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医療不信とその予防について
(1998年3月 日本医師会 医療安全対策委員会答申)
わが国の医療は、戦後50余年を経て未曾有の発展を遂げ、
質・量ともに世界有数のレベルを誇るまでに至った
国民皆保険の達成や平均寿命の伸長は、わが国の医療制度が国民の生命を守り、
健康を増進してきた事実を物語る優れた点といってよい
しかし、その一方で、医療事故や医事紛争、薬害事件などに代表される、
医療にまつわる負の要素が拡大しつつあることにも目を向けなくてはならない
3、研鑽……医療水準に則った治療をできれば、結果責任は問われない
3.医療訴訟
医療安全推進総合対策[1]……国の政策
10.終わりに
1980年代末からわが国では、医療不信・事故の相談や、「患者中心の医療」実現を目的に活動する団体が全国で次々と旗揚げされ、患者の権利の法制化をも主張してきた。世界的にも、世界医師会総会が「安全な医療への取組」を各国医師会に求める宣言を出したり、WHOが「患者の権利の促進に関する宣言」を出すなど、時代は「患者中心の医療」を目指した流れの真中にある。このような時勢の中、わが国の行政は2001年度から本格的に医療安全対策に取り組み始め、2002年8月に厚生労働省は、「医療提供体制の改革の基本的方向」として、三つの柱となる方向を示した[2]:
(1)患者の視点の尊重
I 医療に関する情報提供の推進
II 安全で、安心できる医療の再構築
(2)質が高く効率的な医療の提供
III 質の高い効率的な医療提供体制の構築
IV 医療を担う人材の確保・資質の向上
(3)医療の基盤整備
V 生命の世紀の医療を支える基盤の整備
改革自体は「患者本位の医療提供体制を確立するため」とされる。
このように医療行政が大きく変わりつつある中、本レポートは、医療不信の現状を分析し、問題点を把握し、解決策をまとめようと試みたものである。
国立大学医学部附属病院長会議も、「医療はいかなる場合においても,患者を中心にしたものでなければならない」[3]と断言する。医療事故防止に向けた公私における国をあげての対策も真剣である[4]。厚生労働省は医療機関に、「職員の意識向上や組織的な取組について要請」してきた。しかしそれにもかかわらず、「国民の医療に対する不安を払拭するには至っていない」[5]のみならず、現実社会ではむしろ医療不信は高まってきているように思われる。
医療事故の多発も医療不信の増長に拍車をかける[6]。医療事故の一因に「患者の権利の軽視」がある、との専門家による冗談でない指摘[7]まで見られる。医療事故を大きく扱うことで、マスコミが医療不信を不用意に煽って世論誘導している[8]、との考え方もあるが、それは同時に「医療側も、これまで充分に自らの情報を開示し、公の場で議論することを怠ってきた」[9]ことの裏返しでもある。
海の向こうのイギリスでは、「少なくとも日本に比べて医療過誤の報道の頻度と量が非常に多く」、「民放TVドラマの題材にもなっている」[10]のである。英国との単純比較はできないが、今後日本でもさらに医療過誤報道がさらに増えても不思議ではないし、今以上に医療不信が膨れることも十分ありうる。このような状況下、医療不信の因をマスコミに求めるのは、建設的でないと思う。実際、患者が医療者に安全な医療を求めるからこそ、現在のような行政・医療者の「安全な医療への取組」が見られる。声なきところに改善はない。
あるベテラン医師[11]は「他業種との人たちとの集まりで、医師の肩書きの名刺を相手に渡すと、ふふん、という軽蔑した眼差しで見られる」と述べる。これは、自分の病状を左右できる主治医に対しては礼を尽くそうとするが、患者対医師という関係にない医師に対する、医療不信とリンクした社会評価の一つともとれるかもしれない。このような現状は、医師の社会的立場を不利・不便にする可能性が十分ある。医療職に限らず、自らの社会評価を高めることは、目標としてふさわしいと見なすべきである。
まず医師にとって、どのような医療行為なら法的に妥当なのかを確認する。法的に正当なら十分ということではなく、最低限のモラルとしてわきまえておかねばならない。もちろん、法的に正当なら医療不信は防げるということでは決してない。
多くの参考書は、法体系を基本として演繹的に「正当な医療行為」を論じるが、これは医師にとって必ずしも実際的ではないと考える。医師が現場の現実に即した形で、これから医師になろうとする私達学生が、「最低限のモラル」=「法的に正当な医療行為」を、頭に入りやすく簡潔に整理しなおすことは有意義だと思われた。
そこで、以下に整理しなおす:
医師の治療が正当な医療行為となるための必要条件[12]は、
1、患者の同意 2、誠実 3、研鑽
の3つである。
患者の同意とは、医療者の十分な説明を患者が理解した上で、患者が医療者に与える承諾のことである。これは患者の自己決定権を尊重することである。
エホバの証人による輸血拒否事例[13]は、患者の宗教的信念に基づく自己決定権を尊重した具体例である。また患者の合意を得なければ検査を敢行できない[14]ことも当然の帰結である。
これによって、正当な医療行為を行うには、医師には「説明義務」が課される。
医療契約論とともに昭和40年代にはいってからやっと論じられ、昭和40年代後半に関係判例が出始め、昭和50・60年代にようやく定着した、比較的新しい概念である。
説明義務とは、「一般に、医師は、診療又は治療のため、患者に対して…悪しき結果ないし…重大な結果の発生が予測される場合に…その患者ないしはその家族に対し、患者の病状、治療方法の内容及び必要性、発生の予測される危険などにつき、当時の医療水準に照らして相当と思料される事項を説明し」[15]なければならない義務のことである。
これは患者の自己決定権の保障の一要件を、医師の義務として表わしたものである[16]。
「非常に稀にしか起こらない副作用であっても、その副作用の結果が重大であれば、具体的に説明指導すべきであり、『何かあればいらっしゃい』といったような一般的注意だけでは不十分」[17]である、として、医療者の患者に対する相当細かい説明が求められている。
医師の説明を常に要求すると、診療そのものが成り立たなくなることもあり、この場合は説明不要として一般に認められている。
まず、癌の手術などのように当該治療行為の必要性が高く、しかも緊急性が高く時間的余裕がない場合は医師の説明が不要な場合がある。
「急迫の危害を免れしむる」ための「緊急事務管理」[18]として救急医療は認められ、説明不要であるが、管理者である医師は「遅滞なく」管理(治療)を始めたことを本人(家族)に知らせねばならない[19]。
また、医師は患者に「あらゆる事態を想定してあらゆる事柄について事前に説明を施し、その全てについて承諾を得なければならないものとは言えない」[20]。例えば患者の同意を得た術中等で新たな緊急事態が生じたときは、侵襲が軽微なものに限って説明不要とされる[21]。
しかしこのような例外的事由のない場合は、説明義務は必要とされる[22]。
患者の自己決定権は、医師による十分な説明が前提とされる。特に当該治療行為に必要性・緊急性が乏しい場合は、患者の自己決定権は具体的に十分保障されねばならない。不妊手術(卵管結さく術)[23]、美容整形手術[24]などである。
後者では、「当該手術の要否及び適否を慎重に判断し、また、手術を実施するに当たっては、当該患者の体質、患部の状態などについて十分なる事前の検査を行い、医師としての高度の専門的見地から、当該手術の時期、方法、程度、範囲等を十分に検討して、手術を実施するべき義務があるというべく、さらに手術を実施する際も、術後の状態にも十分慎重な配慮をしながら事後の手術の進行、治療方法等を選択するべき義務がある」と指摘する。
また美容目的の手術の場合、「手術の必要性や緊急性に乏しい上、その目的が整容ということから、手術の担当医師に対しては、手術の実施に当たって、手術の方法や内容、手術の結果における成功の度合い、副作用の有無などのみならず、通常の手術の場合以上に手術の美容的結果、中でも手術による傷跡の有無やその予想される状況について十分に説明し、それにより、患者がその手術を応諾するか否かを自ら決定するに足りるだけの資料を提供する義務が当然負わされている」[25]という。
患者の同意のない医療行為は「専断的治療行為」として不法行為をなす[26]。
従って、医療水準に則っているが説明義務が尽くされずに行われた手術は「専断的治療行為」とされ、「担当医らが説明義務を尽くしておれば、患者が本件手術を受けなかった可能性が高く…担当医らは原告に生じたすべての損害を賠償する責任がある」[27]とされる。つまり、説明なく行った医行為は医師に結果責任までを負わせる。逆に、尽くされた説明があれば、医師は「妥当な医行為」をすれば責任を果たせる。
有名な例では、産婦人科病院における患者の同意のないままの子宮等の摘出が「専断的治療行為」とされ、治療費・慰謝料を含む損害請求がほぼ満額認められている[28]。
また「東大医科研中性子照射事件」では、中性子線照射が試行段階だったとして原告の過失相殺を一切認めず、1億4000万円の損害賠償を認めている[29]。この治療は人体実験的性格が強く、担当医師によるデータ集めとしての要素がうかがわれる[30]という。しかし、医療行為の一環として幅広い裁量権が認められる医療分野においては、専断的治療行為と先端医療の限界は難しい。
