

BBCを退社し、フリーとなったデイヴィッド・アッテンボロー氏が手がけたライフ三部作の第一作目。地球上の生物を、原始的な単細胞生物から水生無脊椎動物、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、そして人類というように、進化の過程ごとに区切って紹介する。
日本では1982年にNHKの海外ドキュメンタリーで「地球に生きる」として放送され、後に1986年に再放送された。ナレーター(アッテンボローの声)は高橋昌也。内容は以下の13部構成。
以下の解説は言ってみれば要約であり、大まかなものである。これがキッカケで映像に興味を持たれた方はすぐにAmazon.co.ukにアクセスしていただきたい。なお、わたしはこの番組の日本語放送については1〜9は見過ごしており、10〜13しか見ていない。わたしは翻訳家のハシクレではあるが、英文科を出たわけではない。従って、誤訳があるかもしれない。詳しく知りたい方はアッテンボロー氏の著書地球の生きものたちの購読をおすすめする。内容は映像とは完全に一致しているわけではないが、アッテンボロー氏の言わんとしていることは把握できる。わたしもこの要約文を書くに当たって参考にさせてもらった。少し高い本だが、名著である。まず、本をざっと読んでから映像を見て、それから再び本を読み直すと効果的である。
1. The Infinite Variety
起源を求めて
地球上には400万種もの動植物が生息している。この番組は、動物のグループを一つずつ取り上げてそれらの誕生から現在までの進化史を紹介するものである。
南アメリカの熱帯雨林の生態系は、世界で最も多様性に富んでいる。なぜ、これほど多くの生物がいるのだろうか。
1832年、当時22歳のチャールズ・ダーウィンがこの地を訪れて、上記のような疑問を抱いた。彼はその後の3年間に及ぶビーグル号の航海のあと、エクアドル沖のガラパゴス諸島に到着した。ガラパゴスコバネウはブラジル産のウに似ているが、翼が短く、飛べない。ウミイグアナは南米産のイグアナに似ているが、海に潜って海藻を食べている。ガラパゴスゾウガメは島ごとに甲羅の形が異なっている。ダーウィンは、生物の種は不変ではなく、環境によって変化するのではと考えた。
アメリカ西部のグランド・キャニオンは、コロラド河によって削られた地球上で最大の裂け目である。最初の地層は2億年前のもので、哺乳類の化石はなく、爬虫類が存在したことが見て取れる。峡谷の中ほどは4億年前の石灰岩で、爬虫類ではなく、甲冑魚の化石がある。5億年前には脊椎動物の化石はなく、原始的な生物しか見つからない。峡谷の底にはコロラド河が流れている。20億年前の地層には、目に付く化石が存在しない。
カナダのスペリオル湖の岸には、コロラド河と同年代の岩が露出している。入植者によって銃の火打ち石に使用された。研究者たちは石を薄く切り取って顕微鏡で調べ、微生物の化石を発見した。オーストラリアでは30億年前の地層からでさえ、化石が見つかった。
誕生した後、冷えつつあった地球には、アンモニア、メタン、水素、一酸化炭素に満ち溢れていた。酸素はなく、オゾン層もなかった。やがて炭素、核酸、アミノ酸がつくられ、化学変化を起こしてタンパク質をつくり、DNAが合成された。DNAは二重螺旋状で、アミノ酸製造の青写真としての能力と自己複製力を合わせ持っている。
そして単細胞生物が誕生した。バクテリア、藍藻類などである。後者は葉緑素で光合成を始め、酸素を生み出した。酸素は増加し、これを呼吸に使う動物も登場した。原生生物である。
原生生物にはアメーバのような動物的なものと、葉緑素を持つ植物的なものがある。原生生物は細胞分裂によって増殖したが、ヴォルヴォクスのように多くの細胞がボール状に集合し、一つの生命体のように行動することもある。
そしてカイメンが登場する。カイメンは多くの細胞の集合体で、骨格を形成し、中にはカイロウドウケツのような芸術的なものもある。
真の意味での最初の多細胞動物は、クシクラゲなどの有櫛動物である。櫛状の繊毛で移動する。
クラゲ(刺胞動物)は触手で獲物を捕らえ、体の中央にある口へ運ぶ。クラゲの幼生は、ストロビラ、ポリプなどと呼ばれる形態を送りながら、成長する。
イソギンチャクは海底で生活する。触手を上に向け、獲物を捕らえて口に運ぶ。
カツオノエボシはクラゲに似ているが、空気の入った袋で海面に浮きながら毒のある長い触手で獲物を捕らえる。
ウミエラなどのソフトコーラルやイシサンゴなどは複数の個体が共通の骨格を形成し、大きな群体を作る。その形状は、種類によってさまざまである。
(潜水服姿のアッテンボロー氏が語っている)
オーストラリアのグレート・バリア・リーフは月からも見ることができる。もし5億年前、別の惑星の宇宙飛行士が地球のそばまで来たら、この星にも生物がいるようだと考えたことであろう。
2. Building Bodies
生物の母・海
グレート・バリア・リーフにはさまざまな動物が生息しているが、それらはいくつかのグループに分けられる。
モロッコの6億年前の地層からは魚の化石は出土しないが、さまざまな生物の化石が発見されている。この時代には化石として残りやすい殻を持った生物が出現する。
扁形動物のヒラムシは、サンゴ礁の海底を這い、泳ぐこともできる。眼点を持ち、光を感じる。
6億年前に殻を持った触手動物が登場した。その生き残りであるシャミセンガイは、現在でも日本の海岸の泥地に生息しており、食用にされている。三味線とはギターに似た日本の楽器である(と、アッテンボロー氏は解説している)。
続いて、巻貝や二枚貝など軟体動物が出現する。軟体動物は約6万種が現存している。巻貝(腹足類)は、主に歯舌で藻類を食べている。ウミウシは巻貝の仲間だが、殻は退化しており、背中に鰓がある。ウミウシ類の中にはクラゲを餌とするものがいる。アサガオガイはカツオノエボシを捕食する。
二枚貝(斧足類)は砂に潜って生活し、水中のプランクトンを濾して食べるフィルターフィーダーである。ホタテガイは水を噴射して泳ぐことができる。オオシャコガイは1mにもなる最大の二枚貝で、大きすぎて移動できない。
頭足類のオウムガイは巻貝に似ているが、空の中のガスによって浮遊することができる。現生種は南太平洋の水深500mの深海に生息しており、エビやカニなどを捕食している。水管から水を噴出して移動する。
