1.自分の葬送のあり方を考えよう
自分の葬送・埋葬のあり方は、人生最後の儀式(エンディング・セレモニー)として、自分の生き方の締めくくりにふさわしいものでありたいと思います。しかし、エンディング・セレモニーのあり方は、遺言の法的効力を有しません。そのため、「自分らしい葬送」を自分の死後確実に実行してもらうため、いくつかの方法が行われています。
@ NPO法人や任意の団体(会)が設立されています。「私的遺言」「公正証書」など、祭祀主宰者や家族の承諾の下、これらの団体(会)と契約しておく。
A 弁護士に委任しておく。
B 生前に祭祀主宰者を指定し、葬送の方法を決めておく。
2.葬儀について
@ 宗教儀式のものには、仏教、キリスト教、神道がありますが、無宗教での葬送も取り組まれており、家族や親しい友人のみで行うものなど、形態は様々です。自分の人生を振り返り、自分らしい葬送を家族とともに考えて見ましょう。
A 葬儀・告別式を行わないで火葬に付し、遺骨を納骨する。又は遺骨を身元に置いておくことも自由です。
3.葬儀費用について
葬儀費用には、@寺院等への費用、A葬儀社への費用、B飲食などの費用の三つがあります。
@ 寺院への費用は、お布施(引導料など)、戒名料(称号料)、場合によっては塔婆料、焼香料、食事代、車代などがあります。あるアンケートによれば、全国平均48万円となっています。
しかしこれらは、本来決まりはなく、それぞれのお気持ちで布施されたら良いことです。
A 葬儀社への費用は、各社で各費用の積算方法・金額が異なります。最低必要な棺と骨壷だけでも葬送・埋蔵はできますが、各社の価格表などを取り寄せ、生前から葬儀の規模と費用を見積もっておくことは、いざというとき遺族にとっても安心できます。
4.戒名について
@ 戒名(法名)とは、仏教徒として授かる名前です。キリスト教の洗礼名と同じです。ですから、仏教徒として生きていくことに意味があるのですから生前に仏教徒となって戒名をいただくのが基本です。
庶民に戒名がつけられ始めたのは、江戸幕府のキリシタン禁制との関係で、寺請制度が確立し、すべての庶民が寺院に組み込まれ、「死後死体に剃刀をあたえ、戒名をさずけ申すべきこと。宗門寺の僧、死相をみととけ、邪宗にてこれなく段たしかに合点のうえにて、引導すべきためなり。よくよく吟味とぐべきこと(宗門寺檀那請合の掟)」によって、檀家制度の確立と死後授戒(戒名を授ける)が儀式化されました。その儀式は、宗派によって違いますが、戒名(法名)を授ける儀式、引導の儀式、告別の儀式などを主な内容としています。ですから、「戒名はいらない」人には、授戒せずに葬儀を行うことは可能です。
A 戒名料などがありますが、「仏教徒になるためにお金が必要」は布教の理念に反します。僧(寺)の経済事情から戒名料などが広がりましたが、あくまでも戒名料ではなく、お布施と心得るべきです。
5.お布施について
お布施とは、僧(寺院)への施しの金品のこととして使われていますが、「布施」とは仏となるための大切な修行の一つです。
布施行には、財施(お金、衣服、飲食、田宅、財宝などを施すこと)、法施(衆生に仏法を説くこと)、無畏施(一切の衆生に畏怖の念がないようにすること)の三施があるといわれています。
財施については、金品にとどまらず、身体や心も含まれると考えられ、喜捨(歓喜施捨)によって物事に囚われない自由と安らぎを得ることができます。現代風には、「募金」「ボランティア」「隣人愛」とでもいうのでしょうか。
そして、「貧者の一灯」の故事も財施の根本を伝えるものです。当山九世(大顕恵照大和尚・1974年帰寂)は、葬儀・法事を行っても貧しい家からはお布施(お金)をもらわなかった僧侶でした。
「貧者の一灯(長者の万灯より貧女の一灯)」
金品の多少よりも誠意が大切であることをいいます。
インドの釈迦の時代、油は高価なもので灯明を捧げることが最高の供養の一つとされていました。ある時、お釈迦様をお迎えした王様が、たくさんの灯明をともして供養しました。それを見た一人の老婆が感激し、食べるものも食べずに一つの灯明を買い求めて捧げました。ところが、王様の灯火は程なく消えてしまいましたが、老婆の一灯はますます輝きを増して燃え続けたということです。