医療者が十分な説明を尽くしても患者の同意を得られない場合がある。この場合、医師が診療を拒否しても応需義務[31]違反とはならず、その結果発生した損害の責任を医師は問われることはない[32]。
患者の同意を得るために医師には説明義務が生じる。説明相手・説明時期・内容・程度については、判例では歯切れが悪い。それらは(治療に影響を与える場合)病状に応じて医師が判断するのが適切で、患者の自己決定権を侵害しない限度において、医師の裁量の範囲内にある[33]、とされる。
そして「説明の程度・方法については、具体的な病状、患者に与える影響の重大性、患者の知識・性格等を考慮した医師の合理的裁量に委ねざるを得ない部分が多い」[34]ばかりでなく、「最終的には…医師の…合理的裁量は尊重されなければならない」[35]。これは最高裁判例[36]に依拠した考え方である。
このように、患者の自己決定権は侵害されるべきではないし、同時に医師の合理的裁量も尊重されねばならない。一般論として線引きをすることは困難である。合理的裁量から逸脱していないかどうかは、「社会全体の意識」から個々の事例を判断する[37]ものとされる。特に、当該医療行為に学問上の疑義が認められる「非定型的医療行為」の場合は、医師の合理的裁量はあまり拡大されるべきではないとされる。
「医師と患者の医療契約の内容には、医師は緻密で真摯かつ誠実な医療を行う義務が内包」されている[38]から、「診療契約を締結した医療機関としては、患者のために誠実に最善の治療にあたるように努める義務を負う」[39]。そしてこの義務に反する作為・不作為は、延命利益の侵害、期待権の侵害に伴う慰謝料の問題となる。
そもそも、「たとえ重篤な状況にあって、いずれ死を免れないことが判っていたとしても、その生命の維持又は延命に向けて真摯な治療を続けるのが一般的であるし、またそうすべき」[40]である。
さらに「医師が…粗雑・杜撰で不誠実な医療をした時は、医師のその作為・不作為と、対象たる病患について生じた結果との間に相当因果関係が認められなくても、医師はその不誠実な医療対応自体につき、これによって患者側に与えた精神的苦痛の慰謝に任ずる責がある」[41]。その時点における医療水準を超えた治療であっても、医師としての認識経験を有する場合、受診を希望する患者に「異常なし」と説明したことに対しては医師は有責と判断される。
医師法第19条による。「正当な事由」がなければ医師は診療を拒否できない。これは医業の独占を対価とする、医師の公法上の(国家に対する)義務である。
強制的退院に際し、このことが問題になる。そもそも入院における診療契約は「病院において治療の目的を離れて患者の生活全般に関して保護的措置を講ずべき債務を負う関係にあるとはとうてい解し難い」[42]のであり、病院が入院を継続すべき債務を負う場合とは、「単に入院治療を継続する方が望ましいというのではなく、社会的条件等をも併せ考えると、退院させた場合には適切な診療行為を受けることができなくなり、その結果、その病状を悪化させることが明らかであるかその危険性の大きいことが予見される場合に限られる」[43]。
手術の結果について一切の異議をを述べない旨の誓約書は、公序良俗違反によって無効であることが確定[44]している。今日では患者の承諾は当然と考えられており、個々の承諾の範囲のみが問題となっている。
診療は契約である以上、契約の解消(つまり、転医治療)も保障されねばならない。従って、転医治療の妨害は診療契約上の義務違反となる[45]。
医療者は真摯であることが求められており、注意義務がしばしば問題となる。特に、検査結果や症状を軽視・無視した場合には、医師の注意義務違反が厳しく問われる。
集団的な定期検診で結核が看過された事例では、医療機関の責任はないとされた[46]。これは集団検診の大量処理の現状があるためである。
しかし人間ドックは集団検診とは異なる。人間ドックは健康管理に高い関心を有する者が自発的に受診するため、「受診者は少しでも異常を疑わせる徴候が存在する場合にはその告知を受け、精密検査を受診することを希望しているのが通常であるから、実施医療機関は、異常を疑わせる兆候があればすべてこれを被検者に告知し、診断が確定できない場合には精密検査あるいは再検査を受けて診断を確定するよう促す高度の注意義務を有する」[47]。
ある例では、人間ドックで癌の疑いのある病変を認めて精密検査が必要と診断したが、被検者にその旨の告知をせず、適切な専門医療機関に受診するよう説明指導しなかった医師に対し、医師の注意義務違反とされた[48]。また別の例[49]では、便潜血反応で陽性の反応が出たにもかかわらず、再検査などの受診を促さなかったことにつき、患者の期待権を侵害したとして慰謝料請求が認められた。
また症状を軽視した場合も医師の注意義務違反が厳しく問われる。S状結腸癌の切除術後に縫合不全発生を疑わせる症状が存在したにもかかわらず、それを確認する造影検査等をしないまま、経口摂取を開始した過失と死亡との間には因果関係が認められた[50]。
また必要な検査を怠った場合も、医師の注意義務違反となる。胃潰瘍との診断の下に胃切除手術を行った医師は、胃癌を疑わず切除胃の病理組織検査を行わなかったことに対し、患者の治癒の可能性を奪ったとされ、慰謝料を認めた[51]。
患者が主治医の治療を中止した場合、通常は診療契約の放棄と考えられ、「患者が何故に受診を止めたのかをつきとめ、患者が適切な治療を続けているかどうかを確認し、適切な助言をして、病状の悪化を防止すべき注意義務」は一般的には存在しないと考えられる。この点は、最高裁判例[52]において確認されている。
ただし治験的要素の強い診療行為の事例では、後のフォローが重要であって、上述の注意義務はあったとされた[53]。
癌の不告知を問われた事案では、「原則として患者の権利を侵害しない限度において、医師の裁量の範囲内にあるというべく、特に不治ないし難治疾患については、患者に与える精神的打撃を配慮する慎重さが望まれる」とし、癌の疑いを告知しなかったことにつき、診療契約上の債務不履行責任を負う事はないとした[54]。
ただし不告知については、「積極的には近親者との連絡を試みなかった」として、医師側に慰謝料の支払いを認めた判例[55]もある。
「医師は患者に現代の医療水準による適切な診療を施さなければならないという職業上の義務を遂行できるよう研鑽を怠ってはならない」[56]。絶えず研鑽し、新しい治療法についてもその知識を得る努力をすることは、義務と解されている[57]。またこれは医師法により医業の独占が認められている[58]ことの反対解釈として当然のことと考えられている。
従って、医師の行った医行為が医学的に承認された方法でなかったり、その時点での医療水準に達したものでなければ、その医行為は「妥当性を欠く」とされ[59]、医師の研鑽義務違反として医師は法的責任を問われる。これを一般に医療事故または医療過誤と呼ぶ。
なお、医療水準との関係においてどこまでを法的責任の対象とするかにつき、意見の一致はないが、「当該医療機関の性格・所在地域の医療環境の特性などの諸般の事情を考慮すべきであり、すべての医療機関に一律に解するのは相当でない」[60]とされる。
法的には診療契約によって医師の側に診療債務が発生する。診療契約は通説として「準委任契約」と位置づけられ、それが「患者の身体の安全を保障する結果債務」なのか、「医師として最善を尽くすべき手段債務」なのかが以前争われた。そして結局、「治癒の結果それ自体は債務の目的をなさ」ないとして、診療債務が手段債務であることが明確にされた[61]。そもそも「医療契約の目的は医療行為そのものを行うことであって、その『成功』という結果の実現を約束するものではない」[62]し、「結果回避義務までも含むものではない」[63]。従って、その時点での医療水準に沿って行われた妥当な医行為の結果が仮に思わしくなくとも、それは医療過誤ではない。
しかし、要求される「医療水準」は必ずしも平均的医師が行う「医療慣行」と一致しない。医薬品の能書記載の注意事項と、現場の慣行が異なった「腰椎麻酔ショック事件」の場合、現場の慣行に従うことが「注意義務違反」として医師の過失が最高裁によって認容された[64]。従って医師は、誤った医療慣行には免責は与えられないことを胸に刻んで治療にあたらねばならない。
損害賠償事件となる医療過誤訴訟は、通常、民法415条の「債務不履行責任」と民法709条「不法行為責任」の2つを根拠とする。ここでの損害賠償責任は、「医療者側に過失があり」かつ「その過失と結果(患者の死亡・後遺障害など)の間に因果関係がある」場合にのみ認められる。
しかし最近はその因果関係を立証できない場合に、「期待権の侵害」「延命利益の侵害」を理由に慰謝料支払いを命じる判例も出ている。エホバの証人の輸血事件では、患者の「人格権の侵害」と最高裁は判断した。
医療不信のほんのわずかしか占めないが、「医療訴訟」は着実に増加している。全国の地裁・簡裁で新たに提訴された医療訴訟は、2000年1年間で767件。1999年の提訴件数638件から129件増え、過去最高となった。1990年の352件から10年で倍以上の数字に増えたことになる[65]。これは、1976−1980年の年平均の245件と比べると、長期にわたる上昇傾向を示す。大手損害保険会社の「医師賠償保険」における損害率[66]の上昇[67]も、このことを裏付ける。この傾向は、米国の消費者運動に影響を受けた1995年7月のPL法施行に象徴される消費者意識の高まりと連動しているとする指摘もある。


