水からのフッ素
米国の湖沼河川の水、 あるいは地下水には天然に存在するフッ素が0.1ppm以下から13ppmと広い範囲レベルで含まれています。7ppmを超える個人使用の井戸水はほとんどありません(102)。米国の公共水道設備は米国環境庁によって監視されていますが、公共水道が4ppmのフッ素レベルを超えないようにしています(97)。米国では水道水のフッ化物至適濃度を0.7-1.2ppmの範囲に設定しています。この範囲が濃度が効果的にむし歯を減少させ、また軽度の歯牙フッ素症の出現を最小限におさえるのです。至適なフッ素レベルは地理的に一日の最高気温の年平均によって決定します(27)。
(このテーマに関するさらなる議論は質問32をご参照ください。)
水道水フッ素化地域に住む子供たちは、水道水から一日のフッ素摂取の一部を、また食品や他の飲み物に含まれる食事から一部を摂取しています。水道水フッ素化地域では、1mgのフッ素を摂取するために1ppmのフッ素添加水道水を1リットル飲まなければなりません(17、103)。6歳以下の子供たちが飲む飲料水は平均して一日に500ml以下です(103)。それゆえに6歳以下の子供たちは、平均して(1ppmで)至適濃度のフッ素添加水道水から一日に0.5mg以下のフッ素を摂ることになります。
供給される水のフッ素濃度が、それぞれ8.0ppmと0.4ppmを示すテキサス州のバートレットとキャメロンの長期居住者を対象に、10年間にわたり臓器、骨、組織の検査を含む比較研究が行われました。バートレットの居住者における歯牙フッ素症の高い発症率の他には、フッ素がむし歯予防に推奨されるより明らかに高いフッ素濃度にあっても、長期間フッ化物を摂取した結果は(居住者は平均36.7年高濃度のフッ素の入った飲料水を飲用していました)、臨床的に生理的あるいは機能的影響はなかったことがわかったのです(95)。

食品中のフッ化物
米国で新鮮な固形食品に含まれるフッ素は一般に0.01〜1.0ppmの範囲です(104)。鰯のような魚は、骨を食べるならより高いフッ素を摂取するかもしれません。お茶もまた1 ppmから6 ppmのフッ素を含むかもしれませんが、それはお茶の量、水のフッ素濃度および抽出時間に関係します(104)。
至適濃度(1 ppm)の水道水フッ素化地域に住んでいる子供たちの(体重に基づいて表わされた)一日の飲食のフッ素摂取量の平均は0.05mg/kg/dayです。すなわち至適濃度の水道水フッ素化未実施地域において、子供たちの平均摂取量は約50%低いのです(74)。至適濃度(1 ppm)の水道水フッ素化地域の大人の飲食によるフッ素摂取量は平均1.4-3.4mg/dayで、フッ素添加されてない地域の平均は0.3-1.0mg/dayです(74)。
1990年の再調査で、水道水フッ素化と関連した食品中のフッ素濃度の著しい増加はないことが確認されました(105)。生物学的な食品連鎖によるフッ化物濃度についての疑問に対して、米国国立科学アカデミーは次のように説明しています(106)。実際、家畜は人に対する防御的な障壁となります。体内に残留したフッ素のおよそ99%は骨に貯蔵され、そしていくら高い濃度のフッ素を毎日摂取したとしても軟組織のフッ素濃度はほんの少し上昇するにすぎないのです。それゆえ、過剰のフッ素を摂取した動物の肉やミルクを摂取しても人に対して危険性はほとんどありません。人が消費するために加工された肉や魚は、高いフッ素濃度を示すと思われる細かく砕いた骨を含んでいます。しかしながらこれらの製品に代表される飲食物の全体の割合は、実際のところ非常に小さいものです。米国食品医薬品局は、生後6ヵ月の赤ん坊から大人まで異なる年齢グループにおける平均的な人の実際の14日間のさまざまな食品の消費を表わす「マーケットバスケット」なるものを創っています。飲料水のフッ素濃度が異なるいろんな地域で全国的にマーケットバスケットの研究を行ったところ、水道水フッ素化によって食品中のフッ素濃度はほとんどあるいは全く違いがないことがわかりました(107、108)。

質問16
むし歯を減らすために、毎日フッ素はどれくらい必要ですか?


解答
毎日摂取するフッ素の量は、年齢や体重によって違います。他の栄養素と同じように、正しく用いればフッ素は安全で効果的なものです。

解説
1997年、医学協会の食物栄養委員会は飲食物の栄養摂取について参考値を発表しました(74)。これらの新しい参考値、食料参考摂取値 (DRI) は、1941年から米国科学協会が示してきた推奨食料許容量(RDA)に代わるものです。新しい値は健康のために必要な栄養を示しており、栄養を取りすぎることによるリスクを減らすために、初めてその最大値を設定しました。むし歯に効果があるので、カルシウム、リン、マグネシウム、ビタミンDと同じように、フッ素についても食料参考摂取値が設定されました。



表2
飲食からのフッ素摂取量参考値 医学研究所食品栄養局(Food and Nutrition Board of the Institute of Medicine)1997年

年齢群 参考体重Kg* 至適摂取量(mg/日) 上限摂取量(mg/日)
0〜6か月 0.01 0.7
6〜12か月 0.5 0.9
1〜3歳 13 0.7 1.3
4〜8歳 22 1.0 2.0
9〜13歳 40 2.0 10
少年14〜18歳 64 3.0 10
少女14〜18歳 57 3.0 10
男性19歳以上 76 4.0 10
女性19歳以上 61 3.0 10

* アメリカ合衆国第3回国民健康栄養調査(NHANES III)の一部である1988-1994年のデータに基づく値である[74]


表2に示すように米国におけるフッ素摂取は幅広い安全域にあります。

第一の食料参考摂取値は、適切摂取量 (AI)であり、これは副作用がなく、健康を維持していくための摂取目標が設定されています。フッ素の適切摂取量は軽度の歯牙フッ素症を起こすことなくむし歯を減らすために必要な一日の摂取量です。他の色々なもの(フッ素添加飲料水、食物、飲料、歯科用フッ化物、フッ化物補助食品)から摂取するフッ素の適切摂取量は0.05mg/kg/dayに設定されています。

0.05mg/kgという設定された適切摂取量(AI)を用いて、健康のために一日に消費されるフッ素量を性別と年齢別に算出(平均体重として表現)しました。(表2参照)

食料参考摂取値(DRI)はまた許容上限摂取レベル(UL)といわれる最大レベルの参考値も設定しました。許容上限摂取レベル(UL)は適切摂取量(AI)よりも高く、摂取の推奨レベルではありません。許容上限摂取レベルは健康に悪影響を及ぼさない最大摂取レベルです。様々なもの(フッ素添加飲料水、食物、飲料、歯科用フッ化物、フッ化物補助食品)から摂取するフッ素の許容上限摂取レベルは幼児、小児から8歳まで、0.10mg/kg/dayに設定されています。それ以上の子供や成人では、もはや歯牙フッ素症の心配はないので、フッ素の許容上限摂取レベルは体重に関わらず10mg/dayに設定されています。

フッ素について設定された許容上限摂取レベルを用いて、8歳以下の子供たちについて軽度の歯牙フッ素症のリスクを減らすために一日に消費されるフッ素量を性別と年齢別に算出(平均体重として表現)しました(表2)。

実際の例として、一日に2mgのフッ素の摂取は、9〜13歳で体重88ポンド( 40kg)の子供たちにとって適量となります。 これは、0.05mg/kg/day(AI)×40kg(体重)=2mgという計算によります。同時に88ポンド(40kg)の子供は許容上限摂取レベルとして一日にフッ素10mgを摂取できます。

水道水フッ素化地域に住む子供たちは、フッ素添加飲料水や食物、様々な飲料物などからフッ素を摂取しています。フッ素添加飲料水では、フッ素1mgを摂取するのに1ppmのフッ素添加飲料水1リットルを摂取しなければなりません(17、103)。6歳以下の子供たちの平均飲用量は、一日に0.5リットル以下です(103)。したがって、6歳以下の子供たちは至適濃度のフッ素添加飲料水(1ppm)を飲むことで一日に0.5mg以下のフッ素を摂取します。

もし子供が水道水フッ素化が行われてない地域に住んでいたら、歯科医師あるいは医師はフッ素補助剤を処方することができます。表1の「フッ素補助食品表 1994」(質問9. を参照)に示したように、現行の適用量表でそれぞれの年齢の適切摂取量より低い量で、フッ素の補助剤を用いることが勧められています。適用量表は軽度の歯牙フッ素症を発症することなく、安全な領域でむし歯を減らすことができるように処方されています。例えば、3歳の子供は0.7mg/dayです。水道水フッ素化が行われていない地域に住む3歳の子供たちに推奨されるフッ素補助食品の適用量は0.5mgです。これは食物や飲料、その他から摂取されるフッ素のための余地が残してあるためです。

最近の子供たちは以前に比べて、様々なものからフッ素を摂取していることから、広い地域でむし歯は減ってきました。多くは局所的な使用と考えらますが、子供が不注意にフッ素を摂取してしまうことがあります(109)。口腔の健康における利益を損なうことなく歯牙フッ素症のリスクを減らすために、不注意なフッ素の摂取には気をつけなければなりません。  

小さな子供たちは歯磨きの度にフッ素添加歯磨剤から平均0.30mgのフッ素を飲み込むという報告があります(110-113)。もし子供が一日に2回歯磨きをするなら、0.60mgが摂取されます。これは表2から適切摂取量を僅かに超えます。0.60mgの摂取は6〜12ヶ月の子供にとって適切摂取量値を0.10mg超過し、1〜3歳の子供の適切摂取量より0.10mg少なくなります(74)。歯磨剤は飲み込むものではないものの、子供たちは歯磨剤だけから推奨された一日のフッ素の適切摂取量を摂取するかもしれません。歯牙フッ素症のリスクを減らすために、アメリカ歯科医師会は1992年から、両親や子供の世話をする人に歯磨きの時は子供用の歯ブラシの上にフッ素添加歯磨剤は豆粒大1ヶ分だけのせるように推奨しています。小さな子供が歯磨きをするときは歯磨剤を飲み込まないように監視し、吐き出すことを教えなければなりません。

ここでは摂取するフッ素の量について述べてきました。フッ素を摂取した場合、一部は体内にとどまり、一部は排泄されます。このことについては質問17で述べます。

質問17
摂取されたフッ素はどこに行くのですか?