6.庶民のお墓について
@ 庶民の中にも、古くから火葬や土葬はあり、多くは複葬(集合埋葬)でした。ただ、親鸞聖人が、「賀茂川にいれてうおにあたうべし」と遺言(実行されなかった)しているように、死体を川、海、山、(時には街中)に遺棄するのが一般的でした。
お墓が、庶民のもになるのは、江戸期になってからで、当初は小石を置いたり、樹木を植えたりしていましたが、卒塔婆の普及と財力のある町民が石の墓を建てるようになり、そして、明治の家制度の確立とともに、「○○家之墓」が建てられるようになりました。
A お墓の方角(向き)や家紋など、「墓相」についての相談があります。しかし、「日本大百科全書(小学館)」の「日本の墓」の項で、「世間には墓相のよしあしなどをいう者もあるが、これにはなんの根拠もない」とあるように、宗教に墓相は関係ありません。
B 水子地蔵については、江戸時代からの風習はありましたが、当時の水子供養は「たたり」とは無関係でした。人の世の汚れにまみれていない水子が「たたる」わけがありません。
「現代葬儀考(新日本出版社)」には、「1971年、埼玉県秩父山中に『紫雲山地蔵寺』が完成、建立者は反共右翼・紫雲荘の橋本徹馬山主。寺の別名が『水子地蔵』」。水子の供養を売りものに、またたくまに1万体の水子地蔵を売りつくしました。これが水子ブームのはしり。」とあります。
C 樹木葬墓地は、1999年11月、岩手県のお寺で始まりました。里山の自然保護と結びついた新しい墓地です。以後、各地で樹木葬墓地がつくられています。当寺は、平地の墓地として車イスでもお参りできるという特徴を持っています。
また、樹木葬墓地の一形態として、「桜葬」墓地も生まれ、東京町田市にエンディングセンター(代表・井上治代氏)の「桜葬」が中心となって全国の桜葬とのネットワーク(当寺も参加している)がつくられています。
ただし、樹木葬墓地を選ばれるときには、その永続性についてよく確かめることが必要です。最近は、民間業者や財団法人、樹木葬のための宗教法人立上げなどが行われていますが、樹木葬墓地利用は50年前後、場合によれば百年近い利用期間となります。その間、樹木葬墓地の経営継続が保証されていなければなりません。
D お墓を移転したいときは、お墓のある役所に届けて「改葬許可証」を発行してもらい、移転先の新しい墓地管理者に提出してください。「改葬許可証」届けの際に、遺骨が現に埋蔵されている墓地管理者の証明書と移転先の受入証明書が必要となる場合があります。
元の墓地は、収骨の後、墓石などを撤去し墓地管理者に返します。この場合、宗教儀礼をしたい人は、「精抜き」や「閉眼供養」などを行ってください。
7.散骨について
「葬送の自由をすすめる会(会長・安田睦彦氏)」が、「憲法の基本的人権に基づき、『葬送の自由』について社会的合意を広げる」運動を提唱し、1991年10月、相模灘で初めての散骨を行いました。自然葬の始まりです。墓地埋葬法や刑法(遺骨遺棄罪)に抵触しない(節度を持った葬送であれば)ことが確認され広がりました。しかし、営利目的の業者の出現で、散骨地の地元住民とのトラブルなどもおきています。「葬送の自由をすすめる会」などのように自主的ルールを徹底した取り組みが必要です。
8.遺体の搬送など
@ 病院で亡くなったときは、葬儀社に依頼すれば寝台車で迎えに来ます。また、自家用車でも連れて帰ることができます。この場合は、死亡診断書持った親族の方が必ず運転(同乗)してください。
A 遠方で亡くなった場合は、死亡地の役所に死亡届を出し、「埋火葬許可証」を携行して移送する。また、死亡地の火葬場で荼毘に付し、ご遺骨を自宅に持ち帰る。住所地の役所にも届出は必要です。
9.おわりに
人の死は厳粛なものです。人生の最後をどう迎えるのか。みなさまとともに考えていきたいと思います。ところが、戦争、事故、犯罪、餓死、孤独死、保険証を取り上げられての手遅れの病死など、現代社会にはあまりにも不正常な「死」が多すぎます。安心して最後を迎えられる社会をつくることなしに、すべての人が平和と安らぎの死を迎えることはできません。正福寺樹木墓苑運用規則の第2条(目的)4項に「人々の安らぎと平和のために寄与する」としているのはそのためです。
葬送と墓地について考える