近年は、一審・二審で医療者が勝訴したが、最高裁で原告が逆転勝訴した例が何件もある。そして原告の勝訴率(認容率)もここ10年間は上昇傾向にあると見ることができなくもなく、5割に達しようとしている[68]が、通常訴訟における認容率(8割弱)をはるかに下回る。さらに、民間の医師らによる鑑定結果での「過誤率73.8%」[69]との数字とのギャップも気になる。原告の勝訴率の低さは、原告にとって、過失立証のための「三つの壁」があるためとも言われる[70]。
また、従来は病院・医院の開設者に対する訴訟がほとんどだった。しかし「最近は担当した勤務医も訴えられる時代になっている」[71]と、東京都医師会の顧問弁護士[72]はいう。
2000年に訴訟に至った事例の診療科目別の割合は次図の通りである。

次の図に80年代と2000年の違いを示すが、産婦人科領域での新受件の割合が減少している。新生児の死亡率の減少と連動しているのかもしれない。

「80年代A」「80年代B」は、80年代の異なる調査を示す[73]

しかし、「費用がかかる。時間がかかる。不公平。」[74]と久能恒子医師[75]は医療裁判の問題点を指摘する。「不公平というのは専門性、密室性、同業の庇い合いなど」[76]である。
医療界の閉鎖性・かばい合い体質によって医療訴訟が公平さを欠き、医療不信がさらに増幅されることがある。これについて岩岡秀明医師[77]は次のように述べ、新たな提言をする:
近年、医療事故訴訟は急増していますが、患者側の訴えを受ける弁護士、判断をくだす裁判官ともに医療に関しては素人であり、裁判官が上記を踏まえた上で正しい判決をくだすには、専門家(医師)の適切な助言、意見が重要な要素になります。
当該分野の専門医が、裁判所または原告の求めに応じて医学的な意見を記載したものが「鑑定書」、「意見書」と呼ばれています。
しかし、実際にいくつかの鑑定書、意見書を読むと、なかには被告(医師)を不当に擁護しているものも見受けられます。 これは医療界の閉鎖性・かばい合いの体質、また、現状では裁判公開の原則とは言っても、鑑定書、意見書は実質的には当事者以外の目には触れないことに起因します。 更に裁判所からの鑑定医依頼に対してなかなか引き受け手が決まらず、鑑定医が決まるまでに1年もかかる場合もあります。
これは多忙な臨床医が大変な労力を要する鑑定を引き受けるメリットを感じないことによります。
そこで、このような問題点を解決するために、私は以下の三点を提言したいと思います。
1 鑑定書の作成に対しても通常の医学論文に準じた評価を与える。
2 鑑定書は広く関連学会の医師に公開する。
3 鑑定医は大学教授等の権威者に限らず、広く中核病院の臨床医からも選任する。
本来、医療の中で起こった問題・事故に関しては、医療界が責任を持って解決すべきだと思います。 裁判に至った事例に対して鑑定医として真摯に対応することは、医療者としての本来的責務ではないでしょうか?
公平な訴訟を実現することは、医療不信払拭の要件の一つである。
医療訴訟は時間がかかる。第一審に10年以上かかる[78]ことさえ稀ではない。2003年6月26日に福岡地裁小倉支部が判決を出した事例では、第一審に11年が費やされた。最近は裁判所は審理期間短縮に努めており、実際に短縮しつつある。2年以内に第一審を終えるようにする法案[79]も2003年の国会に提出された。
しかし一方では控訴率は上昇傾向らしく[80]、確定判決に至るまでの期間が短縮しているかどうかは疑問である。
これは、患者が医療紛争を訴訟に持ち込む障壁となっている。
医療に関する電話相談の傾向を見る限り、医療不信を感じる人のうち、弁護士に相談を持ちこむ人は、ごく一部だと思われる。さらにその中で、「実際に訴訟に至るのは1〜2割に過ぎない」[81]。長い審理期間、訴訟を好まぬ国民性など種々の理由であろう。
つまり、医療訴訟という形で現れる医療不信は、氷山の一角に過ぎない。表に出てこない大きな部分を知らぬままでは、不信の防止はできない。
この「表に出てこない大きな部分」を知るため、本レポートでは、医療についての苦情相談窓口である次の3つの民間団体に寄せられた医療の苦情相談とその統計資料を用いて考察した:
1、NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(大阪) ……以下、「COML」と略
2、ティーペック株式会社(東京) ……以下、「T-PEC」と略
3、NPO患者の権利オンブズマン(福岡) ……以下、「オンブズマン」と略
特に、以下で用いた「COML」による統計資料は、同団体の発行する「会報誌COML」によった。
「T-PEC」による統計資料は、全ての診療科目(全相談)を対象に2002年11月に全国から「T-PEC」に寄せられた1ヶ月間の医療不信・不満に関する相談411件についてのものである。「T-PEC」に寄せられた1ヶ月間の電話相談総数は75,218件であり、そのうちの医療不信・不満に関する相談が411件であった(相談全体に占める割合0.5%)。
「オンブズマン」による統計資料は、同社公開のホームページ(http://www.patient-rights.or.jp/)中の「相談支援データ」によった。
「医療不信」とは何であろうか。その内容の分類法は、「COML」「T-PEC」「オンブズマン」で異なるので単純比較はできないものの、医療不信の異なる側面が浮き彫りになる。
最初に、T-PECへの電話相談における不信・不満の種別の分類を示す(T-PECへの全相談411例中、医療不信や不満の種別が明確な事例を抽出)。

薬に関する相談が最も多い。長期服用への不安やずっと飲んでいるのに良くならない、抗生物質の使い方に疑問を感じる(耐性を心配する患者もいる)、医師により薬を飲むように指示されたり別の医師には必要ないといわれるなどの相談内容である。
また、各項目とも共通して多いのが、医師や診療科目によって判断が異なる、前回の説明と内容が違う、別の医師から受けた治療や処置を否定されるなどである。
これは、薬・治療に関するものが多い点で、次に示す「オンブズマン」での分析とほぼ同じ傾向を示すが、「オンブズマン」分析では手術についての不審が目立つ一方、検査についての不審は少ない。分類基準が異なるであろうから一概には違う傾向とは言えないが、処方を含む治療についての不審が多い点では一致する。

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|
99.7〜00.3 |
00.4〜01.3 |
01.4〜02.3 |
累 計 |
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|
1、 |
治療(薬の処方を含む)等への不審(説明不足を含む) |
151 |
181 |
113 |
445 |
|
2、 |
手術等への不審(説明不足を含む) |
86 |
69 |
38 |
193 |
|
3、 |
死亡原因への不審(説明不足を含む) |
35 |
27 |
26 |
88 |
|
4、 |
診断等への不審(説明不足を含む) |
26 |
20 |
19 |
65 |
|
5、 |
検査等への不審(説明不足を含む) |
29 |
16 |
18 |
63 |
|
6、 |
院内感染の疑い及び患者・施設の安全管理への不審 |
14 |
9 |
4 |
27 |
|
7、 |
看護等への不審(説明不足を含む) |
15 |
2 |
1 |
18 |
|
8、 |
医療記録の取り扱いに対する不満(非開示を含む) |
ー |
30 |
24 |
54 |
|
9、 |
患者対応・接遇ヘの不満 |
15 |
63 |
41 |
119 |
|
10、 |
治療費についての不満(支払困難を含む) |
18 |
18 |
5 |
41 |
|
11、 |
補償請求(治療の継続・治療費の返還を含む) |
43 |
39 |
21 |
103 |
|
12、 |
医療過誤事件処理についての不満 |
15 |
4 |
7 |
26 |
|
13、 |
介護内容、介護保険にかかわる不満 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
14、 |
保健・医療・福祉行政への不満(救急体制を含む) |
6 |
3 |
1 |
10 |
|
15、 |
その他(趣旨違いを含む) |
74 |
65 |
26 |
165 |
|
|
合 計 |
527 |
546 |
344 |
1417 |
|
|
うち、さらに面談予約をした相談件数 |
186 |
162 |
104 |
452 |
なお、COMLでは「ドクターの説明不足」を分類項目の一に挙げており、相談全体の20%近くに達し(次図)、「T-PEC」「オンブズマン」での分類法の各項目においても「医師の説明不足」が相当な割合を占めることが推測される。

また電話上で「訴訟したい」と言ってきても、弁護士依頼に始まる手続きや予想される訴訟費用を相談員が教えると、訴える気をなくす相談者が大半であったため、上図での「法的解決」の中で訴訟に発展したケースはごく一部だと推測される。
以下、具体的な相談事例を紹介する(プライバシー保護のため内容の一部を変更)。
|
診断 |
初めにかかった医師には「ひびがはいっている」との診断でギプスをして安静にと言われた。しかし3週間たっても痛みがひかずになかなか良くならないので心配になりもう1軒受診した。そこでは「骨には異常ない」との診断で、すぐにギプスをとってどんどん動かすように言われた。どうして医師によって正反対の事を言うのか?急に動かせと言われても痛くて動かせない。 |
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たいしたことはないから様子見るようにと複数の病院で言われたが、病名を聞いてもわからないとつれない返事。 |
|
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薬 |
以前風邪をひいたときに「抗生物質は風邪には効かない」と言われて処方してくれなかった。今日同じような風邪をひき、別のクリニックで抗生物質を処方された。風邪には効かないのになぜ処方されたのか? |
|
祖母は全然ボケていないのに痴呆の薬など10種類も処方されていた。祖母は「栄養剤みたいなもの」と言われて1年前からずっと飲み続けているらしい。医師に直接問いただすべきか? |
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検査 |
診察を受けたときに「血液検査をして欲しい」といったら急に不機嫌になり「そんな事は患者が決める事ではない」といって検査してくれなかった。 |
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ものもらいができて眼科へ行ったら、視力検査や眼圧検査、眼底検査をされた。しかも結果説明もなく「ものもらいですね、薬出しておきます」と言われて返された。ものもらいでこんなに検査が必要なのか?会計も高かった。 |
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治療 |
椎間板ヘルニアで足の痛みとしびれがあり、接骨院で2ヶ月治療を受けているが良くならない。ちゃんと整形外科で治療を受けたほうがいいのか?整形外科の医師は非常に横柄で通院を止めてしまったという経緯がある。接骨院の先生はすごく優しく丁寧なので本当は接骨院のほうがいいのだが。 |
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癌の治療で、「最後に苦しまないように」という理由で保険が利かない薬を強く勧められたが、そういう薬はあるのか?信頼してもいいものか? |
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手術 |
お腹の手術を受けたが術中「悪性」の可能性もあるとの理由で術式が変更になり、5時間を要した。また「多少血管を傷つけた」との理由で4gの輸血をされたが、これは医療ミスではないのか?どこに相談したらいいのか? |
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処置 |
外傷で縫合してその後処置に通院しているが全然医者は見てくれずに、いつも看護婦さんが消毒するだけ。それなのに再診料を請求するのはおかしいのではないか? |
まず、相談者は圧倒的に女性(次図、T-PEC)であり、家族の健康管理における意識の高さが表れているのかもしれない。しかし医療不信に関する相談に限れば、男性が少し増える。

相談者の年齢層の分析が次図(T-PEC)である。子育ての年齢層である30代の女性による相談数が目立つ。男性が占める割合は、加齢とともに増えていく。つまり、若い世代では医療不信や不満を抱く割合が女性に多く見られるのに対して中高年では年齢が高くなるほど男性の占める割合が増えていく。


また、約半数が自分自身の相談だが、残りの半数は、配偶者や子供、親についての相談で、大切な家族が受けている医療が不安だったり納得できないという相談であった(次図)。

子供に関する相談が26%をも占めることから、30代女性において相談率が高かったのは自然な帰結であろう。
東京(T-PEC)・大阪(COML)・福岡(オンブズマン)のいずれにおいても、相談者の居住地は全国にわたる[82]。次図は、T-PEC株式会社(東京)に相談した相談者の全国分布である。地元である首都圏からの相談が少ない一方、大都市圏から遠い新潟・島根といった地域からの相談の多さが目立つ。身近に相談する適切な機関がなかったり、局地的にT-PECの知名度が高いためと思われる。

このように医療に関する苦情・相談を望む国民が多いにもかかわらず、現在までそのような対応をするための公的窓口は存在せず、民間団体がボランティアとして相談を行ってきたのみである。「日本の国の首都である東京に医療事故の相談をする機関が全くないという事はとても許せない」と伊藤隼也氏[83]は数年前に述べた。
しかし2002年度より、都道府県・二次医療圏ごとに「医療安全支援センター」が順次創設されつつあり、患者・家族から得たリピーター(医療ミスを繰り返す医師・病院)に関する情報を厚生労働省の医道審議会につないで、処分につなぐシステムとして活用される予定である[84]が、医療相談に関する機関としてどこまで機能するかは未知数である。
次図は、科別の相談に占める医療不信の割合である。
内科を例にとると、2002年11月の1ヶ月間に内科に関する相談が11,282件あり、そのうち「医療不信・不満に関する相談」の件数が122件、相談全体に対して1.1%、実数としては一番多いが全体から見るとさほど高い割合ではないということである。