解答
ほとんどは排泄されます。体内に残っているフッ素の多くは、骨や歯といった石灰化した(硬)組織中に存在し、フッ素は歯と結合してむし歯を防ぐのです。

解説
至適濃度のフッ素添加飲料水を飲んだときのように、フッ素を摂取するとその大部分は胃と小腸から吸収され、血流へと運ばれます(114)。そして血液中のフッ素レベルは短い時間に上昇して、 20〜60分以内にピークに達します(115)。通常、ピークレベルから3〜6時間以内に急速にその濃度は減少し、硬組織によって取り込まれたり、腎臓から排出されます(104)。若年、あるいは中年の成人が一日に吸収したフッ素のおよそ50%は24時間以内に硬組織に沈着し、残りのほとんど全てが腎臓から排出されます。体内に存在するフッ素のおよそ99%は硬組織と結合しています(114)。

摂取したフッ素や体内に分布しているフッ素は形成中の歯牙組織に結合します。歯牙形成中に定期的にフッ素を摂取すると、フッ素は歯牙表面全体に沈着し、長期間むし歯予防に役立ちます(このことについては質問1. を参照)。

年齢や骨の発育程度によって、体内に残っているフッ素の量は変わります。骨に取り込まれたり、体内に残っているフッ素の総量は年齢と逆比例の関係です。つまり、フッ素は老人よりも若年者の骨中に多く含まれています(104、114、115)。

一般的に受け入れられている科学的認識によると、至適濃度のフッ素添加飲料水を摂取しても骨に悪影響はありません(116-120)。進行した骨フッ素症や重度の骨フッ素症は「20ppmにものぼるフッ素を含んだ水(自然水のフッ素濃度)を供給してきた米国の地域でも認められません」(74、121)。これらの地域においては毎日20mgのフッ素を摂取することは珍しくありません(74)。重度の骨フッ素症は、米国においてはここ35年間で5例確認されただけのとても珍しい疾患で、至適濃度のフッ素添加飲料水とは関係がありません(74)(このことについては質問18. を参照)。

体内からフッ素を排泄するために腎臓は大きな役割を果たしています。健康な腎臓ではフッ素は迅速に排泄されますが、腎臓透析はしていないものの腎臓の機能が極端に低下している人ではフッ素の排泄が減少するかもしれません(96)。腎機能が低下した人で歯牙フッ素症や骨フッ素症の発症例は認められていませんが、フッ素の排泄が減少したことが全身の健康に与える影響ははっきりわかっておらず、腎機能が低下した子供たちの継続したフォローアップが勧告されています(54) (このことについては質問31. を参照)。

質問18
至適濃度のフッ素添加飲料水を生涯を通じて摂取すると、骨に悪い影響はないのでしょうか?


解答
一般的に受け入れられている科学的認識では、至適濃度のフッ素添加飲料水は骨に悪影響はありません(116-120、122)。

解説
水道水フッ素化が骨に影響を与えるという確かな科学的根拠はないので、公衆衛生政策を変更する必要はありません。飲料水に至適濃度あるいは至適濃度よりも高いフッ素を含む地域に住んでいる人達の骨組織に対する影響について数多くの調査研究されてきました。これらの研究は、二つの特定の分野に集中しています。一つにはフッ素と骨折との関連の可能性、もう一つには骨の強化と骨折予防におけるフッ素の有効性についてです。またフッ素と癌との関連の可能性についても研究されました。

フッ素添加飲料水は骨密度に重大な影響を与えません
1991年、米国 国立関節炎・筋骨格系・皮膚疾患研究所と米国国立歯科衛生研究所が共同して、ワークショップを開催しました。飲料水によるフッ素摂取とヒトの腰骨骨折および骨の健康における関連性について話し合いがありました。NIHでの会議で研究者達は昨今のフッ素暴露と骨健康に関する論文について検討し ました。 このとき参加者は、現段階で飲料水中のフッ素について、数地域での追跡調査は行うものの現行の公衆衛生政策を変更する必要はないという結論に達しました(116)。

1993年、フッ素添加飲料水が腰骨骨折の危険性の増加に影響を与えないという2つの研究が発表されました。1つは、カナダのアルバータのよく似た環境に住んでいる2地域の人達についての調査でした(117)。この調査は1 ppm の至適濃度に調節した水道水フッ素化都市と、わずかに 0.3 ppm 濃度のフッ素を含む天然水の都市について比較でした。両方の都市の居住者の腰骨骨折による入院の割合 の間に有意の差は認められませんでした。「これらのことから、飲料水フッ素添加は腰骨骨折に影響を与えない、つまり、有益でも有害でもないことを示した 」(117)ことになります。2つめの研究は水道水フッ素添加の開始前後における腰骨骨折発症率 についてのミネソタ州ロチェスターでの調査でした(118)。50歳以上の男性と女性の腰骨骨折の発生率について(1960年にフッ素添加される以前の)1950年〜1959年と水道水フッ素化後の10年間について比較しました。ここでは腰骨骨折の発生率が減少したこと、そしてそれは水道水フッ素化以前からその減少が始まっていたこと、そしてさらに減少が続いていることが示されました。これらのデータは、ミネソタ州ロチェスターにおいて、水道水フッ素化によって腰骨骨折の危険性が増加することはないことを明らかにしました。1993年以前には、1993年のミネソタの調査の筆頭著者が、初期の2つの研究の水道水フッ素化と腰骨骨折の調査ではフッ素化地域で骨折のリスクがごく僅かに増加するとを述べていました(123、124)。1990年の調査では65歳以上の女性の腰骨骨折の発生率について米国内における地域差について調査しました。州レベルにおける腰骨骨折の発生率は女性の地域差のパターンと強く関係しており、米国の南部に高リスク地帯が認められました。この分析の結果から、軟水あるいはフッ素添加飲料水、貧困、日照時間不足、田舎の地域で、腰骨骨折のリスクが増加していたことがわかりました。研究者はついに明らかなリスク因子や地域差を十分に説明できる因子はないことを明らかにしました(123)。2つめの調査は1992年に発表されました。それは65歳以上の女性と男性における腰骨骨折と水道水フッ素化の間の関係の生態学的調査です。(生態学的調査においては個人ではなくグループで調査されます)この調査では、水道水フッ素化と年齢における腰骨骨折の発生率には僅かにプラスの関係があることが報告されました。研究者達はこの結果はまだ健康政策のための明らかな根拠を示していないとし、後、研究でそうであることが確かめられました(124)。

1997年に、1993年のミネソタの調査と先ほどの述べた二つの研究の筆頭著者が、「私の意見としては,いかなる研究からも水道水フッ素化が腰骨骨折の リスクを増加させたりましてやリスクを倍増させるというようなことは例証されてい ない。」とうことを序説で結論づけています(125)。

ドイツ東部において行われた生態学的調査ではケムミツ(至適濃度のフッ素添加地域)とハルレ(フッ素化されていない地域)に住んでいる成人の腰骨骨折の発生率が比較されました。その結果、至適濃度のフッ素添加飲料水の摂取は、老人、特に84歳を過ぎた女性では腰骨骨折の発生率は減少していることが判りました( 122)。

一般的に受け入れられている科学的な認識によると、至適濃度のフッ素添加飲料水の摂取は骨の健康に悪影響を与えません(116-120)。むし歯予防のために適切と考えられるフッ素の摂取は骨量に重大な影響を与えることはありません(126)。

骨強化におけるフッ素の役割
フッ素と骨の健康に関する二つ目の大きな研究分野は骨の強化と骨折の予防におけるフッ素の役割 です。骨粗鬆症は骨量が減少するという特徴があります。ここ30年間、この骨粗鬆症の治療の実験療法として、主に徐放性のフッ化ナトリウムによるフッ素が用いられてきました。骨粗鬆症の人はとても小さなケガが原因で骨折することがあります。フッ化ナトリウム療法はフッ素に骨の喪失を減らしたり、現存の骨量を増やしたり、また、骨折を予防する作用があるために用いられてきました(116)。臨床試験の結果は、次に示す2つの調査が示しているように結果は一定 ではなく、さらなる調査の必要性が示唆されました。

1995年、4年間にわたる調査の最終報告でフッ素には骨量の増加を助ける働きがあることがわかりました(127)。この調査では閉経後の骨粗鬆症の女性で徐放性のフッ化ナトリウム(1日2回25mg)とクエン酸カルシウム(1日2回400mg)を4年間(12ヶ月治療を受け、2ヶ月は治療を受けないという)14ヶ月サイクルで摂取を繰り返してきた人達について調査が行われました。その結果この治療は安全で、新たな脊椎骨骨折を減らし、脊椎骨の骨量の増加に効果があるという結論を得たのです(127)。

50人の閉経後の女性における6年間の臨床試験では、フッ化ナトリウムとカルシウムの補足治療は骨粗鬆症の治療に効果がありませんでした(128)。

フッ素と骨癌は無関係
フッ素と骨癌の関連の可能性についても調査されました。1990年代の始め、二つの調査で実験動物におけるフッ化ナトリウムの発癌性の評価が行われました。はじめの研究は米国環境健康科学協会の米国毒性研究班(NTP)によって行われました(129)。二つめの調査はプラクター&ギャンブルカンパニーがスポンサーとなり行われました(130)。両方の調査ともフッ化ナトリウムを至適濃度よりも高い濃度でラットやマウスに投与しました。これらの調査を組み合わせると、それぞれの性別/種別で8グループの分析ができます。これらのグループのうち7グループでは悪性腫瘍形成の証拠は認められませんでした。1グループ、つまりNTP調査のオスラットで発癌性の「疑わしい」証拠が示されました。その腫瘍は腫瘍の悪性増加としてNTPが定義している、骨肉腫(骨の悪性腫瘍)です。米国公衆衛生局のフッ素におけるアドホック小委員会レポートは2つの研究の結果を総合して、「この時点で入手できる2つの動物実験ではフッ素と癌の間の関連を立証することはできない」(54)と明言しました。(このことについては質問22. を参照)

質問19
歯牙フッ素症とは?