オウムガイから分かれて進化したアンモナイトは、多くの種に分化して繁栄したが、恐竜時代の末期に絶滅した。殻の形や大きさがさまざまな化石が発見されている。
同じく頭足類のイカやタコは殻が退化した。イカの中には殻が残っている種もあり、カイダコ(アオイガイ)はオウムガイに似た殻を作って中に産卵する。タコは鈍重だが、イカは水中を活発に泳ぐ。彼らは哺乳類と同じ構造の眼を持ち、無脊椎動物の中では最も知能が高いと言われている。イカの中には巨大な種もいる。ノルウェーでは全長9mにも及ぶイカが打ち上げられたことがあるが、その倍以上の記録さえある。彼らは6億年前の貝類の子孫である。
棘皮動物には、ウミユリ、ウミシダ、ヒトデ、クモヒトデ、ウニ、ナマコなどがある。これらの体型は基本的に五放射相称である。ウミユリの柄が短くなったものがウミシダ、さらに5本の腕を伸ばしたヒトデやクモヒトデ、ヒトデが腕を丸めたのがウニ、ウニが伸びたものがナマコである。棘皮動物は管足を持ち、その内部の水圧を変化させて移動する。サンゴ礁に生息するオニヒトデはサンゴを喰い荒らす。
体節を持った動物で最初に出現したのが、現生のゴカイを含む環形動物で、その次が節足動物である。カナダのバージェス山道の頁岩からは5億5000万年前の奇妙な動物の化石が発見されている。
カギムシは陸上のジャングルに生息している。
三葉虫の化石も見つかっている。節足動物は複眼を持っており、非常に解像力が高い。人間が17世紀に発見した望遠鏡の原理と似た構造になっている。三葉虫は2億5000万年前に絶滅したが、これに近縁とされるカブトガニは今でも生き残っている。彼らは繁殖期になると波打ち際に多数が集まって産卵する。
三葉虫が絶滅すると、甲殻類が繁栄した。プランクトン生活を過ごすカイアシ類からエビやカニまでさまざまな形態の種があり、脱皮を繰り返して成長する。最大種は日本近海の水深600mに生息するタカアシガニである(日本の漁船の甲板で、網にかかったタカアシガニを手に解説するアッテンボロー氏)。
甲殻類の脚はいろいろな形をしている。前方の脚はハサミになっている。ヤシガニは海岸のココヤシの木にのぼり、強力なハサミで未熟な実を切り落として食べる。
節足動物は陸上に生息範囲を広めた。4億年前に昆虫が誕生した。
3. The First Forests
最初の森林
地球の歴史の上で、長い間、陸地は不毛だった。火山活動でできた溶岩が固まり、風雨がそれを削り取った。
最初に上陸した植物は藻類である。有性生殖のために湿気のある水辺に生息していた。現生のコケ類は、有性生殖と無性生殖を交代で行ない、胞子を空中に放出する。
動物もまた上陸する。節足動物のヤスデは植物を主食としている。初期のヤスデには2mに達する巨大な種も存在した。空気呼吸のために、気管を発達させた。
サソリやクモのような肉食性の節足動物も誕生した。サソリはハサミと毒のあるカギで武装している。クモは絹糸を出し、これをさまざまなことに利用している。
サソリやクモは肉食であるがゆえに、繁殖に問題を抱えている。大きなメスは小さなオスを餌とみなして捕食することがある。そのため求愛行動が必要となる。サソリのオスはメスのハサミを抑えてダンスを行なう。ハエトリグモのオスは手旗信号をメスに送る。コモリグモのオスは地中のメスに用心しつつ接近する。
やがて、ヒカゲノカズラ類、トクサ類、シダ類といった植物が出現する。木生のものもあり、森林が誕生した。これらも胞子をつくり、空中に散布している。
4億年前の森林に昆虫が誕生した。昆虫は3対の脚と複眼を持つ。シミのような原始的な昆虫には翅がないが、多くの昆虫は2対の翅を持っている。
トンボのように翅のある昆虫は3億年前に登場した。トンボの幼虫(ヤゴ)は水中で生活し、鰓呼吸をしているが、成虫は空中を飛び回り、小型の昆虫を捕食している。翅を広げると70cmもある巨大なトンボ(メガネウラ)の化石が発見されている。これは史上最大の昆虫である。
ときを同じくして、ソテツ類とマツやスギなどの針葉樹が現れる。これらは花粉を空中に散布して繁殖する。今日、カリフォルニアに生育しているジャイアントセコイアは高さ112m、幹の直径12mにも成長する。
針葉樹は樹液を出すが、昆虫がこれにからまると、保存状態の良い化石となる。琥珀である。琥珀は1億年前から見つかっている。
多くの昆虫の翅は2対だが、これを1枚としてはばたく方が都合が良い。ハチは前後2枚の翅をつなげて高速度で回転させる。ミツバチは1秒に175回はばたき、前進、停飛、後退も思いのままである。甲虫の前翅は厚くて硬い鞘翅となり、後翅を飛行に使う。アブなどの双翅類の翅は1対のみである。彼らは1秒に1000回もはばたくことができる。
クモは昆虫を捕食するために、網を張るようになった。こうして、昆虫が増えすぎるのを防ぐ役割をしている。
1億年前、顕花植物が出現する。花は美しいが、これは人間を楽しませるためではなく、昆虫をひきつけるのが目的である。
4. The Swarming Hordes
昆虫の世界
昆虫は、世界で最も種類の多い動物である。昆虫の体は、頭部、胸部、腹部に3分され、3対の脚と2対の翅を持つ。体はキティン質の外骨格である。
顕花植物は昆虫の助けを借りて受粉する。初期の花は花粉そのものを食べる昆虫によって受粉させていたが、後に蜜で昆虫を引き寄せるようになった。花はあらゆる手段で昆虫を呼び、紫外線を使って強烈にイメージするものもある。
スタペリアは腐った肉の臭いでハエをおびき寄せる。ハエを一晩閉じ込めて、大量につけた花粉を運ばせる花もある。花粉は別種の花に運ばれても意味がないので、多くの花は専属の昆虫を雇っている。
ラン類は花そのものをメスのハチに見せかけ、オスのハチをひきつける。中央アメリカのイトランは小型のガに卵を産ませる。受粉して生じた種子はガの幼虫の餌となるが、残った種子が成長する。彼らは相互依存している。
チョウやガの幼虫は、種ごとに食べる植物が決まっている。成虫は幼虫の食草に産卵する。
孵化した幼虫はまず、卵の殻を食べ、ついで食草に口をつける。幼虫は無防備なので、多くの外敵に狙われる。オーストラリア産のツバメガの幼虫は、鳥の糞に擬態する。毒のある毛で武装したり、目玉模様で捕食者を威嚇する幼虫もいる。
ガの幼虫は絹糸でマユを作って蛹となるが、チョウの幼虫はマユを作らない。成虫となると、あまり食物は取らず、オスとメスの求愛に重点を置く。
鱗翅類で最大のヨナクニサンは30cmまで成長するが、ワシ大のチョウやガは存在しない。気管によって呼吸するため、大きさに限界がある。