※重複回答あり(複数の受診科目にかかわっているケース等)
割合が最も高かったのが歯科で、続いて整形外科、心療内科、外科という結果であった。以上4科の具体的な相談事例を紹介する(プライバシー保護のため内容の一部を変更)。
歯科
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自費で義歯を作ったのにどうしても痛いため医師に相談したら、「病巣はもう治っているので痛くないはず」といって親身に診てくれない。作り直しをお願いしてもいいものか? |
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風邪気味で歯科治療を受けたら口の中が腫れてしまった。すぐに歯科に行ったら「それは内科で診てもらうように」というため内科を受診した。内科では「それは治療を受けた歯科で相談してくれ」とつれない返事。一体どうしたらいいのか? |
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差し歯を入れてもらったが、何の説明もなく隣の健康な歯に銀をかぶせられた。そういう重要な事は普通治療前に説明するものではないのか? |
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前歯が欠けてしまい、歯科に行ったら自費での治療で、高額な治療費を提示された。すぐに返事は出さずに友人に聞いたところ、保険でもできるはずだと指摘された。本当はどうなのか? |
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整形外科
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自動車の運転中後ろから衝突されて3ヶ月間治療を受けたが「これで保険での治療は打ち切る」「あなたの場合、事故との因果関係ははっきりしないし、もともと悪かったのかもしれない」と言われた。納得できない。 |
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整形外科できちんと説明をしてくれる病医院はないのか?近所に何件かあるがどこの先生もレントゲンに異常がなければ患者に興味がないという感じで痛みの原因などきちんと説明してくれない。続けて受診すると露骨に「なぜ来たの?」というような言い方をされる。 |
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靱帯の手術をして1ヶ月たつが、リハビリ担当者に全く誠意が見られず非常に不安である。毎日電気で暖めるだけの治療は妥当なのか? |
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椎間板ヘルニアといわれ手術を強引に勧められている。医者はこのまま放置すればどんどんひどくなって歩けなくなると言う。本当にそうなのか?自分としては手術は受けたくない。 |
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心療内科
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不安神経症で先月まで精神科に入院していたが、状態が悪いわけでもないのにまた入院を勧められた。入院していた時もなかなか退院させてもらえず、どうしたらいいのか迷っている。自分としては薬を飲みながら自宅で療養したいと思っている。 |
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不眠でいらいらするため心療内科を12件受診したが全ての医師の見解が異なる。医師の異なる診断で更に不安が強くなりまた別の病院を受診したくなる。何でみんな言う事がちがうのか? |
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ストレスによる胃炎といわれて6ヶ月間薬を飲み続けたが一向に良くならない。本当に胃炎なのか疑問を感じる。診断が間違っているのではないか? |
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内科で更年期といわれて婦人科でホルモン療法を受けているが、体がだるくてとても家事や外出する気になれない。もしかしたら心の病気なのか?ホルモン療法は効果がないのに続けてもいいものか?婦人科の医師は「そのうち効いてくる、もう少しの辛抱だ」というばかりで私の話に耳を傾けてくれない。 |
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外科
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胃癌で手術適応といわれたが血糖値が高くて手術は当分できないと言われた。癌なのに放置して大丈夫なのか?更に去年の成人病検診で便潜血がプラスだった結果表を見ながら、「あれっ、去年もプラスだったんだ」と軽く言われた。許せない。訴えられるだろうか? |
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父が転倒して頭を打ったため外科の救急病院を受診したら絶対安静ですぐに入院といわれた。いったん私だけが自宅にもどり入院の準備をして再度病院へ戻ったら、婦長さんに今からすぐに退院して欲しいと言われた。こんな事ってあるのか?どうなってるんだ! |
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ある病院で癌といわれ手術を勧められたが、セカンドオピニオンを求めたくて主治医にそのことを話して受けた検査資料を拝借したいと申し出たところ、露骨に嫌な顔をされて、たった1枚のレントゲンフィルムだけしか出してくれなかった。名の通った大病院がこんな対応をしてもいいのか? |
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がんの手術を受けた母は術後2週間で退院させられ、今は月に一度抗がん剤の治療に通院している。しかし副作用でほとんど食事がとれずに寝たきりで過ごしているので先生に相談して入院をお願いしたら「手術待ちをしている患者がたくさんいるから」と拒否された。そんなものなのか? |
次にどのような症状・病状での相談かを示す。
※重複回答あり
先に述べた診療科目同様、病状や自覚症状に関する全相談中、「医療不信・不満に関する相談」について抽出された。
実数としては「痛み」についての相談が圧倒的に多く、割合では「癌」についての相談が多い。癌の中では、治療法・術後の不安についての相談が多い。つまり、医師が実際に出くわす不信は「痛み」「精神症状」が多い。一方、がんなど重篤な症状・病状の患者からは高率に不満を持たれやすいということであり、平常以上の配慮が医療者には必要かもしれない。
慢性的な痛みや特効薬のないしびれ(知覚異常)、様々な原因で歩けない、動かせない(運動障害)、原因のわからない症状については特に相談者の精神的な重圧になっている様子が伝わってくるそうだ。また、もともとストレスがあって痛みがでるケース、痛みが続いてストレスになるケースの両者とも存在する。
次に、不信・不満の対象が明確な場合、その対象についてのデータを示す(T-PECへの全相談411例中、医療不信や不満の対象が明確な事例を抽出)。ニアミス事例数は、厚生労働省資料[85]による。

圧倒的に医師に対して不安な気持ちや納得できない感情を持つ人が多い。上手く信頼関係が築けないと言う背景には様々な要因が考えられ、
・「自分の受けた治療、飲んでる薬を知りたい」というニーズが高まる中「患者は黙って従ってればいい」という医師が少数ながらも実際にいる
・時代背景として度重なる医療ミスと、その隠蔽体質、医師の過酷な勤務体制、医療ミスが起こっても「病院有利」という図式が成り立たなくなってきた
・現代は様々な情報を容易に入手でき、患者同士の情報交換や医師の意見を気軽に聞ける
ことなどが関与する、とT-PECは分析する。
このように、医療不信とは医師不信であることがわかる。医療事故にかろうじて至らなかった「ニアミス」を起こす職種は、看護師が断トツであるのだが、それとは関係なく「現実の不信は医師に向く」との構図である。
次に、相談者が相談時に表現した具体的な心情を示す。
重複回答あり
電話相談の中では、激しく怒る人、こんな事を言われたと言って泣く人、冷静に端々と第3者の意見を求める人など様々な人がいる。
中でも不安(25%)・不信(32%)・不満(25%)が群を抜いて多い一方で、訴えたいとする人は3%に満たない。さらに、実際に訴訟になるのは、弁護士に持ち込まれた事例の中でも0.3%程度[86]。従って、もし最近医療不信が高まっているとするならば、その起源は「最近は何かあればすぐ訴訟に持ち込む」(と一部の医師に思われる)患者のやり方というより、むしろ医療側への「不安・不信・不満」にあると言える。
次に、傷ついた、憤慨した、医師の言動(プライバシー保護のため内容の一部を変更)を挙げる:
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こういう言葉に |
「風邪では死なないよ、おかあさん」 |
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こういう態度に |
冷たい ろくに診察もしないで決めつけた言い方をする |
「T-PEC」は、医療不信の自社データを元に、以下のように結論する:
以上、いろいろな角度から医療不信や不満に関する相談を分析してきましたが、「医療としてのあるべき姿」と「人間としての感情」(医師も患者も双方に)が常に一致するとは限らず、とても根深い問題だと認識しました。どちらが正しいとか間違っているという問題ではありませんが、いい関係が築けなければ不利益をこうむるのは主に患者サイドですからしっかりと医師や医療機関を見定めて選択するということが重要だと思います。もうひとつ大切なことは医療機関を転々としてもいい方向に向くとは限らず、むしろそのためにかえって不安になったケースも多いということです。たとえ納得できなくてもどこかでその気持ちに終止符をうって自分で自身と向き合う姿勢も必要ではないでしょうか。
「医療の専門家である医師を信頼し、身体委ねました。ところが、その期待と信頼は裏切られ、一生涯もとに戻らぬ障害を、または、その命をも奪われたのです」[87]という言葉は、抑制されつつも大きい患者側の怒りを表わしている。
「病院という所はもう少し、民主的な所と考えていた」と伊藤隼也氏[88]はいう。「死んだ実父のカルテを見せてくれず…何故死んだかわからない…そういうコメントをずっーと聞き続けさせられまして、頭にきていろんな行動をしたのですが…相談する先もないということが解りました」。
しかし現在では「検査や治療はもっとオープンにすべきでしょう」[89]との考え方が主流である。医師会も、全日本病院協会も、カルテ開示の方向をとる時代となっている。カルテ開示義務も、個人情報保護法として法制化された[90]。
さて、前述の伊藤氏はなぜ「頭にきた」のか。病院のせいで父が死んだという疑念もあるだろうが、カルテも見せてくれず、何も教えてくれず「わからない」を連発する病院側の態度に「頭にきた」のだ。
久能恒子医師[91]はある事例について「医者としてという前に人間として息子さんを亡くした親御さんの感情を考慮し、礼を尽くして対応していたらここまで話がこじれたかどうか…」[92]と、医者の心遣いの欠落が問題、と批判する。
さらに、一部の医師の非道さが医療界全体の信用を失墜させることも考えられる。「私自身、医者として毎日が反省の連続なんです。だから以前は他の人の医療過誤を問える資格なんか自分にはないと思っていました。でも自分の子や親が死んだとき、人間に対する情を持って見送ってもらいたいと思うでしょう。それが全くない非道な医師がいるんです」と久能氏は指摘する。
医師の間での相互批判はやりにくい。実際医療訴訟では、医師は鑑定の引き受け手になりたがらないことが多く、裁判所は鑑定を依頼できる医師を探すのに一年を費やすこともあるという。
そこには「医療事故は誰でも起こしうることであり、特に積極的に治療を進めようとすると、その確率は高くなる」[93]から、他医師の過誤を指摘できる資格は自分にないという意識がある。
また、医療界の権威への遠慮もある。久能医師が他医師に対して起こした過誤訴訟では、「執刀をしたのが医学界の有力者である関西の外科医だったこともあって脳外科界ではみな関わりたがらない」と久能恒子医師は言う。
一方、菊元成典弁護士[94]は、「同業者が同業者のミスを指摘する、ということは大変」としながらも、「弁護士も、最低限の資質を備える努力をしてこなかった弁護士が犯した弁護過誤を弁護することはできません。」「かかる行為を見過ごしたときには、われわれ弁護士全体が、信用されないものになってしまうからです」と述べ、同業者同士のかばい合いはその業界全体の信用を失墜させる、と主張する。
しかし医師間の意見不一致が医療不信を増幅する事例もある。日本医師会は、医師の倫理として、「医師相互間の義務」の一つに「前医の批評をすることは医師の品位を傷つけるものである」[95]とし、医師間の意見の不一致を避けようとする立場だ。
病院の経営状態も関係しうる。「また日本の病院の70%以上が赤字経営で、医療過誤を組み込んで予算を立てたら病院がつぶれてしまうという現実がある。自然、敗訴を防ぐためにカルテの改竄などが行われているんです」と、開業医である久能恒子医師はいう。
「医療過誤で損害を被った」と信じる患者やその家族が求めるものは、(犯罪など)自らの過失でない形で損害を受けた人々の願いと共通な部分が少なからずあるはずだ。「医療過誤で父を失った」と述べる伊藤隼也氏は、医療者に次の3つを求める:
特に(3)は「医療関係者になかなか通じない」と伊藤氏は言う。
アンケート質問:「医療訴訟原因」という連語から連想する言葉2つ(異なる意味の言葉2つ)を教えて下さい
集計結果(N=60):