解答
歯牙フッ素症とは歯の表面の変化であり、過剰のフッ素を乳幼児期からエナメル質が形成される時期まで摂取することが原因になります。歯牙フッ素症発症のリスクは幼児のフッ素製剤の適正利用を厳密に管理することで 減少させることができます。

解説
歯牙フッ素症は若年期に歯が作られる期間にエナメル質形成が阻害されることによって起こります(104)。第三大臼歯(親知らず)を除く永久歯のエナメル質は生まれたときからおおよそ5歳くらいまでに形成されます。エナメル質が完全に形成された後に過量のフッ素を摂取しても歯牙フッ素症は発生しません(131) 。児童や大人になってからは歯牙フッ素症は発生しません。歯牙フッ素症は歯が萌出してからでないと明らかにはなりません。歯牙フッ素症は歯肉のなかで歯が作られている間に起こるので歯が生えてから発症するものではありません。 歯牙フッ素症の程度を分類する方法はいくつかあります。それらのなかでディーンが提唱した分類法は最も良く用いられており、等級を簡単に図に表すことができます(132)。
表3 ディーン(H. T. Dean)による歯牙フッ素症の分類 1942年( 132)
分類 範疇−エナメル質の状態
正常 滑らかで、光沢があり、薄いクリーム状の白色の透明感のある表面
疑問 2〜3の白紋または白斑
軽微 小さな不透明な、白紙のような領域が存在し、その面積が歯面の25%以下
軽度 不透明な白濁が歯面の50%以下を占める
中等度 全歯面が侵されている。咬合面に顕著な咬耗。茶褐色の着色が認められることがある
高度 全歯面が侵されている。不連続あるいは合流した窪み


ディーンの歯牙フッ素症分類を用いる場合、個人の口腔内の歯牙は、表3に示す通りに数値化されます。個人のフッ素症指数は最も重い2歯以上のスコアーをあてます。 Very mild(非常に軽度)からmild(軽度)のフッ素症は歯の機能になんら問題なく、むし歯に対して抵抗性があると思われます。このタイプの歯牙フッ素症はそれを有する個人にも、一般の人にもすぐにはそれとわからないもので、それを判断するには通常訓練を受けた専門家でなくてはわかりません。それとは対照的に中等度から重度の歯牙フッ素症は歯の色の変化や表面形態の不正が特徴的です。多くの研究者は高度に進行した歯牙フッ素症の審美的な影響は機能的な問題よりも大きいと考えています(74)。米国環境庁は歯牙フッ素症の問題点は健康の面よりも審美的な面であると言っています。歯牙フッ素症の子供や大人を対象とした心理上の問題点についての研究はほとんどありません。おそらく歯牙フッ素症の大半を占める軽度またはきわめて軽度の症例の人々はあまりその状況を気にしていないためと思われます(54)。1986-1987年に米国国立歯科衛生研究所が行った米国の学童の調査によると、ディーンの分類を用いた歯牙フッ素症は22.3%の児童にみられます(54)。これら児童達はすべてのフッ素供給源(フッ素添加水道水、飲み物、フッ素入り歯摩剤、食事)からフッ素を摂取しています。

フッ素症のタイプの罹患率は、    
Very mild fluorosis(極めて軽度)17.0%
Mild fluorosis(軽度)4.0%
Moderate fluorosis(中等度)1.0%
Severe fluorosis (重度)0.3%    

中等度ないし重度のフッ素症はフッ素症全体のほんのわずかな部分(6%)を占めています。言い換えると、フッ素症全体の94%は極めて軽度または軽度のフッ素症です(図2参照)。 栄養学的に見るとフッ素は正しく摂取されるなら安全で効果的なものです。推奨される飲料水中のフッ素濃度は0.7 - 1.2 ppmであり、これはむし歯を最大限に予防するフッ素濃度であり、同時に軽度の歯牙フッ素症が起こりうる最小限の濃度です(54)。
全ての公衆衛生的方法と同じように 水道水フッ素化の効果とリスクについて検討されています。水道水フッ素化の効果については本稿の効果のセクションで詳細に述べています。また、水道水フッ素化の安全性については本章の後のほうで詳しく論じています。歯牙フッ素症発生のリスクについては、至適濃度のフッ素添加水を摂取しており、他からフッ素を摂取しない場合で10%の子供達に極めて軽度のフッ素症が発生することが科学的に証明されています。表3に示すように、極めて軽度のフッ素症とは、不透明、又は白紙状の部分が歯の表面の25%未満に見られる場合と定義されています。極めて軽度の歯牙フッ素症を発現するリスクよりもその個人のむし歯が少なく、その結果、治療費がかからないという利益の方に重きを置くに違いありません(4、5)。歯牙フッ素症よりももっと大きな審美的問題をおこすむし歯になる方がよいかどちらを選びますか( 134)。


写真2
重度のむし歯 軽度の歯牙フッ素症


1994年、最新の5つの報告によると水道水フッ素化が原因となる歯牙フッ素症発生の割合は13% です。この ことは水道水フッ素化を止めれば歯牙フッ素症の13 %が減少すると言うことです。  つまり、大部分のフッ素症はフッ素添加水道水以外の不適切なフッ素摂取によるもの と考えられます(このことについての追加情報は質問20でも取り上げています)。 今日、見られる歯牙フッ素症のタイプのほとんどは軽度か極めて軽度に分類されます。米国における水道水フッ素化地区と非フッ素化地区の歯牙フッ素症の有病率は60年前に行われた調査よりも高くなっていますが、水道水や食品からのフッ素の摂取量は当時と余り変化していないので、子供のフッ素症発生のリスクは、不適切なフッ素含有歯科関連製品の使用によるものと思われます。米国歯科医師会が推奨しているように、そのような歯科関連製品に注意 書きをすることによりフッ素症発生のリスクをかなり減少できます(74、96)

質問20
子供達の歯における歯牙フッ素症は予防できるのでしょうか?


解答
一般的に認められた科学的知見から様々なリスク因子が見分けられ、確認されてきましたが、アメリカにおける歯牙フッ素症の発生は、水道水フッ素化による年少の子供達のむし歯予防の利益を損なうことなく、減少することができました。

解説
子供のエナメル形成期(口腔内に歯が萌出する前)に、高濃度のフッ素を摂取することが、歯牙フッ素症のリスク因子になります(52、135)。フッ素を含む食物からのフッ素摂取の研究によると、飲料物や水は、その原材が50年以上比較的一定であるため、 歯牙フッ素症増加との関連はありえません(104、107)。

10年間以上前と比較して、今日の子供達は、色々なフッ素製剤からフッ素に接するようになったためむし歯は減少してきました。これらの多くは、局所に限った使用を明記していますが,いくらかのフ ッ素は不注意に子供に摂取されます (109)。局所応用の不適当なフッ素の摂取は予防することができ、それはむし歯予防の利益を損なうことなく歯牙フッ素症のリスクを減少させます。

1992年以来、米国歯科医師会では、承認印としてフッ素含有歯磨剤のラベルに「6歳以下の子供には(歯磨剤を)エンドウ豆大の量のみ使用すること」という注釈をいれるよう歯磨剤業者に要請しました。歯磨剤のラベルに6歳を選んだ理論的根拠は、就学前の年齢の子供達は、飲み込み反射が十分に発達していないことや、ブラッシング時に歯磨剤を過剰に飲み込むおそれのあることを基にしています。加えて、永久歯のエナメル質形成は、6歳で基本的に完成しているため、歯牙フッ素症のリスクは、減少しています。歯牙フッ素症は、歯が歯肉の下で形成される間におこるので、萌出した歯をもつ人には、歯牙フッ素症のリスクはありません。 (この件におけるさらなる解説は、質問16と19で見いだせるでしょう。)

フッ素含有歯磨剤をエンドウ豆大の量以上に用いての年少の子供達のブラッシングと、非常に軽度もしくは軽度の歯牙フッ素症のリスクとの直接的な関連について様々な研究がなされています(136-138)。その1つは、水道水フッ素化地域に住む916人の子供達のうち歯牙フッ素症と同定されたのは71%で、出生からの8年間で、一日1回以上推奨された量(各々のブラッシングで、エンドウ豆大)以上でブラッシングしてきていました(139)。親や保育者は、ブラッシング時に年少の子供達の歯ブラシに、フッ素含有歯磨剤をエンドウ豆大のせるべきです。ブラッシングの間、年少の子供達を見守り、歯磨剤を飲み込まないように指導しなくてはなりません。
(※ 注 日本の場合、水道水フッ素化されていないので、フッ素摂取量は小さくてアメリカの例は適応されません)

さらに歯牙フッ素症の25%の者は、出生からの8年間で、(フッ素化水道水を使用している間も)過剰なフッ素補充剤を摂取してきたことが原因であったことがわかりました(139)。フッ素補充剤は、1994年のアメリカ歯科医師会、アメリカ小児科学会、アメリカ小児歯科学会により認められたフッ素補助剤の用量と用法で推奨されたように処方されるべきです(12)。フッ素補助剤は、水道水フッ素化未実施地区に住んでいる子供達だけに処方されるべきです。飲食物のフッ化物の源は多いため、適切なフッ素量の処方は複雑になってしまう可能性があります。子供に対してフッ素補助剤が処方される以前のフッ素摂取歴から全てのフッ素源を評価することが推奨されています(73)。水道水のフッ素濃度がわからない場合にはその家庭の水道水を測定するという評価もこれに含まれています。
※(注) フッ素補助剤とはフッ素錠剤、フッ素液剤(ドロップ − 幼少児用)を言います。

親、保育者、健康管理の専門家は、子供が6歳以下の場合、全てのフッ素を含む歯科商品の使用をきちんとモニターすべきです。いかなる医薬品も、多いことは必ずしも良いとは限らないのです。処方されたフッ素補助剤あるいは処方せんなしで買える商品(フッ素歯磨剤や洗口剤)のラベルに書かれている指示に従うべきです。米国歯科医師会では、フッ素洗口剤の使用について、洗口時に飲みこむかもしれないため、6歳以下の子供を除くよう指示しています。加えて、これらの商品を子供の手の届かないところに保存するよう指示しています。 ※(注)わが国の幼稚園、保育園の子供達はフッ素洗口は上手で毎回全量飲み込む子供はいないようです。洗口量の約1割が口の中に残りますが、その量はお茶2〜3杯のフッ素量に過ぎません。またわが国では水道水フッ素化が実施されていませんので何ら問題になりません。

最後に、地下水で、天然のフッ素量が2ppm以上の地域では、(天然のフッ素濃度を低くおさえることにより)年少の子供達の歯牙フッ素症のリスクをより低くしなくてはいけません(歯牙フッ素症は、形成期の歯が高いフッ素濃度、量にさらされることだけが原因となり発生するもので、大人には影響がない)。水道水供給事業体に水道のフッ素濃度を尋ねるべきです。井戸を有する家庭ではそのフッ素濃度を正確に知るためにフッ素濃度の測定を依頼すべきです。また歯科医師に水質調査とその量が歯科保健的に適切であるかどうかを相談するべきです。年少の子供達がいる家庭で、井戸水のフッ素濃度が2ppm以上なら、飲食用に、ボトル水のような代わりの水を準備すべきです。個人の井戸はフッ素濃度が変動することがあるので、少なくとも1年に一度はフッ素濃度を調べるべきです。米国歯科医師会では、飲料水のフッ素濃度の低い地域の子供達にだけに、フッ素補助剤を勧めています。
(さらなる解説は、質問9、32でみることができるでしょう。)