この問題を別の方法で解決したのが、シロアリ、アリ、ハチなどの社会性昆虫である。
シロアリの集団は1頭のレイヨウに例えられる。集団の大半は、1匹の女王アリの子である働きアリと兵アリで、生殖能力がない。兵アリは大きな顎で武装しているが、自分では餌を食べられないので、働きアリに口移しで食べさせてもらう。女王アリは巨大な産卵マシーンで、1日に3万個の卵を産む。王アリは女王アリのそばにいる。新しく生まれた女王アリと王アリは羽アリとなって結婚飛行に飛び立ち、地上に降りて翅を捨て、新しい家族を作る。
シロアリは真のアリではなく、むしろゴキブリに近縁だが、別のグループに属するアリ、ミツバチ、スズメバチも集団生活をする。ただし、多くのハチは単独である。
スズメバチは狩りをする。マルハナバチは地下に巣を作り、花粉団子を幼虫の餌として蓄えている。ミツバチは大集団を作る。働きバチは生殖能力がなく、飛びながら蜜を集める。巣に戻るとダンスによって花の位置を仲間に伝える。
アリもまた社会生活を営む。東南アジアのツムギアリは木の葉を幼虫の絹糸でつなぎ合わせて巣を作る。働きアリの中には養育専門のアリもいる。
南アメリカのハキリアリは木の葉を切り取るが自分では消化できず、これを養分としてキノコを栽培して食料としている。
中央アメリカのアカシアアリはアカシアの棘の中に巣を作る。アカシアとは完全に共生関係にあり、葉にできるタンパク質とヴィタミンに富んだ栄養物を食べている。その見返りとして、他の昆虫がやってくると追い払う。
グンタイアリは特定の巣を作らず、行軍と野営を繰り返す。彼らは行く先々の生き物を片端から餌食にする。グンタイアリの群れは1頭の肉食獣のようなものである。
昆虫は農作物を喰い荒らし、人間に寄生して病気を蔓延させてきた。人間はいろいろな手段で昆虫を絶滅させようとしてきたが、今日に至るまでまだ1種も成功していない(これはいわゆる害虫の類で、絶滅に瀕している希少な昆虫もいる)。
5. The Conquest of the Water
海の征服
生命は海で誕生した。海は地球上の表面積の4分の3を占め、その支配者が魚である。
ハタの1種タマカイは、人間の身長の2倍にも達する。その体表を、小さなホンソメワケベラが掃除している。ヨツメウオは水中と空中の両方を見ることができるが、ブラインドケイヴフィッシュは眼が退化している。
原索動物のホヤは固着生活するフィルターフィーダーだが、幼生はオタマジャクシのような体型で遊泳生活を送り、原始的な脊椎である脊索を持っている。ナメクジウオも脊索を持つフィルターフィーダーである。
ヤツメウナギやヌタウナギは顎がなく、真の魚ではない。彼らは魚に吸いついて舌で肉を削り取るという方法で採食している。同じような顎のない魚の化石が、古生代の地層から発見されており、骨質の保護板で覆われているために甲冑魚と呼ばれている。
オーストラリアの内陸からは、同様に甲冑で武装しているが、顎のある魚の化石が発見された。板皮類である。しかし、彼らはまもなく絶滅した。
その後、サメやエイなどの軟骨魚類が登場する。サメの中には、全長が13mにも及ぶカルカロドン・メガロドンのような巨大な種もいた。
サメやエイは現在でも生存している。シュモクザメは両眼が頭の左右に張り出している。メジロザメなどの外洋性のサメは絶えず泳ぎ続けている。泳ぎをやめたら、沈んでしまうためである。一方、オーストラリア産のウォビゴングのように底棲のサメもいる。カスザメは体が上下に平たくなり、エイに似ている。
エイは完全に底棲である。ノコギリエイは吻で海底のカニなどを掘り出すが、小魚を叩いて食べることもある。一方、オニイトマキエイはほとんどエネルギーを使わずに外洋を泳ぐフィルターフィーダーである。サメ類でもウバザメなどはプランクトンを食べている。
一方、サメと同時期に出現した硬骨魚類は、現在大繁栄している。原始的な硬骨魚類であるチョウザメやそれに近縁のフィルターフィーダーのヘラチョウザメは体型や尾鰭の形がサメに似ている。アフリカの淡水に棲むポリプテルスは原始的な肺を持ち、空気呼吸する。この肺は浮き袋という形で硬骨魚類の繁栄に貢献することとなる。
カワカマス(パイク)は肉食性の淡水魚で、ローチのような小魚を捕食する。獲物を狙うとき、わずかに鰭を動かすだけで、水中に停止し、すばやい動きで捕らえることができる。
サンゴ礁にはさまざまな形や色彩の魚がいる。ハコフグは鎧のような鱗で武装し、鰭だけを動かして泳いでいる。チョウチョウウオ科のフエヤッコダイは細長い吻でサンゴの隙間から餌を探す。モンガラカワハギは外敵に追われるとサンゴの間に逃げ込み、背鰭の棘条で体を固定する。
外洋性の魚はすばらしいスピードで泳ぎまわる。トビウオは外敵に追われると空中へ飛び出し、胸鰭を広げて滑空する。
カレイやヒラメの幼魚は一般の魚と同じく体の左右に眼がついているが、成長とともに左右いずれかの片側により、海底で横たわって生活するようになる。
魚の鰭はさまざまな役割を果たす。イザリウオは背鰭が変化した釣竿で獲物をおびき寄せる。ホウボウはカニの脚のような腹鰭で海底を歩く。
深海にもホウライエソのような魚が生息している。チョウチンアンコウ類は大きなメスの体表に、小さなオスが寄生している。フウセンウナギは大きく膨らむ胃袋を持ち、自分よりも大きな獲物を捕食する。ヒカリキンメダイは眼の下に発光器を持っている。
発電する魚もいる。アフリカのモルミルスやギムナルクス、南アメリカのゴーストフィッシュやナイフフィッシュは弱い電流を出し、レーダーとして使う。ナイフフィッシュの1種デンキウナギは強力な電気で獲物をしびれさせて食べる。
アフリカのマガディ湖に生息するシクリッドの1種は海水魚ですら耐えられない高塩分もものともしない。南極の海に住む魚は、血液が凍結しない仕組みを持っている。
サケやマスは海水魚だが、河川の上流にさかのぼって産卵する。繁殖期のカラフトマスは背中が盛り上がり、オスは仲間同士の争いのために歯が鋭くなる。産卵後、彼らは一生を終える。
ヒレナマズなど何種類かの魚は陸上を移動できる。このような能力を持つ魚が陸上に進出したと考えられている。
6. Invasion of the Land
陸への進出
3億5000万年前の沼地で、魚が陸上に這い上がった。魚が陸上で生活するためには二つの問題がある。一つは陸上でいかにして移動するか、もう一つはどうやって空気中の酸素を呼吸するかである。