本アンケートより、厚労省・医師会・病院団体・患者の会・原告の会などが問題視している点は、医学生の意識にかなり正確に反映されていることがわかった。
「患者が安心しうる環境とは、医師と患者の間に信頼関係が醸成されていることを前提とする。患者からの医師への信頼には、『医師の技術、判断が的確で誤りがないこと』が基本的な前提となる。そのうえで、『患者と医師との意思疎通が円滑に行われること』も求められるというべきである」[96]。
ここでは前者『医師の技術、判断が的確で誤りがないこと』について、次項で後者『患者と医師との意思疎通が円滑に行われること』について論じる。
過去の事故からは、しっかりと教訓を引き出さねばならない。1998年の医療安全対策委員会(日本医師会)の答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」は、「過去に起きた事故の発生原因を究明する際に、最終的な行為者を特定し、その個人を非難し問責することは、事故の再発防止にとっては役立たないだけでなく、妨げることにすらなり得る」とする。
医療事故の多発は、「全世界的な共通懸案事項」[97]である。1992年にスペインのマルベージャで開催された第44回世界医師会総会においては、「医療過誤に関するWMA宣言」が採択された。
そこでは、「各国の医師会は医療事故の防止対策に取り組むべき」との提言がなされている。
厚生労働省は、2001年を「患者安全推進年」と位置づけ、ようやく患者中心の医療の実現に向けた行政の取組が始まった。
同年、医療事故防止のため、さらに幅広い関係者の参画の下に、体系的で広範な取組を推進する「PSA」(患者の安全を守るための医療関係者の共同行動;Patient Safety Action)が実施された。すなわち、安全対策の全体構想である「医療安全推進総合対策」[99]を作り、対策を推進する組織[100]を整備した上で、現在、実際に安全対策が推進されつつある。
医療機関の安全対策に有用な方策について、国は積極的に情報提供等をすることにした。また、医療機関の特性に応じた安全管理体制を確立するため、以下の体制整備を徹底し、監視指導等により確認することにした:
@全ての病院・有床診療所に対し、(1)安全管理指針 (2)事故等の院内報告制度 (3)安全管理委員会 (4)安全管理のための職員研修 を整備
A特定機能病院、臨床研修病院に対しては、さらに (1)医療安全管理者(特定機能病院は専任化) (2)医療安全管理部門 (3)相談窓口 を整備
これらは、リスク・マネジメントの考え方に基づいたものである。
医薬品の販売名や外観の類似性を客観的かつ定量的に評価する手法の開発、第三者的な評価等の検討、医薬品情報の提供等を推進する。
人間の行動や能力その他特性を考慮した設計の考え方を導入した医療用具の開発指導やその実用化のための研開発を推進するとともに、医療用具の添付文書の標準化や医療用具の操作方法等に関する情報提供等を推進する。
国家試験の出題基準に医療安全に関する事項を位置付ける。医療安全に関する修得内容の明確化や教育研修に関する教育方法、教材等の開発等を行う、とされる。
深刻な医療事故が後を絶たない現状を踏まえ、厚生労働省の医療安全対策検討会議が昨年4月にまとめた総合対策の柱の1つ。患者の身近な地域で医療に関する苦情や相談の受け皿として機能することを想定し、都道府県や政令指定都市、中核市などが設置、運営する。厚労省の運営指針は、中立性を確保するため医師や患者代表、弁護士など第三者を運営に参画させるよう求めている。
「医療安全支援センター」は厚労省が2002年4月、医療事故対策の柱の一つとして全都道府県への設置を打ち出し、早期の体制整備を求めてきた[102]。そしてこの2003年6月には都道府県に対しその設置を促し[103]、運営について指示した。都道府県、保健所設置市区と二次医療圏に重層的に設置される予定である。
医療安全支援センターは、患者サービスの質向上と患者と医療機関との信頼関係構築を目的とし、患者・家族の苦情や相談に迅速に対応するととともに、医療機関に情報提供を行うという。つまり、中立的な立場で患者や家族、遺族から医療行為をめぐる苦情や相談を受け付け、医療機関に仲介することで問題の解決を図る、いわば患者にとっての「駆け込み寺」としたい意図がある。
同センターには、相談窓口のほか、活動方針の検討、相談の指導・助言、関係団体との連絡・調整を行う「医療安全推進協議会」が設けられる。相談担当者には医師や看護師などを配置。協議会委員はサービス利用者、医療関係団体代表、有識者等で構成し、中立性、公平性を確保する。
また厚労省は、地域における医療安全対策の展開をバックアップするため、「医療安全支援センター総合支援事業」を実施する。これは、
@各センターの相談担当者や協議会委員に対する研修
A相談困難事例などの情報収集・分析と各センターへの情報提供
B全国のセンター間での情報交換の支援
の三事業から成り、「財団法人日本医療機能評価機構」に業務委託する予定だ。
ヒヤリ・ハット事例収集の全国展開、分析・提供体制の強化(事故事例の収集等は、法的問題も含めて検討を開始)。次項で説明。
医療安全に必要な研究の計画的な推進をする。
厚生労働省は、「医療安全対策ネットワーク事業」(ヒヤリ・ハット事例収集・分析)として、特定機能病院、国立病院・療養所の医療機関を対象に、インシデント事例(患者に傷害を及ぼすことはなかったが、日常診療の場で“ヒヤリ”としたり“ハッ”とした事例)を収集[104]し、集計・分析した結果等を広く医療機関、国民に公表している[105]。
これと同時に、医療機関における医療安全に関する10の基本的な考え方が、「安全な医療を提供するための10の要点」[106]として標語の形式でとりまとめられた。これは、医療機関の職員が業務を遂行するにあたって、医療の安全を確保するために基本となる理念などを、わかりやすく覚えやすい簡潔な表現でまとめたものである。
(1) 根づかせよう安全文化 みんなの努力と活かすシステム
(2) 安全高める患者の参加 対話が深める互いの理解
(3) 共有しよう 私の経験 活用しよう あなたの教訓
(4) 規則と手順 決めて 守って 見直して
(5) 部門の壁を乗り越えて 意見かわせる 職場をつくろう
(6) 先の危険を考えて 要点おさえて しっかり確認
(7) 自分自身の健康管理 医療人の第一歩
(8) 事故予防 技術と工夫も取り入れて
(9) 患者と薬を再確認 用法・用量 気をつけて
(10) 整えよう療養環境 つくりあげよう作業環境
この標語を参考に、各医療機関が各状況にふさわしい標語を作成して医療事故防止の一助とすることを、厚労省は期待している。
次に、医療事故の原因についての分類を挙げる[107]:

明らかに、「医療知識・技術の未熟性・独善性」によるものが突出する。医師の研鑽義務が法的に問われるところである。これだけからも容易に、医師の研鑽の重要性と、その社会的意味がわかる。
そして「意思の疎通性」が次いでおり、「患者の同意」の前提となる説明義務が果たされきれていない場合に過誤とされやすいことを示す。
各分類における内訳は、次の通りである:
1.診療録の不備
入院時所見・経過記載の不備 62
SOAP[108]不採用 22
フォーマットの不備 13
看護日誌との関連/別 7
看護日誌との関連/同 2
総 計 106
診療録の不備に関しては、「入院時所見・経過記載の不備」が目立つ。「医学的に正確で客観性のあるカルテを作成することは…的確な診療を確保し事故を防止する効果が高い」[109]のである。
また開業医で訴訟の多い産婦人科では、分娩直前の胎児は十分に観察し、カルテにしっかり書き込んでおくことを小海正勝弁護士[110]は勧める。胎児仮死によって1億円以上の賠償を命じられたことも少なくないからだ。
カルテの保管は、医師法上は5年だが、トラブルになりそうなケースでは、債務不履行責任の時効である10年保管を同弁護士は勧める。実際、9年目に訴訟を起こされたが、カルテを保管していたために医師側が勝訴できた事例がある。
2.医療知識・技術の未熟性・独善性
診断-鑑別・決め付け 128
治療-外科 105
救急診断・治療 58
治療-内科 53
診察の不備 40
治療-その他 35
治療-産科 32
不必要医療行為(検査・手術) 20
総 計 471
「医療知識・技術の未熟性・独善性」に関しては、「診断-鑑別・決め付け」が目立ち、知識の未熟が過誤につながることを示す。しかしこれは「勉強不足からくる医療ミスも少しはあるかもしれませんが、圧倒的に多いのはうっかりミスだと思う」[111]という現場の医師の感覚に矛盾するようにみえる。表に表れるよりもはるかに多い「うっかりミス」があることを示すようである。
しかし、「事故の発生までには複数の関与者による二重三重のミスやエラーが介在しており、しかもそうした複合的なミスやエラーの連鎖を許すシステムや組織の欠陥こそが、根元的な意味での事故原因」と日本医師会は分析[112]し、fail-safeの発想が重要、とする。
次いで「治療-外科」が多いのは、技術の未熟が過誤につながると思われる。しかし「慣れてしまった簡単な手術ほど考えられないようなミスをすることがある」から「準備を周到にし、メンタルリハーサルをしてから手術に臨むべき」[113]だとある整形外科医は言う。
「救急診断・治療」における過誤の数も見逃せない。救急専門医の創設と養成をいそぐ必要がある、との指摘[114]もされる。
3.薬剤の過誤使用
一般的副作用・相互作用 20
抗癌剤・適応/使用法/副作用チェック 11
陣痛促進剤 11
消炎鎮痛剤 8
総 計 50
薬剤については、副作用の説明を怠ってはならない。頻発する副作用はもちろんのこと、「非常に稀にしか起こらない副作用であっても、その副作用の結果が重大であれば、具体的に説明指導すべきであり、『何かあればいらっしゃい』といったような一般的注意だけでは不十分」[115]である。
似た瓶に入っているので、注射薬の誤りにも注意すべきである[116]。
4.チーム医療の未熟性
医師/ナース/コ・メディカルとの疎通性 34
手術時の指導体制 18
上級・研修医の複合診療 17
薬剤投与のチェック機能 9
総 計 78
5.意思の疎通性
インフォームド・コンセントの必須項目 88
選択権の保障 41
療養指導の不備 13
総 計 142
インフォームド・コンセントでの必須項目の欠如が目立つ。説明不足による選択権の侵害も多い。法的義務として説明することはもちろん、医師が説明したことが患者が理解していないこともよくあるので、必須項目は、紙に書いて手渡すことが勧められる[117]。
また手術の合併症を伝えなかったために医師が敗訴した例がある。「合併症や危険があるなら手術は受けない」ということもあるので、手術の場合は必ず合併症と危険性、予後の見通しを伝えるべきである[118]。
6.施設の診療能力の不足
救急指定病院である 37
救急指定病院でない 16
総 計 53
7.事故対応の未熟
有 81
無 15
総 計 96
事故対応の未熟によるものも目立つ。
過去に発生した事故例を詳細に検討し、そこから教訓や予防策を学び取ることは、極めて大きな事故抑止効果をもたらす。労働災害の分野では、1件の死亡事故が発生した場合に、その背後には約30件の傷害事故が発生しており、さらにその背後には約300件のニアミス例(事故の予備軍)が存在するという、ハインリッヒの法則が知られており、これはその他の分野における事故にも概ね該当するといわれている。この法則から、医療従事者は、医療現場における些細なミスやエラーを見逃さず、情報を収集しこれらを丹念に検証していく努力を継続することこそが、1件の不幸な医療事故を未然に防ぐ有益な方法であることを学ぶことになる。ひとつの事故をシステムの問題として原因を解析し制御可能なものとする努力が必要である。
具体的な事故予防策を考える際には、「人間は必ずミスを犯す」という事実を忘れてはならない。すべての事故防止対策は、この前提に基づいて策定されるべきであり、ミスやエラーの発生を如何に少なくするかと同時に、万一発生したミスやエラーを如何に事故へと結びつかせないか、という fail safeの発想こそが肝要である。
米国で発達したリスク・マネジメント[120]は、米国では、法律的強制[121]、経済的・学術的動機づけ[122]、自己防衛、および他の医療提供者との競争[123]の枠組みのなかで行われている(決して病院や医師の自主的な高い志によってなされているのではない)。
日本では、1998年に日本医師会が「医療におけるリスク・マネジメントについて」という医療安全対策委員会答申を出し、事故や紛争の予防と対策の必要性を説いた。2000年には厚生労働省が「リスクマネージメントマニュアル作成指針」を策定[124]し、国立病院等のために同マニュアル作成を促した。
これに呼応して、最近は全国の医療機関が事故防止に次々と乗り出し、法律家を招いて勉強会を催したり、リスクマネージャー(推進責任者)の養成をしたり、模擬裁判を通じて患者・裁判官の考え方を学ぶ病院もある。「患者の権利法をつくる会」は、各病院に専任リスクマネージャーの配置を求めている[125]。
損害保険会社も、医療機関に向けて、MRM(Medical risk management)体制の構築を支援している。
しかし問題点もある。「リスク・マネジメントの行き過ぎにより、アメリカでは医療提供側が訴訟を恐れるあまり、萎縮して防衛的になって、ハイリスクな技術の行使や患者の診療を拒否することも稀ではなく、ひいては患者の医療へのアクセスが不自由になるといった弊害をも生み出している」[126]と日本医師会は言う。
MRMの骨格:
1.MRM活動の理解、医療従事者の事故防止意識の醸成
2.体制作り(MRM委員会の設置、推進責任者「リスクマネージャー」の選任、事故報告制度の導入)
3.医療事故防止対策の検討・実施
4.医療事故防止マニュアルの作成と運用によるMRM活動の継続的な推進
医療安全対策委員会答申は、医療事故防止のために「医療において特に考慮すべき視点」として次の4つを挙げている:
@医療を担う者としての基本的な姿勢を再確認する[127]
Aマイナスの情報を隠さず詳らかにする習慣を育てる[128]
B原因追及の作業を「犯人捜し」で終わらせてはいけない[129]
C正確な情報に基づき事故予防システムを構築し活用すること[130]
これを元にして、医療安全対策委員会は医療事故の予防に向けて、以下の7つの具体的な提言をした(以下、要約):
@医療事故および紛争に関する情報収集体制とその組織の確立[131]……現在の日本における広い医療事故情報収集は困難なので、これを公正な立場から実施可能な組織を作ることが望ましい。
A院内に事故報告体制等の組織を整備する……各医療施設内においても、施設内の医療事故について自主的に報告するシステムを作ることが求められる。これは懲罰目的ではなく、事故原因の解明と、再発防止策の検討に有用な情報を収集するという建設的な目的をもつものであり、この趣旨をすべての管理者、スタッフに徹底するべき[132]である。
B安全対策マニュアルの作成と徹底……マニュアルは、簡潔で注意を喚起しやすい体裁とし、診療現場に吊り下げ・掲出できるものがよい。
C医療現場の意識改革……従来、多くの医療現場においては、上席の医師の発言や指示は権威のある絶対的なものとして扱われ、第三者による評価・牽制を受けることはありえないという風潮がみられた。これは、事故防止の視点からは最も戒めるべきである。ある者がなした判断は、その者の地位、経験に関わらず、必ず他者の牽制を受けなければならないというシステム(同僚審査)を、すべての医療施設において採り入れるべきである。しかし、医療施設のシステムのみを改革しただけでは、徒に個々の医療従事者の感情を刺激し、衝突を招きかねない。肝要なのは、事故防止や安全に必要な事項は、席次や権限の枠にとらわれることなく、誰もが自由に発言し、建設的な議論をなしうる雰囲気を医療現場に醸成することである。これは個々のスタッフに意識の改革を迫るものであり、決して容易に成し遂げられるものではない。この意識改革を成功に導く要諦は、まず医療施設の管理者など上級職にある医師自身が、率先して意識改革をすることである。
D医療職の労働条件の改善……医療施設における人員不足は、1人あたりの労働量を増加させ、過労、多忙による注意力の欠如からのミスやエラーを誘発する。医療施設のなかには人員の確保が難しいという事情から、慢性的な人手不足と過重労働に陥っている施設が少なくない。しかし、このような医療施設の開設者・管理者は、人員補充により医療スタッフ一人あたりの労働量を軽減し、労働環境を整備することが、患者の安全をもたらし、医療事故の予防につながることを自覚すべきである。
E生涯教育・啓蒙活動にリスク・マネジメントを導入する……医療事故防止のための講習会の開催、医療事故訴訟に関する最新情報を盛り込んだ簡便な小冊子の作成・配布、医療事故を数回にわたり起こす医師に対する安全講習受講の義務づけ、といった対策が考えられる。
F医学教育・医師養成のあり方に対する提言……大学医学教育において、医療事故防止や安全意識の確立を目標とする講義科目採用が必要。中でもカルテの作成に関して体系的な教育がなされていない現状は直ちに改善されるべき点である。さらに、昨今の若年層を中心とした医師および医学生の多くに、他者との意思疎通能力の欠如は、憂慮すべき点といえよう。患者あるいは他の医師、医療関係職種者に対して、意思疎通を円滑に行うことは、医療を担う職にあるものとして必須の条件である。
以上は、「患者の権利法をつくる会」が義務として法制化を求めている内容[133]とかなり一致する。
事故事例から学ぶにとどまらず、「患者とのコミュニケーションを向上し意見に耳を傾けることは、紛争防止効果に止まらず、医療事故の予防にも寄与する」[134]という。
発生した医療事故後の医療施設側の対応として対策をたてるべき点は、「医療事故を医事紛争へと発展させないこと」、「医事紛争へと発展してしまった場合にこれを合理的に解決すること」の2点である。
アメリカの病院の一部には、リスク・マネジメントの観点から、Patient Representativeという患者の苦情や相談を受けつける職種があり、ここで対応したため訴訟に至らず、解決する場合も少なくはない。日本医師会では、2000年1月に「診療に関する相談窓口」を設置し、患者からの相談等に対応している。
一方「患者の権利法をつくる会」は、同様な苦情相談窓口を各病院に設置するよう求めている[135]。
