ニューヨーク レコーディング レポート

200411月、僕のセカンドアルバム制作のため、ニューヨークへ行ってきました。今回のレコーディングは、偉大なるギタリスト:ウェス・モンゴメリーと深く関わり合いのある二人、メルビン・ラインとグラディ・テイトとの共演作品です。
メルビンはウェストリオで大活躍したオルガン奏者。ウェス代表作の1つである "BOSS GUITAR"(1962) をはじめ、多くのレコーディングに参加しています。
グラディは1964年頃からウェスのほとんど全てのレコーディングに参加。多くのレコーディングセッションで活躍するドラマーです。
ほぼ同時期にウェスと数多く共演していますが、実はこの二人が共演するのは今回が初めてなんだそうです。
この素晴らしいレコーディングセッションの模様を紹介したいと思います。

最後まで読んでくださいね。

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初冬のニューヨークは、すでに吐く息が白かったが、ニューヨーカー達はもこもこのコートを着込んで平気でニコニコ歩いている。防寒を甘く見ていた僕らはブルブル震えながら、「ちょっとその辺歩いてみようか」…という気にもなれずにホテル隣のレストランへ非難し、腹ごしらえ。…全てがデカかった!

レコーディングの準備は万全のつもりだが、やはり直前までジタバタしてしまう。受験生と同じ心境ですかね。レコーディング前夜、オルガンのメルビン・ラインが泊まっているホテルに電話したが不在。留守電に「明日はよろしく」と録音しておいたが、ちょっと不安。このレコーディングの為にインディアナポリスから上京(?)しているハズだが…

時差ボケの影響なく夜はぐっすり眠れ、爽やかな初日の朝を迎えた。8時には朝食を済ませ、最後にもうひとジタバタ。さあ!覚悟を決めていざスタジオへ!
日本からギターとアンプを持っていったので、いつも通り楽器を抱えてよいしょよいしょ。車ではなく地下鉄で移動したのでちょっとしんどかったが、やはりいつも通りが良い。

CHUNG KING STUDIOS ,New York 目が点 (・_・; になる程立派なスタジオだ。が、ビビッてる場合じゃない。早速セッティングして音や雰囲気に慣れないと。準備をしている間に巨匠グラディ・テイト登場!ほ、本物だ!二言三言声を掛けてくれたが、舞上がっていて覚えていない。と言うか聞取れなかった?

さて、早速、問題発生。ドラムセットの調子が良くない。悪く言うとガタガタ。「どんなセットでも大丈夫だ」と言うグラディさん、持ってきたのはシンバルだけだ。しばらくガムテープで苦戦していたが、「よし、これでいい。このセットでやる」と言い出した。頑固だ。どうみてもガタガタのそれは、とてもレコーディングに相応しいとは思えず、スタッフはじめ皆で説得し、別のセットが準備された。エンジニアの友達のドラマーがわざわざ持って来てくれたのだ。ご協力に感謝!一時はどうなる事かとハラハラしたが、ホッとしたお陰で余計な緊張も消えリラックスできた。

グラディ苦戦中にメルビン・ライン登場!こっちはこっちで、昨日連絡取れず、今朝ホテルに迎えに行ったエンジニアのサナダさんから、「メルビンが部屋に居ない」という電話で一騒動あった。どうなってるんだ全く、、という事も忘れ、本物のメルビンに感激!オルガンの調子も良く、ご機嫌だ。 さあ!役者が揃った。あとは落ち着いて、いつも通りプレイすればいい。

まず、最初に感じたことは、「楽しい!」 とにかくやり易い。今まで経験してきた音楽とは明らかに次元が違う。 彼らは百戦錬磨、全てを知り尽くし、僕がやりたい事も瞬時に察していい雰囲気を作ってくれる。余計な気遣いは不要だ。 なんだ、この感触は!僕が何を言おうと何を弾こうと、全てを受け入れ、極上のサウンドに導いてくれるこの包容力。グラディのスピード感溢れる鮮やかなドラミングと、メルビンのグルーヴィーかつ暖かいオルガンサウンドに包まれて、、多分、天国に連れて行かれるとこんな感じなんだろう。 あまりの気持ち良さに、レコーディングということを忘れる瞬間が多々あった。

二人の巨匠と一人の新鋭(…新米? …ガリ勉??)が真剣に一つの音楽に向き合っている。 それをずっと見守っていてくれた What's New Records の佐藤さんはじめスタッフの皆さん。とても心強かった。 たくさんの方々のご協力でレコーディング大成功でした。本当にありがとうございました。

レコーディングから数ヶ月後、あの日の出来事を思い出していると、重大な事に気が付いた。それは、
「土俵の大きさ」
メルビンとグラディの、あまりに大きい土俵で、迷ってしまいそうになる。 こっちは六畳一間に慣れてる。宴会場のような広い部屋を「ご自由にどうぞ」なんていわれても…
ド真中にデーン!と腰を落ち着けようと頑張るが、小心者の僕は、ふとした拍子に隅っこに戻り辺りを観察してしまう。

レコーディング中、終始「楽しい!」というわけには、いかない。 グラディが無言で「ジーッッ」とこっちを見ている。まるで僕の心の中を底まで見透かしているようだ。
「余計な事考えずに、ド真ん中で勝負しろ!」誰かが後ろから言った。…気がした。どこの監督だろう?
「お、そうだったそうだった…」深呼吸して気を取り直した。よく集中力がもったもんだ。これには我ながら感心。そりゃそうさ、せっかくの大チャンスを無駄にしてなるものか!

今、改めて音を聴くと、記憶が鮮明に甦る。このアルバムに、僕が至福を感じた時間がしっかり刻まれている。
たっぷり想像を膨らませて、4月20日発売日をお迎えください。

MOVEMENT
Yoshitaka Kanno / guitar
Melvin Rhyne / organ
Grady Tate / drums
ALL THE THINGS YOU ARE / COTTONTAIL / I'M A FOOL TO WANT YOU
他全10曲