現生のトビハゼはこの問題を解決している。彼らは筋肉と骨で支えられた胸鰭を使って這い、皮膚呼吸をしている。
4億年前に出現した硬骨魚類の中にも柄のある鰭を持っているものがいた。シーラカンス(管椎類)である。彼らは7000万年前に絶滅したと思われていたが、1938年に南アフリカ近海で現生種が発見され、ラティメリアと命名された。コモロ諸島では年に1、2匹のラティメリアが漁獲されるが、水深300mの海底に棲んでいるため、引き上げると衰弱死する。
(この番組では、まだ生きているラティメリアの貴重な映像が収録されている。弱ってはいるが、鰭の使い方などが観察できる)
管椎類と同時期に出現した肺魚類は肺を持っており、空気呼吸する。現生種はオーストラリア、南アメリカ、アフリカに6種いるが、アフリカ産の肺魚(プロトプテルス)は棲んでいる沼地が干上がると、泥でマユを作って乾眠する。このマユを水に入れると再び泳ぎ出す。
肺魚の肺と管椎類の鰭、この両方の特徴を合わせ持つ魚エウステノプテロンの化石が発見されている。このような魚から両生類が進化したと考えられている。
初期の両生類の中には体長3mにもなるマストドンサウルスがいる。現在、日本に分布しているオオサンショウウオはその面影を残している。しかし、現生種のイモリやサンショウウオなどの有尾類の多くは小型である。彼らは陸上で生活しているが、皮膚が乾燥すると死んでしまうので、水辺から離れられない。
クシイモリのオスの背中には櫛状の突起物があり、繁殖期にはこれを使ってメスに求愛する。両生類の幼生(オタマジャクシ)は鰓を持ち、水中で生活する。
メキシコサンショウウオは幼生の姿のままで成熟し、繁殖する。アステカ語でアホロートル(水中の怪物)と呼ばれている。
アメリカサンショウウオには肺がなく、皮膚呼吸に頼っている。体が細長く、四肢は退化して小さくなっている。
無足類のアシナシイモリは東南アジアや中南米に分布し、ミミズのような外観をしている。肉食性でミミズなどを捕食する。
カエル類(無尾類)は尾を退化させた。南アフリカ産のゴライアスガエルは最大種で、昆虫の他、ネズミ、小鳥、魚まで捕食する。
(英名では飛び跳ねるカエルをfrog、あまり飛び跳ねないカエルをtoadと呼ぶ。「カエルとヒキガエル」という表現をしばしば目にするが、これはfrogs
and toadsの訳語であろう。実際にはtoadはヒキガエル科以外のカエルも指すから、「カエル類」と訳するのが妥当と思われる)
カエル類は発達した後肢を使ってジャンプする。トビガエルは肢の水かきを広げて滑空する。一方、オーストラリアのカトリックガエルのように地中に潜る種もいる。
カエル類は皮膚が軟らかく、外敵に襲われやすい、ヨーロッパヒキガエルはヘビに遭遇すると体を大きく見せる。毒を持つスズガエルは腹部の模様を見せて威嚇する。中南米のヤドクガエル類は猛毒を持ち、派手な警戒色をしている。
カエル類はすべて肉食で、舌をすばやく出して昆虫などを捕食する。大きな獲物が口に入ると、眼球を使ってのどに押し込む。
一般にカエルは水中で産卵し、幼生(オタマジャクシ)は水中生活を送るが、大半は外敵に捕食され、生き残るものは少ない。そのため、親が卵や幼生をさまざまな手段で保護する種もいる。植物の葉の水溜りや樹上に産卵したりもする。
コヤスガエルは地上に卵を産む。卵の中で幼生期を過ごし、孵化したときにはカエルの形になっている。ヨーロッパのサンバガエルはオスが卵を背負い、孵化が近づくと水中に入る。ブラジルのコモリガエルはメスが卵を背に乗せる。フクロアマガエルはメスが背中の育児嚢で卵を保護する。チリ南部のダーウィンガエルはオスが鳴嚢の中で卵を育て、子ガエルは口から出てくる。南アフリカのコモチガエルは卵胎生である。
オーストラリアのキクロラナは砂漠に進出した。しかし、完全に陸上で生活するには、殻のある卵が必要になる。これを克服したのは爬虫類である。
7. Victors of the Dry Land
爬虫類の世界
ガラパゴス諸島の支配者は爬虫類である。ウミイグアナやガラパゴスゾウガメは湿った皮膚を持つ両生類には耐えられない熱帯の太陽の下で生きている。
爬虫類は鱗で覆われており、乾燥に強い。ウミイグアナは日光浴をして体を暖める。過熱すると岩陰に避難する。海に潜って海藻を食べるが、南極からのフンボルト寒流のせいで長くは潜っていられない。爬虫類は外温性で、あまり食物を必要としない。餌の少ない環境でも生存できる。
鱗は他にも役割がある。アゴヒゲトカゲやエリマキトカゲは鱗の伸びたフリルで敵を威嚇し、そのあと逃走する。ヤモリの足の裏の鱗は毛状で吸盤の役割を果たす。カメの鱗は甲羅となり、鎧である。アノールトカゲはのどに鱗の変化した飾りがある。ウミイグアナやリクイグアナも鱗が飾りとなっている。
爬虫類は陸上で交尾する。卵は陸上に産み、殻で覆われており、孵化した子供は親と似た姿をしている。
化石として知られる古代の爬虫類には、恐竜、翼竜、首長竜、魚竜などがある。恐竜には、デイノニクス、ティランノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルス、パラサウロロフス、ブラキオサウルスなどがいる。大きさもニワトリ大からアパトサウルスのように全長20m、体重30tに達する巨大なものもいる(アパトサウルスは、ブロントサウルスとして知られていたが、現在は学名としては無効である。英語圏ではBrontosaurusという名称は竜脚類の総称、つまり雷竜という意味で使用されている)。
ステゴサウルスの背中の板は防御用と考えられていたが、表面に血管が集まっており、体温調節に役立ったようだ。全長9m、体重10tになるトリケラトプスは大きな脳を持ち、知能が高かったと言われている。
ワニは現在でも生存しているが、祖先は恐竜と同時期に出現している。ナイルワニは全長7m、体重750kgになる。彼らは空気中ほど温度が急変しない水中で生活しているが、太陽が昇ると陸上で日光浴する。体温が上昇すると口を開けて熱を逃がす。
ワニの母親は卵や子供の世話をし、ナイルオオトカゲなどの外敵から守っている。子ワニは魚やカエルなどを捕食して成長する。
ワニやカメやトカゲは四肢を持つが、トカゲ類にはアシナシトカゲやミミズトカゲのように肢が退化した種もいる。ヘビは四肢が消失したが、原始的なニシキヘビやボアには後肢の名残がある。ヘビは体を螺旋状にくねらせて移動する。砂漠に棲むヨコバイガラガラヘビ(サイドワインダー)は地表に体の2か所をつけて横向きに進む。