患者や遺族が訴訟を起こすのは、被害回復という面もある。医療者も「医療訴訟」と聞いたとき、大抵「医療ミス」を思い浮かべる。
しかし、「『非を認めず謝罪の言葉がない。真相を隠そうとする』などといった医師の不誠実な態度に対する怒りや不信感が、9割以上のケースで争いの発端になっています」と吉川弁護士[136]は語る。ある開業医も「医師側の虚偽、言い訳、横柄な態度がなければ、医療訴訟はかなりの確率で避けられる」[137]という。
それを裏を返せば、医師の誠実さ次第で医療訴訟は防げる、ということである。「『自分は常に最善を尽くしているから、誤りなど起こしえない』という意気が逆に不誠実にならないように自戒することが大事」と述べる内科医もいる[138]。「最初から病院が…謝罪している場合は、裁判で争わずにまとまる場合が多」く、ある事例では、「医師がミスを認めて謝罪し適切な処置をとったので、相談にみえた被害者も『あんなに何度も頭を下げられてもね…これからもあの先生に診てもらいますよ』と言っていました」と、医療過誤があっても、誠実が信頼を生むことを語った。そしてある整形外科医は「もしもミスを犯した時はすぐに説明し、誤りがあれば素直に謝ることが、人間関係のためには必要」[139]という。
しかし現実には、「勉強熱心な医者の中には、(患者のことより)自分の名声やプライドの方を重んじる者が多い」という意見[140]もある。
このように、医療訴訟を提起した原告患者側の動機は、「医師が十分な説明をしてくれなかったから、とするものが最も多く、次いで二度と事故を起こさないための努力不足と謝罪の姿勢がみられなかったこと」で、この傾向は、欧米における複数の客観的調査によって裏付けられている[141]。
この結果から、医療安全対策委員会は、「コミュニケーションとアベイラビリテイ(医師がそこにいると患者が感ずること)は重要で、紛争抑止効果は大きい。患者の納得感[142]の向上は、医療技術の向上以上に紛争を防ぐことが実証されているというべきである。さらに患者とのコミュニケーションを向上し意見に耳を傾けることは、紛争防止効果に止まらず、医療事故の予防にも寄与する結果となる」と結論する。
医師は「民法645条の法意により、医師は、少なくとも本人の請求があるときは、その時期に説明・報告をすることが相当でない特段の事情のない限り、本人に対し、診断の結果、治療の方法、その結果等について説明・報告をしなければならない」[143]というのが診療録閲覧請求権の根拠である。
しかしこのような説明・報告は「診療録を示して行わなければならないものではない。それぞれの事案に応じて適切と思料される方法で、説明・報告をすればよい」[144]。
裁判官の心証形成において医師側を不利にするのは自明である。そして診療録の改竄を行った場合、当該医療に関して医師の過失を推認・認定する判例が普通[145]である。
また診療録の改竄は、著しく杜撰・不誠実な医療を行ったこととされ、真摯かつ誠実な医療を尽くすべき注意義務を怠ったとされる[146]。
診療録はしばしば、証明手段の確保の観点から、患者側から証拠保全の手続きが行われる[147]。診療録を「任意にそのまま提出することを欲しないのが通常であるからといった抽象的な改ざんのおそれでは足りず、当該医師に改ざんの前歴があるとか、当該医師が、患者側から診療上の問題点について説明を求められたにもかかわらず相当な理由なくこれを拒絶したとか、あるいは前後矛盾ないし虚偽の説明をしたとか、そのほかことさらに不誠実又は責任回避的な態度に終始したことなど、具体的な改ざんのおそれを一応推認させるに足る事実を疎明することを要する」[148]として、患者側に証拠保全請求するための十分な根拠を求めている。
証拠保全の際に診療録の存在が確認されたにもかかわらず、内容提示が拒否されたり、その後の検証で「見当たらない」との理由で提示が拒否されたのは、「証拠として使用できないようにしたものと推認」[149]され、「証拠妨害」として「民事訴訟法317条の趣旨に従い、原告の供述を真実と認めるのが相当である」[150]とされる。
1994年3月、世界保健機関(WHO)ヨーロッパ会議で「患者の権利の促進に関する宣言」が出され、「患者は、自分の苦情について、徹底的に、公正に、効果的に、そして迅速に調査され、処理され、その結果について情報を提供される権利を有する」ことが確認された。
「カルテなどの情報を開示して、患者サイドが納得いくまで説明すると、訴訟に至らないケースもある」との弁護士[151]の言葉通り、診療録開示は一つの鍵である。
患者の権利は、知る権利、選択権、自己決定権などがある。診療情報の開示は、患者としての権利に実効性をもたすための基本となる。
日本医師会は2000年1月1日から、原則的に患者本人へ診療情報を全面開示するとしたガイドライン「診療情報の提供に関する指針」を実施した。日本歯科医師会や日本看護協会などの医療従事者の団体や医療機関の団体などにおいても、診療情報の提供に関する指針が策定された。しかし、「告知の問題などで患者のために開示しない場合もあり得る」という部分が医師にとっての隠れ蓑になるとか、「遺族は開示の対象としない」といった部分に対する批判もあった[152]。そこで同ガイドラインは2002年10月に改正され、相続人からの開示請求が認められた。
また、訴訟目的の開示は拒否している点も注目される[153]。
しかし、現場への徹底はまだ遠い。各病院の方針が医師会の方針と乖離する場合も少なくないという。3年間にわたるこのガイドラインの実施を踏まえ、これを積極的に評価するNPOは次のように述べる[154]:「しかしながら…従前の態度と全く同様に『カルテを見たければ裁判所の決定を持って来なさい』等と言い放つ医療機関も少なからず残存しており、そのような場合、患者・家族の『不審』は『不信』へと発展し、中には深刻な医事紛争に転化するものも少なくありません」。
2001年4月から、国立病院・国立療養所は(厚生労働省のガイドラインに基づき)カルテの開示を始めた。全日本病院協会も「各病院が指針を参考に検討して、診療情報を積極的に開示することが必要」とし、「診療記録の開示を確実に行う」とした。さらに「診療録開示のあり方が、患者による医療機関の選別の大きな要素となっていることを、医療者は認識すべき」[155]とする。そして、
(1)診療情報の開示を確実に行うことを組織として確認し、そのための職員の教育研修を実施する。
(2)退院要約書で代替するのではなく、全面開示を原則としなければならない。したがって、開示を想定した診療記録などの記載様式、内容を至急整備する。医師のみならず、看護師、薬剤師などの記録も診療記録に含まれることに留意する。
(3)病院として診療情報を開示することを、掲示などを用いて患者に広報する。
(4)苦情受付、よろず相談窓口の存在を周知・広報する。
(5)診療情報の開示は、訴訟対策ではなく、患者との信頼関係の構築の一環であることを認識する。
の5つを会員病院に求めている。
そして現在では、約半数の病院で「カルテ開示の規定(指針・手順)」がある[156]。特に国立病院・公的施設では浸透している。民間病院では3割しか規定がないが、医師会に所属していれば、医師会のガイドラインが適用される。
厚生労働省は既に1999年7月に、「医療提供体制の改革について(中間報告)」において、「今後…患者が診療記録の開示を求めた場合には、原則として診療記録そのものを示していくことが必要である」[157]とし、本人へのカルテ開示の方向を示した。2003年5月にも再度「患者の求めに応じて原則として診療記録を開示すべきである」[158]との方針を示し[159]、同時に一定の条件[160]下で、遺族へも開示すべきとした。
また、「訴訟を前提とした診療記録の開示の求めについては、訴訟を前提としていることのみを理由に診療記録の開示を行わないことは適当ではない」とし、日本医師会のガイドラインを批判した。
カルテ開示を進めるための法的バックアップもある。2001年に医療法が改正され、カルテ等診療に関する諸記録を提供できる旨を広告することが可能になった。これは、カルテ開示を進める病院に、広報上の利点を与えたことになる。
2003年6月に「個人情報保護法」[161]が成立し、診療情報が、一般の個人情報と同列に扱われることとなった。つまり、本人からの請求に対するカルテ開示が義務化された[162]。ただし例外がある。「本人または第三者…の権利利益を害する恐れがある場合」「(医療機関の)業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす恐れがある場合」「他の法令に違反する場合」に限ってのみ、カルテ開示義務はない。
医療従事者が患者側に事実を知らせたいと思っても、所属する医療機関や大学の医局との関係などによる制約、あるいは、それらを通じて自己にさまざまな不利益が及ぶ危険などから、真実を告げることが困難なこともある。
そして真実を告げても訴えられる可能性もある。日本医科大学付属病院では、骨折したあごの修復手術を受けた女性が急死した問題[163]では、手術ミスを証言した医師が、日本医大側から、名誉を傷つけられたなどとして損害賠償を求める訴えを起こされた。医師の証言内容が事実かどうかは私が知る由もないが、証言自体が訴訟の対象になりうるということである。
勇気を持って事実を告げようとする医療従事者を励まし、支援していく民間団体[164]も存在し、社会学者、医師、弁護士などの分野の人たちが運営している。
日本病院協会は「医療者の意識が、ともすれば急激な社会の変革に付いていけないのが実状である」[165]と、認め、「信頼を創造するという積極的な立場で行動する必要がある」とする。
もし医療不信が社会に広く蔓延しているならば「今後は…医療事故予防や医療の質の向上に向けて努力している医療界の現状を、広く社会に向けてアピールする努力もなすべき」[166]として、社会や患者の誤解を避け、かつ医療不信を軽減させる効果を、日本医師会は期待する。
社団法人日本病院会は、患者が医療に参加し、医療提供者との相互理解と相互信頼を深めるために、医師などの説明を書き留めるための診療手帳「私のカルテ」を2002年12月から発行している。
(医師の過失でなく)偶発的に発生し、患者に大きい損害が生じる医療事故も少なくない。このような患者を救済するために、損害を被った患者への迅速・公正な補償を図ることを目的とした「医師の過失を前提としない国家的補償制度を創設する」ことも提案[167]されており、患者側に立った民間団体も同様の提案[168]を行っている。久能恒子医師も「事故後の補償制度の確立は医師にとっても必要」[169]と述べる。
患者・医療者・社会の三者の利益になるように、以上の視点と実行による、医療事故・紛争の防止努力が実を結ぶことが願われる。
医療不信を持つ人の中で「訴えたい」と考えている人は3%にも満たない。そしてその一部のみが実際に弁護士に持ち込まれ、訴訟にいたるのはさらにその1〜2割に過ぎない。結局「訴訟に至るのは、0.3%」という弁護士もいる。
従って、直接的に医療不信を作り上げるのは、訴訟に至らずに医療不信を持ったまま過ぎていく99.7%の圧倒的多数派であろう。医療不信を予防するには、そのような圧倒的多数派がターゲットになる。
医療不信は、医療者・患者の双方にとって不幸である。医療者は「患者がわがままだ」といい続け、患者は「医療者が悪い」といい続けていれば、悪循環こそあれ何も解決しない。受診者側に、「賢い患者になろう」と目標を持って活動するNPOも存在するのと同様、「賢い医療者になろう」とする視点は医学生にとっては欠かせない。
禁煙場所での喫煙を注意しただけで刺される世の中である[170]。患者の不当な言い分も多くあっても不思議ではない。実際、医療訴訟では半数以上が患者側の敗訴である[171]。
