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「その夜のひとこま」があります。

             6月定期講演会(平成19年)

 太田綜合病院理事長 東海大名誉教授 エッセイスト 
    
       太田保世氏(郡山)

 「間違いだらけのメタボリック・シンドローム」



                「ご臨終です」。主治医の青年医師は、遺族に深々と頭を下げた。
           敗北感に襲われた。誰もいない部屋に飛び込んだ。そして悔し涙を流した。
           「どうして救えなかったのか…」

           慶應病院―。専門は呼吸循環内科学。多い時は月に3
,4回も臨終に立ち会った。
           使命感と悔しさをバネに猛勉強、厳しい研究・臨床に挑んだ。

               慶應、北大、そしてニューヨーク州立大を経て東海大医学部教授
          (呼吸器内科学)に就任した。呼吸器内科では日本の権威の1人。
           睡眠障害では全国から患者が集まる。日ソ宇宙飛行実験では医学選抜班の
           リーダーとして活躍した。日米海底医学実験でも大きな足跡を残した。
           日本呼吸器学会長に就任、学会を引っ張った。現在、名誉会員。
 

               作家の顔も輝く。今年でさえ4冊も次々に出した。メタボリック・シンドロームの
           間違いなどを指摘した「死の
6重奏から逃れる」、人生の生き方を考える
           「生死観入門」、明治政府の廃仏毀釈の謎にメスを入れた「日本の屈折点」、
           そして全国各地に伝わる民話を扱った「八百比丘尼伝説(やおびくにでんせつ)」
           である。

              「生死観入門」で死の感動的シーンを次のように紹介している。

          「ガンに侵された彼の最後は、薬物のためもあったかも知れませんが、
          意識がありませんでした。ベットサイドには奥様と
2人のお嬢様が、
          彼の手を握りながら、これまでの楽しかった日々などをずっと語り続けて
          おられました…。愛する家族が、涙をこらえながら、むしろ笑顔で彼を
          送り出している光景は荘厳ですらありました」

             5年には恋愛小説も出版している。「流謫(るたく)の波頭」だ。
          流刑地として独自の文化を築いた八丈島。異なる信仰の狭間で苦悩する
          男女の恋の行方は?と帯で
PR する。単なる恋愛物ではない。歴史、宗教を
          からめながら人間の苦悩、生き方を問う。

             東海大学教授を勇退、郡山の太田綜合病院西ノ内病院長に就任して今年で8年目。
          福島に来てから出した本は
12冊を数える。それ以前の医学書、翻訳などは
          その数知らず。歴史、宗教、哲学研究の顔ものぞく。 

          生死観入門の参考文献は7nにも及ぶ。口にはしないが膨大な読書量で
          あることが分かる。参考文献を真面目に記す誠実さも浮かぶ。海釣りが趣味。
          ジャズ評論はプロ並み。

          ソフトな口調ながら言うことは厳しく、事実を突く。
          「医師不足の原因は開業医にある」と病院協会報でも指摘する。

          庶民のために命をかけた自由民権運動の東の雄、河野広中の血を引く
70歳。                                              
                                   
                                     (小林富久壽)
 
               その夜のひとこま