ヘビはすべて肉食で、カエルなどを捕食する。水中でアンフューマやザリガニを捕らえたり、鳥の卵を主食とする種もいる。毒を持つヘビも多い。
北アメリカのガラガラヘビは尾に発音装置を持つ。彼らはピットと呼ばれる熱を感じる装置を持ち、暗闇でも獲物の位置を探知することができる。
ヘビは優れた捕食者だが、体温調節ができない。これを可能にするためには、羽毛のような断熱材が必要となる。
8.Lords of the Air
大空の支配
シュバシコウは毎年、アフリカからヨーロッパへ渡ってきて繁殖する。ドイツのバイエルン地方の教会にも巣を作っている。
鳥類はすべて羽毛を持つ。風切羽は中央の羽軸から100本ほどの羽枝が伸び、各羽枝からそれぞれ100本ほどの小羽枝が出ている。小羽枝同士は数百の鉤でひっかかり、一枚の羽弁を作る。
1860年、バイエルン地方のゾルンホーフェンの石切場から羽毛の化石が発見された。1億5000万年前の恐竜時代の地層からである。翌1861年、同じ場所で羽毛を持った動物の化石が出土し、アルカエオプテリクス(始祖鳥)と命名された。この動物は歯の生えた顎と尾椎を持ち、翼には3本の鉤爪のある指を持つなど、鳥類と爬虫類の中間的なものであった。
現生の鳥は嘴を持ち、尾椎は退化している。南アメリカに分布するツメバケイの雛は前肢に爪を持っているが、成鳥になると消失する。
鳥の嘴は餌によってさまざまである。シュバシコウは長い嘴でカエルや魚をくわえる。ハシビロコウは泥の中の肺魚を餌としている。ミミハゲワシやサルクイワシは肉を引き裂く。ヘラサギはスプーン状の嘴を左右に振って獲物を捕らえる。フラミンゴはフィルターフィーダーで、微生物を濾し取るための嘴を持つ。ペリカンは下嘴についたのど袋で魚をすくい上げる。
嘴は羽づくろいにも使用される。カモ類は潜水しても羽毛に水がしみこまないように、尾の付け根にある尾脂腺から分泌される脂を羽毛に塗りつける。羽毛を清潔に保つために水浴びや砂浴びをする鳥も多いが、カケスなどはアリ浴びをする。アリを羽毛になすりつけ、その蟻酸で寄生虫を駆除するためである。
鳥はさまざまな飛行技術を持つ。アホウドリなどの海鳥は細長い翼を持ち、長時間飛行することができる。ネッタイチョウは飛びながら求愛する。ヒメコンドルは上昇気流をとらえるため、幅の広い翼を持つ。アマツバメは時速170kmで飛ぶ。
飛びながら採餌する鳥も多い。ハサミアジサシは下嘴が長く、水面近くの魚を捕食する。ハチドリは停飛しながら花の蜜を吸う。ヤリハシハチドリは自分の体よりも長い嘴を持つ。
シュバシコウは嘴を鳴らして求愛する。サヨナキドリなど多くの小鳥はさえずりによって求愛する。一方、アフリカオオノガンは求愛に飾り羽を使う。ニューギニアのフウチョウ類のオスは見事な飾り羽を持ち、求愛ディスプレイを行なう。
鳥はいろいろな形の巣を作る。チリのオニオオバンは外敵の侵入を防ぐための水面に浮いた巣を作り、ツリスドリの巣は木の枝から垂れ下がっている。イエスズメはシュバシコウの巣の下部に間借りする。
鳥類はすべて卵を産む。卵胎生の鳥は存在しない。これは飛ぶために負担がかからない方法である。今までに知られている最大の卵は、かつてマダガスカル島に生息していた飛べない巨鳥アエピオルニスのものである。
シュバシコウはアフリカで越冬する。イスタンブールを経るルートとジプラルタル海峡を渡るルートがある。チョウゲンボウ、ハチクマ、チュウヒワシ、トビなどもシュバシコウとともに南下する。
鳥は体内に時計とコンパスと地図を持っているようだ。目印一つない海上を越えていくからである。
シュバシコウはアフリカのサヴァンナで越冬するが、その地に分布するダチョウは飛ぶことをやめて地上で生活している。翼は求愛ディスプレイに使う。
恐竜が絶滅したあと、空白となった生態的地位を埋めるべく、飛べない巨鳥が出現した。北アメリカで化石が発見されたディアトリマはその代表で、当時まだ矮小だった哺乳類を捕食していた。しかし、彼らはまもなくそのあとに進化してきた哺乳類との生存競争に敗れて姿を消した。哺乳類こそが地上を制覇したのである。
9.The Rise of the Mammals
哺乳類の誕生
18世紀の末、オーストリアの植民地からカモノハシの毛皮がロンドンに送られたとき、作り物だと思われた。しかし、それは本物だった。
カモノハシは哺乳類だが、爬虫類的でもある。体は毛で覆われ、内温性だが、卵を産む。子供は母親の乳を飲んで育つ。嘴は鳥のようだが軟らかい。彼らはカワウソのように水中を泳ぎまわって餌をとる。
オーストラリアにはハリモグラもいる。これも卵を産み、育児嚢で孵化させる。子供には乳を与える。アリやシロアリを主食としており、舌でなめ取る。
一般に爬虫類は外温性だが、化石で発見されている盤竜類は体温調節が可能だったと考えられている。盤竜類のディメトロドンは背鰭のような突起があり、体温調節を行なっていた。その後繁栄した獣弓類は背鰭が消失した。彼らは分化した歯を持ち、内温性のために効率よく栄養を摂取していた。
2億年前に生存していた初期の哺乳類の化石が発見されているが、恐竜の支配する世界では大型になれず、細々と生活していた。
現在、南北アメリカに生息するオポッサムの祖先もそのころ登場した。彼らは胎生で、未熟児(ネオネート)を産み、育児嚢で育てる。このグループは有袋類と呼ばれている。ミズオポッサム(ヤポック)は水中で魚を捕食する。マウスオポッサムは夜行性で昆虫やカエルを餌としている。
現在、有袋類はオーストラリアで繁栄している。オーストラリアはかつて南極大陸を挟んで南アメリカとつながっていた。その後、オーストラリアは完全に他の大陸と切り離されたため、有袋類が生き残った。
フクロギツネ(ポッサム)はオポッサムに似ている。アンテキヌスはハツカネズミ大だが、昆虫を捕食するハンターである。子供は袋で育てられるが、3〜4か月で独立し、以後は昆虫を食べる。
フクロネコはより大型の肉食有袋類である。タスマニアデヴィルはさらに大型で、死肉を食べ、骨まで噛み砕く。同じタスマニアのフクロオオカミ(サイラシン)は最大の肉食有袋類だが、現在は絶滅したとされる(フクロオオカミはしばしばタスマニアンタイガーと呼ばれる。トラのような縞模様があるが、外見はむしろオオカミに似ている)。
