過大と言われない役員退職金

 経営者ご自身のライフプランや会社の将来性にもよりますが、
役員に対する退職金は計画的にその支給内容や支給時期を検討し、
そのとおり実行するとかなり効率的な資産運用が可能になります。

その経営者の功績が最大限評価され、
一線を退いた後の(あるいは遺族の)生活保障が明確になり、
また大きな節税となる絶好の機会でもあります。

 一般的には役員退職金は額が大きく、一生に一度?のビッグイベントなので
無頓着いられない問題であり、多くの経営者がなんらかの対策を講じておりますが、
一番難しいのがその退職金の支給額の設定です。

その額が税務上の上限を逸脱しているのか、
限度額の範囲なのかが税務調査の論点になることがしばしばあります。

当然租税裁判にまで発展しているケースも少なくありません。
原因はその上限が法律上はっきりしていないからです
(はっきりさせるのは困難ですが)。


 (過大な役員退職給与の損金不算入)
法人税法第三十六条  
 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給する退職給与の額のうち、
当該事業年度において損金経理をしなかつた金額及び損金経理をした金額で
不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、
その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

政令で定める金額  
 政令で定める金額は、内国法人が各事業年度において
その退職した使用人に対して支給した退職給与の額が、
当該使用人の(1)その内国法人の業務に従事した期間、
(2)その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人で
その事業規模が類似するものの使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし、
その退職した使用人に対する退職給与として相当であると
認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額とする。



 実務上はこの「相当であると認められる金額」を次の算式で計算します。

 適正な退職金=最終報酬月額×在任年数×功績倍率

 この算式は、最終報酬月額
(何らかの事情で退職直前に減額した場合は
元の高い報酬月額を用いて構わないと思われます)
と功績倍率で会社の事業規模や退職者の地位や事情を表し、
在任年数で従事期間を表しているものと思われます。

この算式の発案は保険会社と思われます。
保険会社が役員の保険金額の設定をするときに用いています。

「思われます」というはっきりしない表現が多いのは、
この算式に法的根拠があまりないからです。
しかし、いまでは租税裁判にも用いられています。

 この算式のうち最終報酬月額と在任年数は
客観性があるので揉める原因になりません。

問題は功績倍率です。
結局この功績倍率のさじ加減ひとつで
役員退職金の上限が2倍になったり3倍になったりするので
(しかも役員退職金は金額が大きいので)、
もめると租税裁判に発展します。

 この論点について通目すべき判例があります。


(札幌地裁 判決日 平11.12.10 判決番号 平8第20 )。

 税務当局は、役員退職給与の適正額算出にあたって、
平均功績倍率法、最高功績倍率法、平均額法の3つを用いていますが、
司法はこのうち適正に算出された平均功績倍率を用いる限り、
その判断方法は客観的かつ合理的であり、
比較法人の退職給与がすべて適正な額の範囲内であるならば
最高功績倍率を用いるしかないとの見解を示しています。

 適正な平均功績倍率を算出するには、
業種、事業規模、退職役員の地位、退職の事情が類似する法人を
サンプルとして抽出しなければならないのですが、
そのサンプル法人の抽出に当たっては、
申告所得、資本金額を軽視することは出来ませんが、
その法人の事業規模の実態をより直接把握できる基準として、
売上金額、総資産価額、純資産価額を重視すべきと判断しました。

つまり、役員退職金の金額について否認されたくなければ、
同業他社のうち売上、総資産、純資産が類似している会社の
功績倍率を調べてその平均額を上限としなければならないということです。


  実際的に同業他社はライバル企業であり、
ライバル企業の財政状態や功績倍率など調べられるものなのか疑問は残りますが、
先ほど述べたように法律上そうなっているので、
司法はそのように判断せざるをえない状況にあるのも事実です。

また、平均値を上限とすると本来は損金不算入であるものが
訴追を受けていない事案が半数弱にのぼりことになり、不合理な気がします。

かといって税法が役員退職金を決めて会社経営に口を挟めるわけもありません。
この判決は仕方のない終結点なのでしょう。

 ちなみに、この裁判では税務当局が算出した功績倍率は3.9、司法は3.0、
原告は8.3でした。やはり3.0を上限と見るのが適切のようですが、
税務当局が3.9を打ち出したことも注目すべきです。

実務界では勝手に3.0神話を作り上げてしまいました
(社長は3.0、専務は2.5、常務は2.0、取締役は1、など)
が、税務当局は一応会社個別の問題として考えているようです

(2005.10)

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