質問21
水道水フッ素化で供給されるフッ素は毒物でしょうか


解答
一般的に受け入れられている科学的知見によれば、至適濃度にフッ素添加されている水道水のフッ素は毒ではありません。

解説
生命や健康にとって欠かすことのできない多くの一般的な物質、例えば塩、鉄、ビタミンA、D、塩素、酸素、そして水そのものでさえもそうであるように、フッ素も過剰量では毒になります水道水フッ素化に用いられるごく低濃度のフッ素(0.7〜1.2ppm)は有害ではありません。適切なフッ素添加水道水を飲むことによって急性フッ素中毒が起こることはありません(104)。成人(約70 Kgの男性)を死に至らしめる必要なフッ素量は、まとめて飲み込んだ場合、フッ化ナトリウム5 〜 10グラムと見積もられています(140)。この量は適切な濃度のフッ素添加水道水を一回に8オンス(約227 ml)飲むとした場合、10、000 - 20、000回分の飲料水から得られるフッ素よりも多い量です。

フッ素の慢性中毒は適切な濃度のフッ素添加水道水のフッ素濃度とはかけ離れた極めて高濃度のフッ素添加の飲料水を10年又はそれ以上飲用した場合に発生します。高濃度のフッ素の水を長期間飲用して最初に現れるフッ素の悪影響は骨フッ素症です。骨フッ素症の発生と重症度はフッ素添加水を飲用した期間とフッ素濃度に関与します。例えば、だいたい5 ppmのフッ素を含む天然水を10年またはそれ以上飲み続けると、骨フッ素症の軽度の症状である骨硬化症の臨床的なサインがその地域の人々に現れます。天然水で5ppmのフッ素を含み、一日のフッ素摂取量が10 mgになるような地域は稀ではないでしょう(74)。

4 〜 8 ppmのフッ素を含む天然水を飲料しているテキサスとオクラホマの住人、170、000人を対象にX線検査を行ったところ、わずかに23例に骨硬化症が見られ、骨フッ素症は全く認められませんでした(141)。天然水のフッ素濃度が20 ppmを越えるようなアメリカの地域全体において骨フッ素症や運動障害性フッ素症が見られたという証拠はありません(74、121)。このような地域では飲料水からの一日のフッ素摂取量が20 mgを越えることは稀ではありません。米国においては運動障害性フッ素症は極めて稀であり、適切なフッ素濃度の飲料水で発生することはありません。運動障害性フッ素症は最近35年間ではわずか5例しか確認されていません(74)。 (このトピックについて質問16と32において追加情報を掲載しています)

低濃度のフッ素を長期間にわたって摂取し続けた場合の健康への為害性についてもかなりよく研究されています。栄養学的にはフッ素は適切に摂取された場合は安全です。広く受け入れられている科学的根拠に基づき、上水道フッ素化の効果と安全性に問題はありません。50年来の研究と実践によって得られた水道水フッ素化の安全性と効果はどのような科学的根拠にも優るものです。 一時期、高濃度のフッ素化合物が殺虫剤や殺鼠剤に用いられていました(27)。現在ではさらに効果的な薬剤が開発されたためフッ素化合物が農薬等に用いられるのは稀です(104)。大量のフッ素は確かに毒になり得ますが、そのような極めて高レベルの濃度のフッ素と、適切なフッ素添加水中のフッ素とは異なっているということを認識する必要があります。 

大量のフッ素と極微量のフッ素に同じ効果がある事実は全く認められていません。広く用いられている多くの物質は少量では効果をもたらしますが、大量では毒になり得ます、塩、塩素や水そのものも大量ではすべて毒なのです

質問22
適切なフッ素添加水は癌の原因となったり、その増殖を促進しますか


解答
一般的に広く受け入れられている科学的事実によると、ヒトの癌発生と飲料水のフッ素添加との関連性はありません。

解説
1945年に水道水フッ素化が開始されてから、異なった集団や期間を対象に50以上の疫学調査が行われてきましたが、上水道フッ素化と癌発生のリスクとの関連は認められませんでした(54)。アメリカ(143-148)、日本(149)、イギリス(150-152)、カナダ(153)やオーストラリア(154)で研究がなされています。独立したいくつかの組織が科学論文を広範囲にレビューしており、上水道フッ素化と癌の間には全く関係がないと結論されました(54、94、96、155)。

さらに米国環境庁は1997年12月7日の官報で適切なフッ素は安全であると述べています。EPAのフッ素化合物についての最終報告で、50以上の疫学調査により、フッ素とヒトの癌発生のリスクとの間に関連があるという仮説は支持できないと述べています。 水道水フッ素化と癌は関連性はなしとの多くの科学的証拠があるにもかかわらず、フッ素と癌増加に関連があるという主張がありました。この主張は、アメリカ国内の10の水道水フッ素化地区と水道水フッ素化未実施地区との間で癌の死亡率を比較した研究に基づいているとのことですが、この研究は多くの研究者によって論破されてしまいました(157)。

米国国立ガン研究所はこのデーターを分析し、著者らは年齢、性など癌発生に関与する様々な因子について補正されていない と述べています。さらに別の研究者たちもその欠点を指摘しています。水道水フッ素化都市は水道水フッ素化未実施化都市よりも工業化が進んでいます。高度に工業が進んでいる地域では一般的に癌の発病率が高くなっています。水道水フッ素化されている都市の癌発生率はこの20年で高くなっていますが、その増加率は非フッ素化地区と全く同じであること(15%)にも注目しています。これらの報告により、上水道フッ素化及びその期間と癌発生については全く関係がないという結論が出されています(54)。

1990年のはじめに実験動物を用いて適量以上のフッ化ナトリウムを投与し癌発生について検討した2つの実験があります。1つ目の実験は米国国立環境健康科学研究所の国立毒性研究プログラム (NTP)によって実施しました(129)。2つ目はプロクター&ギャンブル社のサポートで行われました(130)。いずれの実験も適量以上のフッ化ナトリウムをラットとネズミに投与しています。2つの実験をあわせると、性や種の違いで8つのグループに分けて検討したことになります。

オスのラットを用いた一つの実験では、科学的に関係があると考えられる骨肉腫(骨の悪性腫瘍)等の悪性新生物がほんのわずかだけ増加したのでNTPはフッ素と癌発生の関係に付いて"疑わしい"と述べています。米国公衆衛生局のアド.ホック(Ad Hoc)小委員会は二つの実験を総合して考察した結果、「二つの実験結果をあわせると、癌発生とフッ素の間にはなんら関係がない」という声明をだしています(54)。

1990年、米国国立癌研究所の研究員達は36年間のアメリカにおける飲料水のフッ素化と癌の死亡率および15年間隔での癌発生率について評価しました。フッ素化された飲料水を用いている地域での230万人の癌死亡者と125、000の癌の症例を調べた結果、癌発生のリスクとフッ素化された飲料水を飲むことには関連性がないとの結論の発表しました(54)。 米国癌協会が発行した「フッ素と上水道フッ素化」の中で「癌発生と飲料水へのフッ素添加との関連を示す科学的根拠はない」と述べられています(142)。

質問23 
フッ素含有飲料水によるフッ素摂取は、ヒトにおける酵素活性を阻害するでしょうか?


解答
一般的に受け入れられる科学的知識によると、至適濃度で供給されるフッ素含有飲料水はヒトの酵素活性を阻害しません。

解説
酵素は有機化合物であり、体の中での化学的変化を促進します。一般的に認められている科学的知見からは、ヒトが至適濃度でのフッ素含有飲料水を飲むことにより、酵素活性に害はないとの結果が示されています(105)。WHOレポートの「フッ素とヒトの健康」では、「1ppmレベルのフッ素飲料水を摂取することで食品の中間代謝やビタミン、あるいはホルモンや酵素活性に影響を与えるという証拠はない」と述べています(158)。

ヒト酵素活性を抑制するために実験室で用いられているフッ素濃度は、ヒトの体液や組織に存在するフッ素濃度の数百倍も高いのです(140)。フッ素は、生体を離れた人工的な状況で酵素に影響するかもしれませんが、細胞内で生命体でおこりうる酵素活性を変化させるようなフッ素量が存在することはありえないでしょう(105)。フッ素は腎臓によって急速に排出されるとともに、硬組織ではフッ素が取り込まれるという2つの主な生理機構によって、体液中のフッ素イオンは低いレベルに維持されているのです。

質問24
至適濃度のフッ素飲料水を飲むことによるフッ素摂取により、免疫機能を変化させたり、アレルギー反応(過敏な反応)をおこしたりするでしょうか?


解答
一般的に認められている科学的知見では、上水道フッ素化による特別な免疫反応への悪影響やアレルギー反応についての報告はありません(159)。

解説
ヒトにおいても動物実験においても、フッ素に対するアレルギーや皮膚反応テストで陽性がでたという報告はありません(159)。米国アレルギー学会では、フッ素に対するアレルギー反応についての臨床報告として、「水道水フッ素化で用いられるフッ素に対するアレルギーや過敏反応をおこす証拠はない」と結論づけています(160)。 国立科学学会の委員会では、同じ臨床データを分析してアレルギー反応があるとの主張を認めることができない理由は、この臨床研究よりもかなり高濃度のフッ素添加飲料水を飲んでいる数多くの人々についても同様な報告が、ほとんどないということである。」と報告しています(14)。 

WHOもまた上記のアレルギー反応をひきおこすというケースは「いろいろな無関係な状況」に該当するとし、フッ素によるアレルギー反応の証拠はないとしたのです(161、162)。 フッ素と白血球機能に関する1996年の文献の再調査では多くの研究結果を検証し、水道水フッ素化によってアレルギー反応や免疫反応がひきおこされることは全くないと結論づけました(159)。

質問25
至適濃度の水道水フッ素化はエイズの原因になるのでしょうか?


解答. 
適切にフッ素化された水道水とエイズ(後天性免疫不全症候群)との関連については科学的な証拠はありません。

解説.
エイズはヒト免疫欠乏ウィルス(HIV)として知られているレトロウィルスによって引き起こされます。HIVの感染経路は無防備な性交渉・感染血液あるいは、その汚染された血液製剤との接触、また感染した女性の妊娠中の胎児へのウィルスの移行あるいは、出産時における新生児への感染などがあります(163)。   水道水フッ素化地域とHIVあるいはエイズとの関連は科学的に証明されていません(164)。

質問26
水道水フッ素化地域で使用されているフッ素による遺伝学的な危険性がありますか?