フクロアリクイ(ナンバット)はアリクイやセンザンコウの生態的地位を占めている。フクロモモンガはモモンガのように皮膜を使って滑空する。
コアラはユーカリの葉のみを食べ、外観は似ていないが南アメリカのナマケモノに相当する。ウォンバットはマーモットのように完全な地上性である。バンディクートはウサギに似ているが、昆虫や肉を食べる。ジャックウサギのように長い耳は熱を放散するためである。フクロミツスイは花の蜜を吸い、同じような食性のコウモリに相当する。
有袋類の代表格であるカンガルー科には、小型のネズミカンガルー類、中型のワラビー類と樹上性のキノボリカンガルー類、そして大型のカンガルー類が含まれる。
1969年、ナラコートの洞窟から何千という有袋類の化石が発見された。体長3mもの巨大カンガルーであるプロコプトドンやサイ大の巨大ウォンバットのディプロトドン、そしてフクロライオン(ティラコレオ)などである。これらは2万年前に絶滅した(フクロライオンはハサミのような奥歯を持ち、肉食説と果実食説が唱えられていたが、歯の磨耗を調べた結果、現在は肉食説に落ち着いたようである)。
オーストラリア大陸は今も年に5cm北へ移動している。
カンガルー類は草原や砂漠に生息し、レイヨウやシカに相当する。アカカンガルーは最大である。
カンガルーのネオネートは生まれると母親の袋まで這って進む。カンガルーは跳躍という形で移動するが、幼獣を袋に入れた状態では、その方が負担をかけないからだと思われる。
有袋類がオーストラリアで進化している間、別の発育方法をとる哺乳類もまた進化しつつあった。有胎盤類である。
ハイティのソレノドンは最も原始的な有胎盤類で、充分に成長した子を出産する。ヌーの子は生後数時間で立ち上がる。タテゴトアザラシの子は氷上で産まれ、脂肪分の多い母乳で育つ。有胎盤類は地上のあらゆる環境へ適応放散していったのである。
10. Theme and Variations
哺乳類の生態
哺乳類の生態はさまざまだが、すべて同じ祖先から進化した。
東南アジアのジャングルに生息しているトゥパイは恐竜時代にいた哺乳類の原型に近いとされている。リスのように樹上性で昆虫を主食としている。食虫類に近縁とする説と、霊長類に含める説がある(現在は独自のトゥパイ目に分類されている)。
ピレネーデスマンは水中に潜る原始的哺乳類である。活発に泳ぎまわり、ミミズなどを捕食する。眼は退化しており、長い吻を水面に出して呼吸する。
北アメリカのホシバナモグラは地下にトンネルを掘って生活している。トンネル内をパトロールし、中に落下したミミズや昆虫を捕らえる。
アフリカのツチブタや南アメリカのオオアリクイはアリやシロアリを食べている。歯は退化し、強力な鉤爪でアリ塚を壊し、長い舌でなめ取る。アフリカのセンザンコウも同じものを食べ、毛が変化した鱗で武装している。外敵に襲われるとボールのように丸くなる。南アメリカのヒメアリクイとコアリクイは樹上性のアリやシロアリを食べる。
夜行性の昆虫は無数にいる。夜の空で昆虫を捕食するために飛行するようになったものがコウモリ類である。コウモリの骨格はトゥパイと似ており、樹上性の祖先から進化したと思われる。
コウモリは暗闇の中で超音波を使って飛び、昆虫を捕らえる。彼らの声は人間には聞こえないが、オシロスコープを使って波長を見ることができる。ウサギコウモリなど多くの種は、音をとらえるための鼻葉を発達させ、グロテスクな顔をしている。
昆虫も対抗手段を持つ。クサカゲロウはコウモリの超音波を感じると、翅を閉じて降下し、攻撃をかわす。タイガーモスなどのガは跳音波を別の波長でコウモリに送り返し、警告することによって捕食を免れている。
昆虫以外のものを捕食するコウモリもいる。アラコウモリは他種のコウモリや鳥をも捕食する。チスイコウモリは大型動物の生き血を吸う。シタナガコウモリは花の蜜を吸う。花粉の運び屋となることもある。
オオコウモリは果実を食べる。超音波を使わないので鼻葉はなく、別名flying foxと呼ばれるようにキツネに似た顔つきをしている。洞窟ではなく、樹上で休息する。
中央アメリカのウオクイコウモリは魚を食べる。おそらく水面に落ちた甲虫を狙っているうちに、水面付近の小魚を捕らえるようになったと思われる。
ウオクイコウモリが魚を食べるようになったのはあまり古い時代ではないようだが、ずっと以前から魚を求めて海へ進出した哺乳類がいる。恐竜時代の海には魚竜や首長竜がいたが、彼らが絶滅したあとにその生態的地位を埋めたのがクジラ類である。その後、クジラ類は巨大化し、最大のクジラはかつて存在した最大の恐竜の体重をはるかに上回っている。クジラは前肢が鰭となり、後肢が退化した。
クジラ類は歯クジラと髭クジラに大別される。髭クジラの一種ザトウクジラは体重が40tに達する。彼らは繁殖のためハワイを訪れ、夏はアラスカで採食する。オキアミを主食としており、その周囲で空気を吐き出して泡のカーテンを作り、囲い込んで一飲みにする。歯は退化しており、上顎のクジラ髭で海水をふるいにかけ、餌を濾しとって食べる。
歯クジラはもっと大きな獲物を食べる。シャチはアザラシなどの海獣をも捕食する。北極海に分布するイッカクは長く伸びた牙を持つ。マイルカ類とネズミイルカ類は小型で、人間にも親しみ深い存在である。
イルカは高度な知能を持ち、水族館ではいろいろな芸を披露している。彼らはさまざまな声を出すが、人間とは違って言葉は作れないようだ。
アリクイ、コウモリ、クジラの他にも、植物を食べる哺乳類、そしてそれを捕食する肉食性の哺乳類が台頭した。
11. The Hunters and Hunted
食料の獲得
東南アジアのジャングルも、南アメリカの熱帯雨林も、ヨーロッパの森も、基本的には5000万年前とほとんど変わっていない。かつては恐竜が植物を食べていたが、彼らが絶滅すると、哺乳類が適応放散し始めた。当初、哺乳類は昆虫などを食べていたが、やがて無尽蔵にある木の葉に目をつけた。植物食動物が誕生した。特化したのはセクロピアの葉だけを食べる南アメリカのミツユビナマケモノである。
その後、肉食性の哺乳類も出現した。オセロットはアグーティを狙い、オコジョやケナガイタチはネズミを追いかける。ハムスターは危険を避けるため、食物を頬袋に詰め込み、安全な巣で食事する。
2500万年前、イネ科の植物が現れ、瞬く間に分布を広げた。草原の誕生である。多くの動物がこれを食べるようになったが、消化は良くなかった。植物の細胞壁の主成分であるセルロースはバクテリアの力を借りなくては消化できない。
