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 9月定期講演・交歓会(平成20年)


 蓬莱まちづくりコミュニティ「ぜぇね」
   代表小林悦子氏(福島市)



 「母娘の想いが走らせた無料くるくるバス」

            物価値上げが相次ぐ中、バス料金だけは6月から無料になった。
        誰でも乗れ、無料で走る。行政からの補助はゼロ。全国的にも珍しい。
        県都福島市の蓬莱団地を中心に快走する「くるくるバス」である。
        隣接する桜台団地にも延ばす。

        小林さん母娘の熱い想いから誕生した。大手バス会社は団地の幹線中心の
        運行である。お年寄りらには冷たい団地になった。自宅に閉じこもる、孤独、
        そして看取る人がいないままの永旅も…。

        やさしく、温かい団地にしたい。数年前に託老所を造った。
        今度は住民の足を支えたい!

        月53万円―。マイクロバス運行にかかる。バスの横、後ろなどに
        事業所名を書き、広告料をいただく。そのため団地内の企業、商店巡りを
        始めた。だが期待していた金融機関からは次々に断られた。
        運営する蓬莱まちづくりコミュニティ「ぜぇね」は母娘の2人だけだった。
        「実績もない。どこの馬の骨かも分からない。断られても仕方が
        ありませんでした」

        でも絶対、諦めなかった。断られても、祈るような気持ちで頭を下げ、訴えた。
        「いつかは皆、老人になります。足が心配のない住みやすい団地にしたいのです」。
         母娘の熱意は徐々に伝わった。

         停留所は50ヶ所以上もある。「中野さん家(ち)」「高橋さん家(ち)」など
         いかにもコミュニティバスにふさわしい停留所名が並ぶ。
         思いやり、ふれあい、やさしさも軒下まで運ぶ。

              民間運営ながら信じ難いような無料バス。母娘がそれに賭け、必死に生きている。
         周りの人の心を打つ。蓬莱団地の中心施設にある小奇麗な「ぜぇね」の
         停留所兼事務所―。

         朝取り野菜の袋が並ぶ。一袋
100円で20袋前後。運営資金にと年配の支援者が
         家庭菜園で取ったものを提供している。
         バッグ作りの
81歳のプロは、1個1万円以下で陳列、売上の2割を寄付している。

         緑のカエルの貯金箱「ケロケロ隊」は支援企業、商店など20ヶ所前後に置かれ、
         浄財を集めている。主婦のボランティアも相次いでいる。
         心の荒廃が進む社会。
         蓬莱団地では善意の風が吹いている。

         暗がりを下校する子供の安全を守るための運行もしたい。
         廃油を回収してジーゼル車にする。
Uターンを呼び込むために空き家を
         リフォームしたい。

         静かで上品な口調、美しい言葉、思いやり、控え目…。
         建築士の資格を持つ福島の、新しい女性の顔は挑み続ける。
                                                      
                                      
(小林富久壽)

くるくるバスである。デザインは、娘さん。            普通の昇降口の下の低い階段をご覧あれ。
支援事業所の名前が描かれている。団地の名物、      お年寄り、幼児のために特別に設置した。
人気者になりつつある。                       心遣いが光る。

「ぜぇね」の事務所兼バスの停留所でもある。清潔感が
漂う。住民のふれあいの場にもなっている。コーヒーは
100円。バスを支援する朝取り野菜、バッグなどが並ぶ。
左の木の箱には、リサイクル、再利用などの着物を
入れる。いわきのザ・ピープルに協力している。