解答
一般的に受け入れられている科学的知見によると、米国研究協会(NAS)の米国科学学会(NRC)は適切にフッ素化された水道水を飲むことは遺伝的な危険性がないという結論を支持しています(96)。

解説
染色体はDNAを含む細胞の主体をなし、遺伝的特徴の決定と遺伝を司ります。遺伝子は機能的な遺伝的単位であり、染色体上の決められた位置に存在します。フッ素による染色体の損傷に関する多くの研究がなされてきました。しかし、ヒトにおけるフッ素の遺伝毒性(DNA損傷)についての研究は報告がなく、多数の研究はマウスでなされています(96)。それらの研究では、骨髄や精子において、フッ素濃度がフッ素化された水道水の100倍の濃度であっても、フッ素が染色体に損傷を与えることは実証できませんでした(165-171)。
他の研究グループでは、特に遺伝的突然変異を起こしやすいヒト白血球の染色体にも、フッ素が影響を与えることはないと報告しています。

フッ素は染色体に損傷を与えないだけでなく、知られている変異原性物質(DNAに変 化を引き起こすもの)から染色体を守っていたのです (172、173)。フッ素の遺伝毒性も、ハムスターの骨髄細胞や培養卵巣細胞で研究されていますが、ここでもまたフッ素が染色体に損傷を与えず、それゆえ遺伝的に危険ではないとしています(174)。さらなるテストで、最も広く使用されている細菌変異誘発試験(Ames test)を広範囲のフッ素レベルにわたって行った結果、フッ素は変異原性でないことが認められました(174-177)。  

ヒトの生殖力と出生率におけるフッ素の影響について、ときどき疑問の声があります。非常に高濃度のフッ素を取り込むことは、多くの動物種において生殖に悪い影響を与えます。ところで、動物において生殖に悪影響を与えるというフッ素濃度は、ヒトがむし歯予防のため飲用する水のフッ素濃度よりも異常に高い濃度100-200ppmです。それゆえ、水道水フッ素化濃度(0.7-1.2ppm)でのフッ素の摂取がヒトの生殖に悪影響を及ぼすという科学的根拠にはなりません(96)。

ある研究では、3ppm以上のフッ素濃度の地区との出生データを比較し、高濃度のフッ素含有飲料水と低出生率との関連を示そうとしました(178)。しかしながら、実験計画解析に重大な欠陥があったため、正の関連を示すことができませんでした(179)。 米国研究協議会(NRC)の米国科学学会(NAS) では適切な飲料水フッ素化は一般的に危険ではないという結論を支持しています。その研究を要約した声明によると、NRCは生体外実験のデータでは、フッ素の遺伝毒性はヒトが利用しているフッ素濃度よりも異常に高い濃度に限られています。高いフッ素濃度の時でさえ、遺伝毒性がいつもみられるというわけではありません。そして、報告されている遺伝毒性への影響は、恐らく無いか遺伝的には無視できるものである"と述べられています (96)。

哺乳動物細胞で染色体異常を引き起こすと報告されているフッ素の最小量は、飲料水がフッ素化されている地域のヒトの細胞のフッ素濃度の約170倍であり、これが水道水フッ素化がとても安全であることを証明しています(96)。

質問27
至適濃度にフッ素化された水道水を飲むことはダウン症候群の子供の出生率を増加させますか?


解答
一般的に、ダウン症候群と至適濃度にフッ素化された飲料水の摂取との間の関連性を示すような科学的見解はありません。

解説
 この問題はもともと1956年と1963年の発表された2つの研究によって持ち上がりました。1956年に中西部の数州から収集されたデータがフランスの雑誌に2つの論文として発 表され,その中で飲料水中のフッ化物とダウン症候群との関係があると主張されまし た (180-181)。  
米国国立歯科衛生研究所の経験豊かな疫学研究者および歯学研究者と国立精神衛生研究所の研究員は、これら2つの研究の統計処理と研究計画に重大な欠点を発見しました。中でも重大な誤りは、母親である女性の多くが妊娠中に生活していた非フッ素化農村地帯ではなく、出産した地域が水道水フッ素化地域だったということに基づいて間違った結論を導いたという事実です(140)。さらに、上水道フッ素化地域と非フッ素化地域のダウン症候群の症例数が、米国や世界の多くの地域でみられる割合よりもはるかに少なかったことから、その所見の正当性に疑いの目が向けられました。

次に、1956年の研究の結果の誤りを明らかにする多くの研究を要約したものを紹介します。  あるイギリスの内科医が公共施設や学校保健職員による記録から人口動態統計を再調査し、保健婦やダウン症候群の子供達の介護にあたっていた人たちの話を聞きました。その結果、ダウン症候群と母親が摂取した水のフッ素濃度との間にはなんら関連がないことが示されました(182)。これらの知見はマサチューセッツで出生した約2、500のダウン症候群についての詳細な研究によって確証されました。1、000の出生につき1.5の疾患の発生率は、フッ素添加地域と非添加地域のいずれにもみられ、フッ素化がダウン症候群のリスクを増加させないという強力な証拠となりました(183)。

別の約140万人の出生を扱った大規模な研究では、水道水フッ素化とダウン症候群を含む先天的な奇形との関連性はみられませんでした(184)。1980年にイギリスのバーミンガムでの25年間の先天奇形の発症率についての再調査が行われました。バーミンガムでは1964年に水道水フッ素添加が始まりましたが、ダウン症候群の発症率にはその後も変化がみられませんでした(185)。ダウン症候群の出生に関する包括的研究が、米国の44の都市で2年間行われました。ダウン症候群の発症率はフッ素添加地域と非添加地域の両方で同じ結果でした(186)。

質問28
至適濃度のフッ素添加飲料水摂取は神経性疾患に影響を与えますか?

解答
至適濃度のフッ素添加飲料水と知能への影響を含めた中枢神経系の疾患との間に因果関係があるという科学的根拠はありません。

解説  
フッ素添加飲料水を飲むと、神経毒(神経組織を損傷する)の危険性や知能低下を起こすという主張がされていました。このような主張は、至適濃度のフッ素添加飲料水の125倍の濃度のフッ素をラットに与えた1995年の研究を根拠としています(187)。その研究によると非常に高濃度のフッ素(飲料水中に75?125 ppm)を摂取したラットが認識欠如に関連した特有の行動を示したと説明しています。 さらにこの研究では胎生期のフッ素暴露によって 雄の胎仔に異常な活動性を生じさせようとして妊娠期間中、1日に2〜3回、フッ素を胎仔に注入していました。

しかし1995年の研究(188)を再評価した2人の科学者は、その観察結果は神経毒とは関係ないメカニズムで簡単に説明できると述べています。その科学者たちは意味のない結論を導くような実験計画の不適切さを発見しました。たとえば、その実験結果は試験の有効性と実験計画に不可欠な対照群を用いないで出されているのです。科学者たちは概要の中で、「「ミュレニックスの研究からはどう考えてもフッ化ナトリウムが神経毒となりうるこ とを示しているようには解釈できない。」 と述べています。別の評論者は「ミュレニックスらが報告した異常に高い脳のフッ素濃度は分析の誤りであると思われる」と述べています(104)。  

7年間にわたる研究で至適濃度の水道水フッ素化地域に生まれて6歳まで生活している子供の健康や行動と非フッ素化地区の同年齢の子供の健康や行動と比較しています。医学的記録は、研究期間、毎年厳密に調査されました。6歳と7歳の時に、子供の行動を母親と教師両方の評価よって調査しました。その結果、至適濃度のフッ素添加飲料水の飲用は子供たちの健康や行動に悪影響を示す証拠はなにもなかったと報告しています。これらの結果は家庭の社会的背景を一定にした場合でさえも両群に差は認められませんでした。

質問29
水道水フッ素添加は、アルツハイマー病の原因になりますか。

解答
至適濃度のフッ素添加飲料水とアルツハイマー病(AD)の関連を実証した科学的データはありません。

解説
アルツハイマー病の原因はまだ正確には解明されていません。アルツハイマー病は年令と家族歴に関連があると考えられています。また他の原因としては脳に深刻な損傷を受けたり、低レベルの知的障害があげられます。現在科学者はそのことを実証するために研究を行っています。遺伝学、ウイルス、環境学的事例、例えばアルミニウム、亜鉛、その他の金属とアルツハイマー病との関連も研究されています。研究者はアルツハイマー病の患者の脳組織中にこれらの金属が存在することには気付いていますが、結果としてアルツハイマー病を引き起こす原因になっているかはまだ分かっていません(190)。

アルツハイマー病患者の脳組織中にアルミニウムが発見されたため、お湯を沸かすときにフッ素添加水が調理器具 のアルミニウムを溶出させ、それによってフッ素がアルツハイマー病を進展させる補助要因になるという主張があります。アルミニウムの調理器具を用意し、その中にフッ素をいれるいれないでアルミニウムの溶出に差がでるかどうかという実験が試みられました。この実験を通して強酸性もしくはアルカリ性であろうと調理器具からアルミニウムは検出されませんでした( 191)。  

1998年に発表された論文(192)にはフッ素とアルツハイマー病の潜在的な関係について記載されました。しかしながら、実験計画において幾つかの欠点が認められたので、その実験から導かれる結論は正しいものではありませんでした(193)。 興味深いことに、アルミニウムとフッ素は体内に拮抗的に吸収されることは明らかです。(17、194)。 フッ素を飲むことがアルツハイマー病の予防にもなりません。同様に至適濃度のフッ素水摂取がアルツハイマー病の危険因子であるということも科学的にはないのです。

質問30
至適濃度のフッ素添加飲料水は心臓病の原因、あるいはその一因となりますか?


解答
米国の今までの水道水フッ素化経験と一般に認められている科学的知見から、至適濃度のフッ素添加飲料水は心臓血管病の原因とはならないことが実証されています。

解説  
この結論は、国立衛生研究所の国立心臓、肺研究所によって実施された研究結果により支持されています。研究者たちは至適濃度の水道水フッ素化地域からフッ素の不足した地域にいたる広範囲の地域を調査しました。最終報告では以下のように結論づけています。「水道水フッ素化都市と未実施都市に居住する住民の健康比較調査から、また生涯、天然のフッ素飲料水を飲んでいる人や産業活動による高度にフッ素に触れる人の健康診断と病理診断から、さらに水道水フッ素化について長い国家的経験から、すべてに一致した所見は水道水フッ素化は心臓血管の健康に悪い影響を示さない。」(195)  

米国心臓病協会は心臓病は飲料水中のフッ素量に関与しないという歴史的な見解を再確認しています(196)。米国心臓病協会は、心臓血管病の主要な要因は喫煙、高コレステロール値、高血圧、運動不足、肥満であると結論しています(197)。 多くの研究によって都市の死亡率と水道水フッ素化状態との関係が調査されています。 ある研究で1950年から1970年の死亡率推移について人口25、000人以上の米国の473の都市について調査しました。調査結果は、20年以上の間にわたって水道水フッ素化と心臓病による死亡率との間に関連性はありませんでした。(145)。

もう一つの研究では、水道水フッ素化24都市のおよそ3、000万人の人々についての2年間の死亡率が、22の非フッ素化都市と比較されました。フッ素添加に起因した心臓病を含む有害な健康影響についての証拠は認められませんでした。他の研究にもあるように、水道水フッ素化都市と非フッ素化都市間の粗死亡率の相違は、年齢や性別、人種構成の違いによって説明できるのです。(144)。

質問31
至適濃度のフッ化物飲料水の摂取は腎臓に有害ですか?