アナウサギは草を食べると、ペリットと呼ばれる半消化物を排泄し、それを再び食べることによって栄養分を完全に吸収する。
アメリカバイソンも草食性である。前歯で草を噛み切り、奥歯で噛み砕いたあと、胃の中でバクテリアにセルロースを分解させる。それを再び口に戻して噛み直し(反芻)、消化・吸収している。
肉食動物も草原へ進出した。アフリカのサーヴァルは1日に10匹以上のネズミを捕食する。ライオンなどネコ科の肉食獣は、犬歯で獲物を殺し、裂肉歯で肉を噛み切る。肉は栄養価が高いので、咀嚼せずに飲み込んでも消化される。
小型の草食獣には安全を求めて地下生活するものもいる。モグラネズミは地中でトンネルを掘り、草の根や球根を主食としている。地下には食料の貯蔵庫やトイレ、育児室もある。
北アメリカのプレイリードッグも同じく地下生活者だが、草を食べるために地上にも姿を現す。そのため、防衛のための社会制度を発達させた。1000頭ほどで町を作り、30頭ほどの村に分かれる。同じ村のメンバーはたくみに連絡を取り合っている。
南アメリカは島大陸となり、固有の動物たちが進化した。ゾウに似て非なるピロテリウム、角のないサイのようなトクソドン、小型自動車ほどもあるアルマディロの怪物グリプトドン、斧のような嘴で草食獣を捕食した飛べない巨鳥フォルスラコス、サーベル状の牙を持つ肉食有袋類ティラコスミルスなどである。
その後、南アメリカは北アメリカとつながり、新たな動物が侵入してきた。その結果、南アメリカ固有の巨大な動物たちは生存競争に敗れ、絶滅した。
19世紀末期、パタゴニアの洞窟で地上性の巨大ナマケモノであるミロドンの毛皮や骨や糞が発見された。ごく最近のもののように見えたので、誰かが飼っていたものではないかと思われたが、骨を年代測定した結果、5000年前のものだった。パタゴニアにインディオが到達したのは8000〜10000年前である。
アルマディロなどは今でも生き残っている。カピバラやヴィスカチャ、マーラなどの大型齧歯類もいる。
一方、北アメリカでは5000万年前に小型犬ほどの草食獣が出現した。ウマの祖先、ヒラコテリウムである。進化するにつれて体は大型化し、蹄は1本に減った。現在のシマウマは時速65kmで走ることができる。
サイ類は体を巨大化させた。身を守るだけでなく、食物を長く胃にとどめておける。ゾウ類はさらに巨大になり、事実上無敵で、繊維質の多いものも食物としている。
アフリカの草原にはさまざまな種のレイヨウ(アンテロープ)が繁栄している。中でも小型のディクディクは、今でも藪などに棲んでいる。なわばりを持ち、においづけをしている。
インパラはやや開けた場所にいる。小さな群れをつくり、外敵を察知するとバラバラになって藪の中に逃げ込む。
ヌーは完全な草原生活者である。大きな群れをつくり、雨の後を追って大移動する。
チーターは時速110kmで走れるが、短距離走者である。主な獲物であるガゼルはより長く走れる。若いヌーはしばしばチーターの餌食となる。2頭のオスのチーターはヌーの群れに入り込み、追い立ててから獲物を選び、のどに噛みついて窒息死させる(チーターがヌーを襲うとは、この番組を見て初めて知った。餌食になったヌーは幼獣だが、チーターより体重がありそうだった)。
ライオンはずっと大型だが、チーターほど速く走れない。彼らは群れで狩りをする。シマウマのような大型獣を狙い、獲物にできるだけ忍び寄ってからダッシュする。ライオンの狩りは必ずしも成功するとは限らない。ブチハイエナの獲物を強奪することも多い。
ブチハイエナも群れで狩りをする。自分たちよりも大きなヌーの成獣にも果敢にアタックする。ハイエナもライオンから獲物を横取りすることもあるが、自分たちで狩りをするほうがずっと多い。群れ同士が獲物をめぐって争うこともある(セグロジャッカルがどさくさに紛れてつまみ喰いしている)。ハイエナの群れは声、しぐさ、においによって高度なコミュニケーションをとっている。
ライオンの群れ(プライド)の根幹は血縁関係にあるメスたちである。メス同士のきずなは強く、他のメスの子供にも乳を与える。オスはなわばりを防衛し、侵入してくる他のオスを追い払う。
狩りはメスのみで行なう。ヌーの群れを包囲して、じわじわと忍び寄る。包囲網が完成すると攻撃が開始される。ヌーの群れはパニック状態になり、ライオンはその間に獲物を選び出す。2頭のヌーを捕獲した。
別のグループの哺乳類も草原へ進出した。彼らは元来、樹上で生活し、木の葉や果実を漁っていた。
12. Life in the Trees
木の上の生活
人間が木に登ったとき、枝をつかむ手と、正面を向いた眼が役に立つ。この特徴を持つ動物は霊長目と呼ばれ、原猿類、サル類、類人猿、ヒトを含む(ここでいうサルとは英語のmonkeyに対応しており、原猿類や類人猿は含まない)。
マダガスカルに生息するワオキツネザルは外見上はサルらしくないが、霊長類に含まれる。鉤爪を持ち、鼻はイヌのように湿っているが、手はものをつかむことができる。仲間同士のコミュニケーションにはにおいを使っている。子供は親の背に乗り、毛をつかんでいる。
原猿類は恐竜時代の末期にトガリネズミのような食虫類から分かれて進化した。その後、マダガスカルはアフリカ大陸と切り離されて島となり、キツネザル類はそこで繁栄している。
ワオキツネザルよりも大型のシファカは後肢が発達し、すばらしいジャンプ力を持つ。木から木へと跳び移るが、地上では四肢で歩けないため、後肢で跳躍して移動する。
インドリはさらに大型で、原猿類では最大になる。見通しのきかないジャングルでは、声によるコミュニケーションが必要で、家族でコーラスをしながらなわばりを宣言する。ネズミキツネザルは最小で、夜に活動する。尿を手のひらにつけて、通ったあとににおいを残す。アイアイも夜行性である。長くのびた中指で、腐った木の中の昆虫や、鳥の卵の中身を食べる。
マダガスカル島以外の原猿類はすべて夜行性で、マレーシアのロリスも同様である。ボルネオのメガネザルは鼻が湿っておらず、大きな眼を持つ。彼らは次のステップに進む、中間的な存在といえる。
南アメリカのジャングルに棲むマーモセット類は 昼行性である。種類によって外観に違いがあり、コモンマーモセットは耳に白い毛の飾りがある。果物や昆虫を食べるが、特にゴムの樹液が好物である。子供は父親が背負うが、年上の子供が背負っていることもある。仲間同士では毛づくろいをする。
