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商業界全国同友会連合会長 小松製菓社長 小松 務氏(岩手県二戸市) 平成21年5月15日(金) 福島県庁敷地内 杉妻会館 |
| 講演内容の1部を要約してお伝えしますー。 98年の長野冬季オリンピック。 「期間中、報道用として全部のタクシーをチャーターしたい。料金も高く契約する。協力してほしい」。 そんな要請が日本オリンピック委員会(JOC)からタクシー業界に舞い込んだ。 長野市内の多くのタクシー会社は歓迎した。売り上げが増えるのだから当然である。 だが「中央タクシー」では、運転手さんが強く反対した。タクシーが全部、報道用に なったらー。 「あのおばあちゃんが買い物に出られなくなる。それでいいの」 「体の不自由な、いつものお嬢さんはどうするの。町に行けなくなるんだぞ」 「長野市民の足がなくなる。わが社は絶対に駄目だ」 何時間も話し合った。でも運転手さんは首を頑として縦に振らなかった。経営者が 最終的に決断した。「2台だけはチャーターとして出すが他の数十台は一般市民の足として 残す。 儲けより市民の願い、善悪を優先した。オリンピック期間中、見知らぬ市民から電話が殺到した。 初めてのお客さんが圧倒的に多かった。運転手さんは身を粉にして、足を守った。空前にして 絶後?の忙しさだった。 世界の祭典から10年、経った。JR長野駅東口のタクシー乗り場。紙切れを手にした若い 女性が1番前で待っていた。何台、来ても乗らない。後ろに並ぶ客が痺れを切らし 次々に乗った。 中央タクシーが入って来た。女性は急いで乗り込んだ。運転手さんに紙切れを手渡した。 「中央タクシーの運転手さん、いつも本当にありがとう。私は口も耳も不自由です。○×に 行って下さい」。そう書いてあった。 長野駅東口前の大きな道路ー。小雨に中、両手に大きな荷物を抱えたおばあちゃんが タクシーを拾おうと待っていた。別のタクシーがブレーキを踏むが見向きもしない。 雨足が早まる。ビショビショになった。それでもジーと待つ。中央タクシーが目に入った。 ドドッと道路に踏み出した。 ずぶぬれの体と荷物を車内に押し込んだ。「中央タクシーさん、待っていたのよ。また 乗せてもらってありがとうね」 あの祭典での経営姿勢。お年寄り、体の不自由な市民、 弱者らの心に消しがたい感謝を焼き付けた。 心温まる、美しいシーンが今でも時々、繰り広げられている、という。 (小林富久壽) |