解答
一般的に認められている科学的知見から至適濃度のフッ化物飲料水の摂取が腎臓病を引き起こしたり悪化させることはありません。

解説  
毎日摂取されるフッ素のおよそ50%が腎臓の働きにより体外へ放出されます(104、114、 115) 。腎臓はいろんなフッ素濃度の血液が通過しているので、フッ素による影響は腎細胞それ自体にあらわれるでしょう。しかしながら、8ppmまでのフッ素濃度を含む飲料水を長期間飲んでいる人々を対象としたいくつかの大規模な地域研究ではフッ素による腎臓病の増加を見いだすことはできませんでした( 95、 198、 199)。

米国研究協議会が1993年に提出した報告書の中で、フッ化物摂取による健康影響の小委員会は、「動物で腎臓に影響が現われる飲料水フッ素濃度の閾値はおよそ50 ppmであり、この量は米国環境庁の基準とした最大許容レベルの12倍以上に相当する。」と述べています。したがって、同委員会では「現在推奨されている濃度の飲料水からのフッ素摂取で腎臓に毒性を生じることはない。」と結論づけたのです(96)。  

腎臓病患者の多くは生きるために腎臓透析(人工腎臓器を用いての治療)に依存した治療を行っています。その治療中、患者の血液は毎週の治療で大量の水 (265-530リットル)を利用しています。従ってこのプロセスに使われる水は患者の血液に自由に拡散可能な可溶物質が最小量だけ含まれるように設計されています(200)。しかし米国では地域によって水の組成が異なるため、米国公衆衛生局は透析装置の責任者が逆浸透法や脱イオン法のような技術を使用して、透析治療の前に過剰な鉄やマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、その他のミネラルと同様にフッ素も取り除くよう勧告しています (200.201) 。 (この問題についてのさらなる議論は質問17に述べられています。)

質問32  
フッ素の常用は飲料水の質に影響を与えますか?


解答  
至適濃度のフッ素が飲料水の質に影響を与えるという科学的証拠はありません。米国の全ての地下水、地表水は自然に存在するフッ素をある程度含んでいます。

解説  
ほとんど全ての水道は人が飲用するために安全でかつよい水質になるようにいろんな処理過程を受けています。この目的のために使われている物質には硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、活性炭素、石灰、ソーダ灰、そしてもちろん塩素も含まれています。フッ素の不足した飲料水だけに(27)フッ素が加えられるのです。 水道水フッ素化とはフッ素が不足している水道に適切な歯科保健を目的として0.7〜1.2 ppmの範囲でフッ素濃度を調整することです。

米国環境庁(EPA)は約1 ppmのフッ素濃度の飲料水は子供のむし歯を減少させる(27)と公表しています。 (この話題については質問1、質問2、質問33の解説でも触れています) 飲料水安全法に基づいて、米国環境庁は多くの物質に関する飲料水の基準を設定しています。その中には地域住民の健康を守る目的のフッ素も含まれています。 米国には自然に含まれている至適フッ素濃度よりも高いレベルのフッ素を含んだ地下水を有する地域があります。従って連邦条例では地域における上水道の自然に含まれるフッ素濃度は4.0 mg/Lを超えないようにすることが定められています(202)。飲料水安全法ではこの上限がフッ素の最大汚染濃度(MCL)とされています。MCLの基準ではもしも地域に供給される水の自然に含まれるフッ素濃度がMCL(4.0 mg/L)を超える場合は、水道事業者はフッ素濃度をMCLよりも低い値に落とさなければなりません。この過程を除フッ素化といいます。
米国環境庁は2.0 mg/Lの第2最大汚染レベル(SMCL)もまた設定して、もしフッ素レベ ルがこの値を超える場合は水道供給者がその水道水を利用している人にそのことを知 らせなければならないことになっています。SMCLには2.0 mg/L以上のフッ素を自然に 含む飲料水を小さな子供が毎日摂取すると形成中の永久歯に歯牙フッ素症が起こる可 能性があり、健康被害はわかっていないが審美的に問題が生じるということを利用者 家族に警告しなければならないことが意図されているのです。SMCLを超えた水道シス テムの警告には以下のことが含まれていなければなりません。 すなわち、2.0 mg/literを超えるフッ素濃度の水を飲む9歳以下の子供は歯牙フッ素 症が発生する可能性があることをその家族に伝えるということです。 歯牙フッ素症は高濃度フッ素に歯牙形成期に暴露したときにだけ起こるので、成人に は影響を与えません。 飲料水がSMCLを含む全ての基準を満たしていることを保証する別の水源あるいは処置 についての情報を得るために水道供給者と連絡をとることができます。 1993年の米国研究協会報告書「摂取フッ化物の健康効果」では米国環境保護局のフッ 素の毒性と暴露データをレビューして現在の4.0 mg/Lという現行の基準(1986年に制 定)は国民の健康を守る暫定的な基準としては適切であるという結論を出しています (96)。環境保護局の判断では、ヒトと動物のデータを総合した結果は現在の飲料水 のフッ素基準をサポートしており、1993年12月に環境保護局は官報に4mg/Lの上限値 は安全な限界範囲で健康に悪いという影響はないという通知を出し、連邦登録(97)に は飲料水のフッ素基準を訂正する必要が無いという通知を発表しました。 環境保護局はさらに1997年12月5日付けで連邦登録(156)にフッ素の安全性に関するコ メントを発表しました。フッ化物に関する最終規制の通知の中で、環境保護局は「 8mg/L (0.23 mg/Kg/day)以下のフッ素濃度で健康に問題を起こすという科学的な論文 は存在しない。」と述べています。環境保護局のだしている0.4mg/L (0.114 mg/kg/day)という最大上限値(MCL)はその値の半分の量であり、適切な安全領域にあ ることがわかります。 環境保護局は0.4 mg/Lという実施可能な連邦基準値を持つことによって水道水フッ素 化を間接的に規制しているのです。4.0 mg/Lの基準値を超えない範囲で、州あるいは 地方当局はフッ素かを行うかどうかを決定するわけです。 (この話題に関するさらなる議論は質問2で行われています)

質問33
水道水フッ素化は工学的な問題をおこすでしょうか?

解答
適切に維持・管理された上水道フッ素化システムは工学的問題をおこすことはありません。

解説
システムを正しく計画し、維持しているので、水道水のフッ素濃度を調整することも他の水道水処理過程と何らかわりはありません。現在用いられている装置は水道水中のフッ素の適正濃度を容易にモニター、維持することができます。自動モニタリング技術を用いているので水道水中のフッ素濃度を推奨されている適正範囲に確実に維持することが可能です。その土地の気候によって、水道水の至適フッ素濃度の範囲はそれぞれの上水道施設ごとに0.7〜1.2 ppmの範囲に設定されています( 27)。

上水道フッ素化に用いられているフッ素は3種類の基本的な化合物だけです。
1)フッ化ナトリウム;白色で無臭の結晶物質 
2)珪フッ素ナトリウム;白色または黄白色の無臭結晶粉末 
3)珪フッ素酸;白色から淡黄色の液体。

3つのフッ素化合物はカルシウム化合物の混合物であるミネラルアパタイトに由来するものです。アパタイトは3%〜7%のフッ素を含んでいます。現在、水道水フッ素化に用いられているフッ素のもとです。アパタイトはまたリン酸肥料生成に使われる原料でもあるのです(27、203)。しかし水道水フッ素化に用いられる3種のフッ素化合物についての基準値や最低必要量はすでに確立されています(204)。

時として、水道水フッ素化反対者は、水道水フッ素化に用いられる3種のフッ素化合物は不純物であり有害になるかもしれないレベルの不純物質を含んでいると主張します。公共の安全性を保証するために水道水フッ素化に用いられるフッ素化合物は米国水道事業協会によって確立された基準に従って用いられています(204)。この協会は国際的科学・教育非営利組織で飲料水の水質と供給の改善に貢献しています。不純物に関してこの協会はその基準を以下のように公表しています。
「この基準で供給されるフッ素化合物は健康に有害な影響を与えるようないかなる量の可溶性物質ならびに有機質は含まない。」薬品会社によるフッ素化合物の保証された分析が行われていなければなりません。 フッ素が上水道に加えられるとそれは推奨される濃度範囲である0.7〜1.2 ppmに希釈されます。1 ppmとはフッ素1が水100万に希釈されている状態です。100万という大量は視覚化することが困難です。正確ではありませんが以下の比較はppmを理解する助けになると思います。

16マイルの1インチ
2年間の1分
1万ドルの1セント
(この話題に対する更なる解説は質問21に書かれています。)

フッ素化合物は上水道に液体として加えられますが、2種類の装置、すなわち乾式フィーダーまたは湿式フィーダー(メータリングポンプ)で計量されます。設計によって、また適切な保守管理 と検査を行うことで上水道システムは添加されるフッ素の量を制限します(たとえば1日のフッ素供給だけを蓄えるだけの1日用タンクの利用)。こうすることで誤ってフッ素を供給し続けることによって起こる可能性のある過剰フッ素添加は機械的に不可能となります(27)。上水道へのフッ素添加をモニターするオペレーターが適切な訓練を受け、この工程を行う装置は十分な保守管理 が実施されることは大変重要なことです(203)。

どんな機器でもそうであるように水道水フッ素化装置も検査され、整備され、必要に応じて交換されるべきです。州の保健課ではこの目的のため政府の補助金を受けることができます。 上水道に添加された至適フッ素濃度は安全であることが証明されていますが、水道処理場のオペレーターやエンジニアはフッ素化合物を扱う時にかなり高濃度のフッ素にふれているかもしれません(27)。オペレーターが過剰フッ素に触れることを防ぎ、しかも水道水フッ素化システムが至適フッ素濃度を供給することを確実にするために防疫センター(CDC)と職業安全保健管理局はフッ素化上水道管理者の指針/勧告を作成しています(203、204)。

これらの指針に従うことで全ての上水道フッ素化システムの安全な操作を維持しながら継続的に至適フッ素濃度に保つことが保証されなければなりません。 水道水フッ素化によって給水システムに腐食が起こるという主張は支持されていません(27)。飲料水による腐食は主に溶解している酸素濃度、pH、水温、アルカリ性、硬度、塩濃度、硫化水素物質、ある種のバクテリアと関連しています。ある水質条件下ではすでに腐食している飲料水の腐食性がミョウバン、塩素、珪フッ素酸、珪フッ素ナトリウムによって若干腐食性が増加するかもしれません。その場合にはさらにpHを上昇させる調整を行うような支持がでています。これは上水道処理場の日常的な操作の一つなのです。



公共政策(Public Policy

質問34 
水道水フッ素化は大切な公衆衛生施策ですか?


