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「その夜のひとこま」があります。

   5月定期講演会(平成19年)

  宗教研究家 村井幸三氏(福島)

「戒名がないとあの世には行けぬの

 か」


新人記者が原稿をデスクに手渡した。デスクは原稿をスラスラと目を通した。
「駄目だ。文章になってない」。ビリッと破り、ゴミ入れにポイと捨てた。
福島民報の報道部長をしていたころのエピソードである。



先ごろ開かれた、村井さん著の「お坊さんが困る仏教の話」の出版祝賀会で
披露された。同社の幹部だった後輩の星一男さんが発起人の挨拶で
明らかにした。記者教育の厳しさ、記者への愛のむちに驚きと感動が
会場を覆った。



娘さんへの愛情が仏教研究の一つのきっかけになった。約30年前、長女が
小樽一の名刹に嫁いだ。寺門史を書くため北海道の図書館にも足を運んだ。
福島県立図書館の仏教コーナーでは、
200冊を超える仏教史などを読破、
インド、中国の仏教も調べた。以来、
20年以上も研究に没頭している。


「お坊さんが困る仏教の話」は、大きな反響を巻き起こしている。
先月
17日―24日の週間ランキングでは渡辺淳一の「鈍感力」に次いで
全国2位に輝いた。今年
417日が初版、今月の5版までで4万冊に
迫っている。1ヶ月で5版は極めて珍しい。



この本は、平成の宗教改革を押し進める触媒になる可能性が高い。
戒名はお布施の多少で内容が決まるとのうわさもある。金満家の住職も?
葬式仏教、真心より経済優先…。仏教界への不信感は少なくない。


そんな中、「戒名はいらない」という人には「脱・戒名」を呼びかけた。
画期的
提案だった。改革の灯が点火された。読者は熱望していた。仏教界もゆれる!?


地域おこしの顔もある。岩手県では「平成の前方後円墳構想」を提示、注目された。
観光客で賑わう祭り、行事には、手間ひまを惜しまず訪れ、秘訣を調べる。


「春の花見山、秋の慈徳寺」構想で福島の活性化をと意気込む。
花見山は“桃源郷”として有名だが、秋には慈徳寺を全国的紅葉の名所にと訴える。
郷土史も詳しい。



講演依頼が相次ぐ。フットワークの良さとユニークなアイデア、記者根性が息づく。
夢を追う万年青年の
81歳。


大正14年、福島市生まれ。盛岡高等農林学校
(岩手大農学部)卒業。農林省、福島民報、
福島テレビに勤務。著書は「山のお寺の上人さま」
「日光院はじまり物語」「ドライブでゆく
信達三十三観音のみち」など。 

                                   (文責・小林富久壽)

                              その夜のひとこま