週刊現代
 2005.7.30号

久々の本格海洋冒険小説の登場
 コンピュータの暴走というと、まず思い出すのは、【2001年宇宙の旅】のハルだろう。あれから約40年、では現代の人工知能はそんな心配は無用なのだろうか。
 本書は、一代で財をなした大富豪が次なる野望の手始めとして、完全コンピュータ制御の外洋ヨットを完成するところから始まる。
 水と風の動きは動的で変数は無限にあるという。立ちはだかる波も、形状や周期は目まぐるしく変化し、そのためセーリングを自動化するのは不可能だと言われていた。ところが、このヨットはそれらすべてをクリアしたのである。その性能を誇示するため、厳冬期のベーリング海を越える北太平洋横断レースに参加。そこで優勝すれば、彼が開発した技術は一躍脚光を浴びることに。                                      
 だが、順調にいっていたと思われたレースだったが、航海の途中でコンピュータが不審な動きを見せ始めたのだった。
 次から次と襲いかかってくる危機の数々は、まさに手に汗握り、息もつかせぬ面白さ。大富豪を筆頭に、救助隊の空軍大尉やカニ漁船の船長、システム開発の担当者だった女性など、登場人物のひとりひとりが実に魅力に富んでいる。専門用語が頻出するが、そのあたりは飛ばして読んでも一向に構わない。それよりも。まずは物語の骨太さと迫力を味わってもらいたい。
 これは、久しぶりに登場した本格海洋冒険小説の傑作である。

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