解答 
Yes、 水道水フッ素化はすべての年齢の人々に恩恵を与える、安全でまた費用が節約できる費用−効果比の高い公衆衛生施策なのです。
解説 
元米国公衆衛生局長官.ルサー.テリーは、水道水フッ素化は免疫療法(ワクチン)、 低温ミルク殺菌、上水道塩素消毒と同様に極めて重要な公衆衛生施策であると述べて います(205)。 また、元長官 エベレット.クープは、"地域で口腔保健を確立する上で水道水フッ素化は最も重要で唯一頼れる方法である"と述べています。 1998年、米国公衆衛生局は、2010年に達成すべき国の健康目標を更新しました。口腔保健にとって意義ある水道水フッ素化の拡大も目標に含まれています。(8)水道水フッ素化は国民にとって最大の経済的予防価値のあるもののひとつと称えられてきました。(9)そして今日でも、最も偉大な歯科公衆衛生的予防法なのです。(36)

質問35 
裁判所は水道水フッ素化を法的に支持していますか?


解答  
Yes、 水道水フッ素化は米国の法廷でその正否が争われましたが、公衆衛生と住民福祉にとって水道水フッ素化が適正な方法であることが認められました。 水道水フッ素化は最終判決で否定されたことはありません。米国憲法は第1条、55条、14条で信仰の自由や、個人の権利の保障を認めています。そして水道水フッ素化は全くその憲法に違反していないと判例が示しました。

解説
この50年間の間、米国ではフッ素化の合法性が法廷で問われました。フッ素化は法廷において、公衆衛生と福祉にとってとてもすばらしい予防法であることが認められています(206)。 水道水フッ素化について最終判決で反対の判例を下した裁判所は今だかつてありません。12以上の州でその最高裁判所は水道水フッ素化を合憲としています(207)。1984年イリノイ州最高裁判所は、16年間裁判闘争の上、水道水フッ素化法の合憲性を認めました(208)。その上、合衆国最高裁判所は合衆国政府に対しても、あるいは憲法に対しても問題はないと13回も水道水フッ素化裁判で反対意見を退けています(207)。

一般的に国民の健康と福祉の方が政府にとって関心の強いことであり、個人的なエゴによる水道水フッ素化反対には関心がないという姿勢を米国の裁判所はこれまで明確にしてきました。(207)。
その結果、水道水フッ素化条例において、信仰の自由や個人の自由の権利を阻害するという反対派の主張を裁判所は退けてきたのです(207、209)。水道水フッ素化の法的な問題を取り上げた論評で、次の項目に裁判所は関心をもって対応してきたのです。
(1) フッ素は栄養素であって、投薬治療ではありません。それは自然界からの贈り物なのです。
(2) 他の水源を利用できるので、フッ素を添加した水を飲むことを強制されること はありません。
(3) 水道水フッ素化は信仰の自由を阻害すると信じている人々の場合、信仰の自由 と信仰を実践する自由は違うのです。前者は絶対的なものですが、後者は公共の利益 のためには一部制限されるべきものなのです (210、211)。

水道水フッ素化とは、むし歯予防のため自然に即した形で水のフッ素濃度を調節するものです。裁判所は水道水フッ素化を強制的な集団薬物投与とか、医療社会化の形態ではないといつも判決を下してきました(207、210、212)。投薬とは治療のために薬物を使用することを意味します。水道水フッ素化は個人のむし歯に対する防御レベルを向上させるのです。フッ素を添加された水はヨード添加の食塩やビタミンD添加のミルクまたビタミン入りのオレンジジュースと同じようなものなのです。

質問36 
どうして水道水フッ素化への反対が続くのですか?


解答
 圧倒的大多数の健康と科学機関は一般の人々と同様に米国歯科医師会も水道水フッ素化は人々に利益を与えるものと考えています。しかし、水道水フッ素化に反対し続ける声高な小グループがいます。水道水フッ素化は個人の選択の自由を犯すという人もいます。また誤った解釈をしたり、水道水フッ素化を支持する科学文献から不適切で間違った結論を引き出して反対する 人もいます。       


   



解説
 膨大な科学的文献が水道水フッ素化はむし歯の発生を抑制する安全な方法ですとのお墨付きを出しています。医師、歯科医師、科学者や保健関係者の間ではほぼ全員一致して水道水フッ素化支持しています。米国歯科医師会、米国医師会、政府機関や国立の健康機関及び市民団体(※を参照)では出版物や確かな評論、研究を発表して水道水フッ素化のそのすばらしさを認めています。  

アメリカ人の大多数も水道水フッ素化を認めています。1998年6月、ギャロップ社の1000名以上の成人の水道水フッ素化に対する姿勢に関する全米調査によると"上水道にはフッ素添加すべきと思いますか"との質問には70%が賛成、18%が反対、12%がわからない(図3参照)との解答でした。2つの米国地域統計によると水道水フッ素化の支持率は全米でほぼ一定で東北部で73%、中西部で72%、南部で68%、西部で70%でした。1991年12月、1200人の両親に"今、あなた方は現在、フッ素添加した飲料水を認めますか、認めませんか"との質問したギャラップ調査の結果とこの結果は一致していました。解答した両親の内で約3/4以上(78%)が認め、10%が認めず、そして12%がどう答えてよいかわからないと解答しました(図4参照)。認めなかった人々の中で4%は住んでいる地域が水道水フッ素化を実施していましたが、16%の地域では未実施でした(213、214)。  

1945年、水道水フッ素化事業が開始された当時から水道水フッ素化の反対派はいました。ミシガン州グランドラピッズ市で歴史上初の水道水フッ素化開始直後、地方ニュースで紹介された記事は1月1日の開始予定は1月15日に延期なるというものでした。ところで、おもしろいことにグランドラピッズ市や保健当局は、フッ素化が実施される数週間も前から、水道水フッ素化が原因で身体の具合が悪くなったという苦情を受けたのです。(7)  

水道水フッ素化を反対する小グループにとって、その反対理由として選択の自由はたったひとつしかないと言えるほどの大きな存在感があります。(213)。いろんな健康問題や環境、経済問題をあげて、また正しい情報を知らないために反対運動に煽られた人がいます。反対派は知ってか知らずか、内容に少しだけ真実をちりばめては、自分達の意見を正当化するため、ごまかし、誤った引用、人の発言内容をも事実と変えて反対に利用するのです。ときどき水道水フッ素化反対派はその危険性を警告します。しかし、それは一般的な科学的常識からはかけ離れ、とても受け入れ難いものなのです(213、215、216)。  

"インチキ科学"とは報道機関の造語ですが、過去十数年間、異常な疑わしいニセ科学に由来するデータを特徴づけるとき使われてきました。それは水道水フッ素化反対派の世間を扇動する役割を果しました。事実、仮説的な危険性を公共メディアに流したために、政策決定者は費用-効果費の高 い多くの公衆衛生手段を延期させられてきました。 (217)。インチキ科学は公共施策に衝撃を与え、社会に計り知れないほどの大きな経済的損失を負わせています。多くの人々、特に政策決定に関わった人々は、インチキ科学と正しい科学の判別ができることが求められています。正しい科学とは再現性があり、他で立証できる科学的方法が基本にあるものです。一方、複雑な質問内容に対してあまりにも簡単な答えしかできないインチキ科学とは、実証性のないものです。  

1993年、合衆国最高裁判所は、法廷内でのインチキ科学の使用を制限する画期的な決定を発表しました。一般的に認められていることを再度認めるための科学的根拠は必要ないが、連邦予審 判事は専門家の証言が合理的な根拠に基づいており、問題との関連が適切であること を確認することが任務であると米国最高裁判所は決めたのです。最高裁判所によると、 専門家の示す理論や方法論が科学的に意味があり、そのケースに適応するものであっ たかという点について審査されるといいます。 最高裁判所は4つの科学的証言の査定について判断基準を提示しました。 (1) 専門家の理論あるいは技法を科学的方法で確認できるか、確認できてきたか。 (2) 同じ専門家の論文や評論による、多くの批評に耐えてこられたかの確認。 (この基準だけ満たされていないからといって証言を受け入れないないという根拠にはならない) (3) その理論や実験結果が正しいものであるかの確認 (4) その理論や技法をごく小人数しか認めないものであれば、それは疑わしいものである。その理論や技法が正統な科学団体に広く認められているかの確認。   反対派の主張する科学的な有効性と妥当性というものは、この最高裁判所の示した基準には全く反するものです(218)。  

どのような科学的問題でも全員一致することなどまずありえません。実際、次々と新情報が世に発表され広がっていくために、新しいものもすぐ古くなりいつまでも"最新情報"というものはないのです。実施によって得られる利益はいつもリスクを上回らなければならないのです。保健関係者、政策決定者と国民は責任追求のパートナーでなくてはならないのです(219)。

質問37
水道水フッ素化に関する信頼できる情報は、インターネットや世界的なホームページのどこから見つけられますか?

(解答) 
米国歯科医師会と同様に評価される健康.科学団体、政府機関はフッ素と水道水フッ素化に関する情報を提供するためのインターネット.ホームページをもっていて、常に正しい科学的な情報を提供しています。

(解説) 
インターネットとWWW(World Wide Web)はアクセス可能な情報源として発 展してきています。 しかし、インターネットやホームページにある"科学"がすべて本当の科学的事実に基づいているわけではありません。"フッ素"あるいは"水道水フッ素化"のインターネットを捜すと個人へ送るたくさんのWebサイトがあります。内容が科学的なWebサイトもありますが、なかには見かけとは違って不確実な世に認められていない情報を流しているWebサイトもあります。ろ過器セールスのようなコマーシャル本位のものは増えていくでしょう。   

水道水フッ素化とフッ素に関しての最も広く信頼されている情報源の一つが米国歯科医師会(ADA)のホームページです。http://www.ada.org(図5参照) ADA Webからフッ素に関してもっと多くの情報を得たい時は、皆さんは他のWebにもコンタクトできます。

質問38
なぜ水道水フッ素化は時々住民投票で否決されたのですか?