南アメリカには70種のサルがいる。リスザルは活発に木から木へと跳び移る。
ホエザルはマーモセットの約20倍の体重があり、ものに巻きつけることのできる尾を第5の手としている。大声で咆えることによって存在を誇示している。嗅覚が鈍いため、果物を鼻先に引き寄せて熟れ具合を確かめるが、眼で見分けることもある。
サルは優れた視覚を持つため、哺乳類の中で最もカラフルな体色をしている。種類ごとに色彩が異なっている。
アフリカにも多くのサルが生息しているが、地上性の種が多い。ヴァーヴェットモンキーは地上を主な生活の場としている。アフリカには尾でものをつかめるサルがいないためと考えられる。外敵に追われても樹上に逃げないこともある。
ヒヒは体が大型化したため、休息時くらいしか木に登らない。果物や木の葉の他、木の根、昆虫、さらにトカゲ、小型の齧歯類、他のサルの肉まで食べる。
マカク類も地上性である。ジブラルタルのバーバリーザルはヨーロッパで唯一のサルだが、元は古代ローマ時代に北アフリカから持ち込まれたものらしい。
ニホンザルもまた地上での生活に適応している。北アルプスでは雪の降る山に棲み、温泉につかって寒さをしのぐ。幸島では研究者の与えたサツマイモを海水で洗って塩味をつけ、砂の混じったムギ粒を水につけて浮いたムギだけを食べることも学習した。これは仲間の行動を見て他の個体もまねをするようになった結果で、群れ特有の文化である。
一方、東南アジアのシルヴァーリーフモンキーは樹上生活を続けている。
類人猿は尾が退化し、体が大型化した。オランウータンは樹上では腕渡りによって移動するが、オスの成獣は地上を歩くこともある。
テナガザルは腕渡りを発達させた。木から木へと巧みに移動するが、これには危険も伴い、3分の1は骨折を経験している。
最大の類人猿であるマウンテンゴリラは、ルワンダとザイールの国境の山地に分布している。ゴリラは視覚、聴覚、嗅覚は人間とほとんど変わらない。主に地上で生活し、後肢でものをつかむのは苦手である。食物はタケノコ、セロリ、シダなどの植物である。オスの成獣(シルヴァーバック)は槍や銃で武装した人間の他には敵はおらず、仲間同士ではほとんど争いごとはなく、のんびりしている(それを証明するため、アッテンボロー氏はゴリラの群れに入り、たむわれている)。
同じアフリカの森に棲むチンパンジーは、200種類の植物の葉や果実、花、シロアリ、アリ、蜂蜜、鳥の卵、鳥、小型の哺乳類などを幅広く食べている(サルを捕食することもある)。チンパンジーは後肢でものをつかめるため、木によく登る。毎晩、木の葉をたわめてベッドを作る。子供は母親や周囲の大人の行動を見て学び、そのため群れごとに文化がある。人間についで複雑な言葉を持ち、木の枝でシロアリを釣るなど道具を使用する。毛づくろいはもともと清潔のためだったが、仲間同士のきずなを深める行動になった。
1000万年前、別の霊長類が草原へ進出し、狩りをするようになった。彼らの子孫が人類である。
13. The Compulsive Communicators
人類・地球をうけつぐもの
人類は北極の氷上や赤道直下の熱帯雨林にも住んでいる。高山に登り、海底に潜る。地球を飛び出して月面にさえ到達している。
人口は2000年前から増加し、現在(1970年代)には40億人に達した。
人類発祥の地はアフリカとされている。
類人猿と分かれて草原へ進出したのは猿人とよばれるアウストラロピテクスAustralopithecusだった。猿人の化石はアフリカ各地で発見されているが、脳容積は現代人の半分ほどで、眼は大きく、歯は小さかった。彼らはまだ小型で、ライオン、アフリカスイギュウ、ゾウなどは手ごわい存在だった。
チンパンジーは怒ると木の棒を振り回すことがある。猿人も木の棒を武器として使用した。
ライオンやハイエナの食事後、ハゲワシが集まってくる。ハゲワシは棒1本で追い払える。その後、鋭い石の角で肉を切り裂く(アッテンボロー氏が実演している)。さらに石と石を打ち合わせて石器を作ることもできる。
その後、原人と呼ばれるホモ・エレクトゥスHomo erectusが登場した。彼らの住居あとからはさまざまな石器が発見されている。鋭い刃を持つ石斧もある。植物をすりつぶす石臼もある。
彼らは現在では絶滅した大型のヒヒを狩っていた。集団で計画性のある狩りを行なっていたことは間違いない。
中高年の男女がプロレスのリングを囲んで声援を送っている。表情は人類の特徴である。人類は顔の表情を変えることによってコミュニケーションを取っている。
アッテンボロー氏を含む一行は、ニューギニアの奥地で、いまだに外部と接触したことのないビアミ族を訪ねた。その結果、ほほえみと眉の動きだけでコミュニケーションが成立した。
60万年前からヨーロッパは寒冷化しつつあった。氷河期は4度訪れている。人類は毛皮を着て洞窟に棲むようになった。南フランスやスペインの洞窟には人類が生活した痕跡が残っている。槍の穂先や石刃も発見された。3万5000年前には現代人と同じホモ・サピエンスHomo sapiensが出現した。彼らと現代人の間には生物学的な差はない。
彼らは洞窟に壁画を描いた。バイソンやオーロックス(家畜のウシの原種)やマンモスがいきいきと描かれている。壁画は豊猟祈願のために描かれたものであろう。
現代のオーストラリアのアボリジニは岩壁に絵を描くが、宗教的な意味もあるかもしれない。カラハリ砂漠のブッシュマンも狩猟採集生活をしており、キリンのような大型獣も狩る。
人類は文字を発明した。5000年前のウルクの遺跡から粘土板も出土している。
生命の歴史をカレンダーに例えると、長きにわたって単細胞生物で、10月ごろに多細胞生物が出現、11月に脊椎動物が登場、12月上旬に爬虫類が、12月半ばに鳥類が誕生、12月25日に恐竜が絶滅して哺乳類が適応放散し、12月31日に類人猿と人類がようやく現れた。
人類は言葉によって文化を後世へ伝えてゆく。印刷技術は書籍という形で脳の外に情報を蓄え、さらにコンピューターが大規模にその役割を拡大していく。人類は宇宙にも進出した。写真や映像の技術もなくてはならないものである。
生命の歴史を振り返ると、人類を地球上に送り出すための準備だったと思えるかもしれないが、人類は今までに地球上に存在した生物の1種に過ぎない。人類の歴史は恐竜が存在した期間にはるかに及ばない。しかし、人類ほど大規模に地球上を支配した生物はいない。そのため、人類は地球の未来に対して大きな責任を負っているのである。