解答
投票者の無関心、科学的問題について対応のまずさ、選挙担当者のリーダーシップの欠如、保健関係者の政治的キャンペーン手法のまずさが、水道水フッ素化の住民投票が時々不成功に終った理由なのです。

解説
過去数十年、米国では水道水フッ素化が確実に増えていますが、数百万人の米国人は水道水フッ素化による恩恵にまだ浴していません。現在、上水道設備の整っている地域の中で62.2%だけにしか水道水フッ素化が実現していません(13)。 1992年当時、人口10万人以上の米国のすべての都市の中で約70%が水道水フッ素化を実施していました。また、50大都市では、42都市が水道水フッ素化を実施していました図6参照(220)。1998年米国公衆衛生局は、2010年までの米国の健康目標値を改訂しました。口腔保健目標10は特に水道水フッ素化を取り扱い、2010年までには少なくとも85%の人々が水道水フッ素化のその恩恵に浴せるようになると述べています(8)。 実施目標値を改訂したとき(1998年)に、75%という目標値を達成していた州は半数に満たなかったのです。   

水道水フッ素化の新たな地域での開始は遅れがちでした。社会科学者は、この原因究 明のため、多くの研究をしてきました。その要因として、基金の不足、住民と保健関 係者の無関心、論争、低い投票率、反対派による感情的な非難の中で有権者たちが科 学的な情報を本当に評価できない等のために多くの議員や地域のリーダー達がその立 場を明確にしなかったことなどがわかっています。不幸にも市民らは本当はそうでは ないのに、誤って飲み水はすでに至適フッ素濃度であると信じてしまうのです。

フッ素化反対派による感情的な"脅迫"の宣伝文句によって、投票者は水道水フッ素化の賛否いずれかを決定するとき、不安や混乱、疑惑を招くことになります(221、222)。住民投票での敗北や水道水フッ素化の中止は、小人数ながらもよく組織化されたはったりの上手なグループの、不安を煽る嘘っぱちで投票者を混乱させるようによく計画された集中攻撃が原因でおこるのです(215)。反対派は投票者に悪い影響を与えるばかりか、地域のリーダーに対しては個人的な訴訟を起こすのです(215)。水道水フッ素化を否とする判決を下した裁判所は今までにありませんが、地域のリー ダーは根拠のない訴訟にかかる無駄な費用と時間の負担に動揺させられます。 水道水フッ素化が何らか害があったという理由で中断においこまれた例はこれまでひとつもありません(215、216、223)。

水道水フッ素化の導入は結局、州政府あるいは市町村の意志決定責任者が決めることです。その決定者は、議員、保健担当者が選ぶかあるいは住民の投票で選ぶのです。水道水フッ素化は州法と自治体条例、住民投票で制定できます。水道水フッ素化は連邦政府レベルでは法制化はされていませんが、地方の問題としてほとんどの州レベルで判断されています。  1989年―94年の間に318の地域で水道水フッ素化を自治体がその実施を決定しました。同時期に32の住民投票がありました。その内、19地区が実施を勝ち得ましたが、13地区で実施ができませんでした。それでもなお、市民の口腔保健や福祉を守る自治体の決定は、ある程度個人の反対を 犠牲にしても、適切な公衆衛生手段を実行しなければならないのです。 (注)米国では非科学的な個人的エゴによる水道水フッ素化反対運動に対して、歯科医師会、政府、自治体、大学、研究所、政治家など指導層が国民の健康を守るため、水道水フッ素化実施にむけて活動してきました。しかしわが国では、米国と異なり、日本の指導層が自分達の既得権を守るため知らんぷりして、実質的な水道水フッ素化反対派となっているのです。悲しい事実です。

質問39
水道水フッ素化は他の国々では受け入れられていますか?


解答
Yes、 水道水フッ素化は約60ヶ国で実施され、3億6千万人以上の人々にその恩恵を与えています



Healthy People 2000の水道水フッ素化75%の目標値を達成した州を黒で示します
1998年11月現在


解説
水道水フッ素化の価値は国際的に認められています。広範にフッ素化している国々は、カナダ、香港、マレーシア、イギリス、シンガポール、チリ、ニュージーランド、イスラエル、コロンビア、コスタリカ、アイルランドです。ごく最近、南アフリカで水道水フッ素化が決定しました。WHOの推薦に続いて、計画の初期段階では水道水フッ素化を実施する国では人口の40%に普及するものと予想されていました。しかし、西暦2000年までにはその国々では、都市から田舎まで広く普及したため、人口の60%に達する様相を呈しています。最も、完全なフッ素化の研究はイギリスとオーストラリアで行われました。この国々の研究はとても重要なものでたくさん発表されています。それは水道水フッ素化の安全性と有効性を支持しています。(92、94、226)   水道水フッ素化がこれだけ広く世界中で実施していることを考えると、副作用につい ての資料が欠如していることは水道水フッ素化が安全であるという明らかな証拠に他 ならないのです。 (54、92−96)

WHOとパンアメリカン健康協会は1964年から水道水フッ素化の実施を推奨してきました。1994年、WHO専門委員会はフッ素化はむし歯予防に安全、有効であり、"上水道設備のある地域では水道水フッ素化はすべての人々に最も高い効果を与える、最もすばらしい予防法です。個人として積極的に努力しなくてもすべての社会階層の人々がその恩恵に浴せる"ものです。しかし世界の多くの地域で、フッ素化は実施不可能であり、優先順位が高くありません。それはその国々には上水道設備がないからなのです。また他にもっと大きな生命を脅かす問題が存在し、その上、フッ素化実施のための十分な資金も維持管理費もないからなのです。   

WHOなど保健機関は水道水フッ素化を推奨していますが、水道水フッ素化には反対する国々があると解釈するべきではありません。たとえば水道水フッ素化していないスウェーデンとオランダ両国でも予防方策として水道水フッ素化に対するWHOの推奨を支持しています。加えてフッ素添加歯磨剤、フッ素洗口剤、日常的フッ素錠剤を使用を支持しているのです。(82、227)

質問40
水道水フッ素化はヨーロッパで禁止ですか?


解答
水道水フッ素化の禁止という国はヨーロッパには一つもありません。

解説
フッ素化はヨーロッパでは禁止だとの主張を反対派はよく使います。ヨーロッパの国々には「1980年のヨーロッパ水質指導委員会」で水質条例を作成しています。指導委員会はフッ素を含めて、多くの物質の最大許容濃度を規定したのです。指導委員会はフッ素化を要求も禁止もしていません。ただフッ素濃度が許容量を越えないように求めただけなのです。(228)   

東ヨーロッパと中央ヨーロッパで実施されていた多くの水道水フッ素化システムは正しく機能していませんでした。1989-90年に鉄のカーテンに幕が降ろされるとフッ素化が中止になったのです。それは設備が時代遅れで水道水フッ素化の利益について関係者の知識が不足していたからなのです(229)。尚、水源が多くて水の配給システムが複雑なので、多くのヨーロッパの国々にとって水道水フッ素化は実用的な方法ではありません。水道水フッ素化の代用法としてヨーロッパの国々では食塩フッ素化とフッ素歯磨剤を 予防法として選んできました。   

改めて言いますが、ヨーロッパで、特にフッ素化を禁止している国はひとつもありません。水道水フッ素化が少ないのは、いろんな技術的、政治的な理由にすぎないのです。


費用、効果

質問41
水道水フッ素化はむし歯予防の費用―効果比の高い方法ですか?


解答
Yes、 米国において社会に評価された科学的研究で水道水フッ素化は生涯を通じてむし歯予防効果があり、社会的レベルや経済レベルの違いに関係無く、費用―効果比の高い予防法であることが確認されています。(58、61、62、230−232)

解説
米国での水道水フッ素化の年間経費は一人当り約50セントと推計されています(233)。年間経費は12セントから5ドル41セントですが、これは地域の規模、人件費、フッ素の費用、設備費に大きく関わっています(27、62、231、232、234)。水道水フッ素化を生涯使用した場合の1人当りの費用は、歯1本分の充填治療費より少ないと思われます。健康管理の費用が増大する中にあって、水道水フッ素化の費用はごく安いままで地域の人々を守り利益を与える予防法なのです。   

歴史的に歯科治療費が年毎に増大するのに比べて、フッ素の購入費は本当に高くならなかったのです(27)。 (フッ素洗口やフッ素補助剤 を利用するような)学校でのむし歯予防活動、専門家の行うフッ素の局所応用や口腔保健教育は有用なものですが、しかし水道水フッ素化のような費用―効果比の高い方法とは認められません(230)。 フッ素化は都市に水道設備が完備しているアメリカでも他の国々でも費用―効果比が最も高く、むし歯予防方法として最も現実的な方法なのです(9.58.62.230.234)。

※ 尚、日本の上水道設備の普及率は97%と世界のトップグループですが、水道水フッ素化を実施する条件は整っているにもかかわらず、その普及率はゼロなのです。とてもおかしな話です。   

フッ素のむし歯抑制効果のために水道水フッ素化している地域では歯科修復治療の必要性は見事に減少しています。そのため水道水フッ素化地域の住民の一生涯を通して歯科修復治療費は少なくなっていきます。1989年に開催された保健経済学者ワークショップで以下のような結論が出されました。 「う蝕が予防されれば、水道水フッ素化の費用は1歯面あたり3.35ドルかかるが、水 道水フッ素化はそれに要する費用よりもより多くのお金を節約できる数少ない公衆衛 生的予防法のひとつである。」歯科医によってアマルガム充填される2歯面に要する アメリカの平均的費用が75.84ドルであるとことを考えれば水道水フッ素化は明らかに 費用節減ができることがわかります。 (235)。   

水道水フッ素化が経済的に重要であるということは、歯科治療費は治療を受けた人だ けが支払うのではなくて、健康局(Health department)、福祉相談所(welfare clinics)、健康保険料、あるいは医療プログラムを支える軍やその他の公共によって 提供されるサービスを通して一般大衆からも徴収されているという事実から強調され ています。(61)

むし歯予防の間接的利益は次の通りです。
.歯痛からの解放
.より積極的な自己イメージができる
.歯牙喪失の減少
.歯牙喪失が原因の咬合不良の症例減少
.歯根治療の必要な歯の減少
.入れ歯とブリッジの必要性の減少
.歯痛や歯科治療のために通学や通勤の時間が失われる時間が減少する   

これらはつかみどころがなく、その利益を経済的に計算することは難しいことですが、しかし、とても重要なことなのです(59、231)。

*調査データは治療費を設定するものとして解釈されるべきではなく、またその目的 に使われるべきではありません。歯科医は治療内容と市場を考慮してその費用を設定 しなければなりません。

質問42
全ての上水道システムをフッ素化することは現実的な方法ですか?


解答
全ての上水道システムをフッ素化することは、個人の水道にフッ素添加するより現実的な方法です。

解説
個人的に使用する飲料水をフッ素化することは技術的に難しく、まず不可能です。また費用がずっと高くつきます。塩素消毒、水の硬度軟化などの、いろんな処理を加えた公共水道は芝生の水やり、車洗いや多くの工業用にも使用されています。地域上水道をフッ素化する費用は一人当りに換算すると非常に安いのです。 そのため、全ての上水道をフッ素化することは現実的で可能なのです。米国では水の安全処理に40以上の薬品を用いますが、フッ素はその一つにすぎないのです(27)。米国水道事業協会、国際的な非営利の科学、教育団体は、飲料水の水質とその供給の向上に努力してきました。そして公共上水道のフッ素添加の実施を支持しているのです(236)。   


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※ 1 Photo: Courtesy of NIDCR, NIH, 1999
※ 2 Public Health Service Home Page 1998
※ 3 新実用ビタミン栄養学 1995 ジェームズ.スカラ著
※ 4 Dentistry, Dental Practice, and the Community 4th edition P167


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