しかし仮に、何かのきっかけで患者とトラブルとなり、医師が自ら正しいことを主張し、何回も話し合って相手の言い分に綿密に反論した甲斐むなしく、結果的に決裂、訴えられ、何度も弁護士と綿密な打ち合わせをし、法廷に足を運び、憔悴して数年を過ごした上、ようやく医師が勝訴し、賠償金を支払わずに済んだ……として、それが医師にとって何の意味があるだろうか?患者にとっても同様である。
また「医療事故・医事紛争の増加は…萎縮診療等の弊害を招」くため、患者にも「有効な医療を受ける機会を制約される事態をも引き起こしかねない」[172]。
一方、医療事故・不信の「予防」は、医師にとっては「自己防衛」、患者にとっては「良質で安心な医療」、社会にとっては「医療費・税の節減」に結びつく。やはり大切なのは、医療事故・不信の「予防」である。三者の利益になるのだから。(◇目次へ◇)
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[1] 2001年5月に厚生労働省に設置された「医療安全対策検討会議」(座長:森 亘 日本医学会会長)において、今後の医療安全対策の目指すべき方向性と緊急に取り組むべき課題について検討を行い、2002年4月17日に取りまとめられた。
[2] これは、「医療提供体制の改革に関する検討チーム」による「医療提供体制の改革のビジョン案」(2003年5月)に受け継がれた。
[3] 「医療事故防止のための安全管理体制の確立について」(国立大学医学部附属病院長会議常置委員会「医療事故防止方策の策定に関する作業部会」中間報告)(2000年5月)
[4] 医療事故の防止に向けた試みとして、文部省所管の国立大学病院については「医療事故防止のための安全管理体制の確立について」(国立大学医学部附属病院 長会議常置委員会「医療事故防止方策の策定に関する作業部会」中間報告)(2000年5 月)、厚生省所管の国立病院等については「リスクマネージメントマニュアル作成指針」(リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会)(2000年8月)、大阪府の医療機関については「医療事故防止対策ガイドライン」(医療事故防止に関する検討会)(2000年9月)などが作成された。
[5] 医療安全対策連絡会議における厚生労働大臣推進表明(2001年3月26日)
[6] 医療事故の数を正確に把握できるような資料はないが、東京都の「医療改善ネットワーク」の代表世話人である藤田康幸弁護士(プライム法律事務所)は、「医療事故の数自体が増えていて、しかも、露見する事故も増えてきた」と推測する
[7] 前脚注の藤田康幸弁護士による
[8] 神津康雄第一医院院長は、Clinic Magazine2001年5月号において、「富士見産婦人科病院事件」の東京地裁判決について、「マスコミの異常報道が裁判官の頭まで洗脳」している、と主張。
[9] 日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[10] 岡幹英教授(静岡大学人文学部社会学科)による。医療社会学、とくに患者の「語り」を研究。
[11] 京都南病院老人保健施設「ぬくもりの里」施設長(2000年)
[12] 本当は必要十分条件のつもりだが、慎重を期した
[13] 大分地決昭60・12・2判時1180号113頁
[14]札幌地判平5・10・28(判夕863号249頁)
[15]京都地判平4・10・30(判時1475号125頁)
[16]水戸地裁土浦支部判平5・11・30(判時1325号103頁)「医師が患者に対し解明した病気を正確かつ具体的に説明する義務は…患者が自己決定権を有することから、医師の診療契約上の債務の一内容ということができる」
[17] 高松高裁平成8年判決「フェニトイン等による中毒性表皮壊死(TEN)事件」。被告である国が上告しなかったため、確定した。
[18] 民法698条
[19]民法699条
[20]東京地判平3・7・25(判時1426号94頁)
[21]東京地判平3・7・25(判時1426号94頁)
[22]広島地判平4・12・21(判夕814号202頁)など、多くの判例がこれを指摘する
[23] 大阪高裁判昭61・7・16(判夕624号202頁)
[24] 東京地判昭52・9・26(下民集28巻9〜12号1004頁)
[25] 福岡地判平5・10・7(判時1509号123頁)
[26] ただし、一刻を争う緊急の場合のみはこの限りでない。
[27]新潟地決平6・2・10(判時1503号119頁)
[28] 東京地判平6・3・30(判時1522号104頁)
[29] 東京地判平4・4・10(判時1452号60頁)
[30] 中村哲「試行的な医療行為が法的に許容されるためのガイドライン」判夕825号6頁
[31] 医師法第19条による。「正当な事由」がなければ医師は診療を拒否できない。これは医業の独占を対価とする、医師の公法上の(国家に対する)義務である。
[32] 札幌高判平5・6・17(判夕848号286頁)「医師が患者に対しその判断の前提となる説明義務を尽くしても患者の承諾を得ることができないときは、医師がその医療行為を行わなかったとしても、直ちに債務不履行ないし不法行為上の責任を負うものではない」
[33]名古屋地平元・5・29判決(判時1325号103頁)。本判決では、胆嚢癌の告知をしなかったことに対し、医師は診療契約上の債務不履行責任を負うことはないとした。
[34]東京高平3・11・21判決(判時1414号54頁)
[35]名古屋高平2・10・31判決(高民集43巻3号178頁)
[36] 最判昭56・6・19判決(判時1011号54頁)「手術内容およびこれに伴う危険性を患者又はその法定代理人に対して説明する義務があるが…不確定要素がある場合にはその基礎となる症状把握の程度、その要素が発現した場合の対処の準備状況等についてまで説明する義務はない」
また最判平7・4・25(判時1530号53頁)も同じ趣旨。
[37]名古屋高平2・10・31判決(高民集43巻3号178頁)
[38]名古屋高昭61・12・26判決(判時1234号45頁)
[39]東京地判平4・2・17(判時1477号76頁)
[40] 東京地平5・1・28判決(判時1473号66頁)
[41] 名古屋高裁昭和61・12・26判決(判時1234号45頁)からの引用であるが、同様に東京地判平4・2・17(判時1477号76頁)も、「結果の発生が回避できない場合であっても…杜撰で不誠実な診療をしたときは、これによって患者に与えた精神的苦痛を慰謝すべき責任がある」とする。
[42] 大阪地判昭60・9・13(判夕596号50頁[II194頁])
[43] 大阪地判昭60・9・13(判夕596号50頁[II194頁])
[44]最判昭43・7・16(判時527号51頁)
[45]浦和地昭60・12・27判決(判時1186号93頁)
[46]最判昭57・4・1(民集36巻4号519頁[II74頁])
[47]東京地平4・10・26判決(判時1469号98頁)
[48]静岡地沼津支平2・12・19判決(判時1394号137頁)
[49]東京地平4・10・26判決(判時1469号98頁)
[50]大阪地平7・3・24判決(判夕881号222頁)
[51]東京地昭58・1・24判決(判時1082号79頁)
[52] 最判平7・4・25(判時1530号53頁)では、「患者が医師に入院を勧められ、入院予約をしたにもかかわらず、後に、電話で一方的に入院予約を取り消して、病院を訪れなくなったことは、患者の責任であ」るとされた。
[53] 東京地判平元・3・13(判時702号212頁)
[54] 名古屋地裁平元・5・29判決(判時1325号103頁)。控訴審も同様の立場をとり、最高裁で確定した:最判平7・4・25(判時1530号53頁)。
[55] 東京地平6・3・30判決(判時1522号104頁)
[56]東京地平5・1・28判決(判時1473号66頁)
[57] 最判昭63・1・19(判時1265号75頁)における伊藤裁判官による補足意見
[58] 医師法17条、歯科医師法17条
[59] 「結果違法説」と呼ばれ、通説となっている
[60] 最高裁平成7・6・9判決
[61]札幌地昭52・4・27判決(判夕362号310頁)
[62]釧路地帯広支昭57・6・21判決(判時1105号116頁)
[63]山形地昭60・11・11判決(判夕586号76頁)
[64] 最高裁平8・1・23判決
[65]最高裁事務総局調べ
[66] 支払保険金÷保険料
[67] Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」
[68]原告勝訴率は、1999年の30.3%から16.5ポイント大きく増加の46.8%。
[69] 1995−2001年において医療事故調査会(代表:森功医師)に依頼された539件の鑑定結果についての数字
[70] 「専門性の壁」「密室性の壁」「封建性の壁」とされる
[71] Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」
[72] 小海正勝弁護士
[73] 植木哲「医療の法律学」による。「80年代A」調査は1400件、「80年代B」調査は1000件を対象に調べられた。
[74] 久能恒子「医療裁判の問題点」(2003年3月12日)
[75] 「医療過誤原告の会」会長
[76] 久能恒子「医療裁判の問題点」(2003年3月12日)
[77]東京都三宿病院の内分泌科医長。「医療情報の開示」「医療事故防止」などをテーマに、医療の改善に取り組む。
[78] 鑑定医を引き受ける医師を探すのが困難なことも一因。また裁判官が数年で転勤するため、1つの事例を3〜4人の裁判官が引継ぎしながら担当することも問題とされる。
[79] 2003年3月に「裁判の迅速化に関する法律案」が閣議決定され、第156回国会に提出された。
[80] 関西医事法研究会(2003年6月20日)における植木哲関西大学教授と石川寛俊弁護士の弁
[81] 30年以上医療過誤事件を手がける吉川孝三郎弁護士の弁(Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」より)
[82] 「COML」「オンブズマン」では「相談者が全国にわたる」という定量的統計資料は存在しなかったので、「COML」では相談員の話に、「オンブズマン」では公開ホームページでの叙述によった。「COML」では実際の相談現場に同席し、広い範囲の国内地域の相談者から電話がよせられた事を確認した。
[83] 「医療事故オンブズマン」(略称メディオ)副議長
[84] 日本医事新報2003年2月15日4112号
[85] 厚生労働省医療安全対策ネットワーク事業(ヒヤリ・ハット事例収集・分析)における第5回集計による。平成14年8月27日より同年11月26日までの、89施設8375事例数からの分析。
[86] 石川寛俊弁護士(大阪弁護士会)による
[87] 医療過誤原告の会「設立宣言」より。同会会長は実娘を医療過誤で失った。久能会長の起こした裁判は、最高裁において2003年6月に原告勝訴で確定した。
[88] 「医療事故オンブズマン」(略称メディオ)副議長。「父親を医療事故で亡くしたが、何故死んだかわからない」と述べる。
[89] 国立病院勤務の、ある外科医の言葉(Doctor’s magazine 2000年4月号の特集「医療過誤」)
[90] 2003年6月
[91] 既出。「医療過誤原告の会会長」である久能恒子小児科医。
[92] フライデー1997年5月21日増刊号
[93] 都立病院勤務の、ある整形外科医の言葉(Doctor’s magazine 2000年4月号の特集「医療過誤」)
[94] 大阪弁護士会所属。患者側代理人をしばしば務める。
[95] 日本医師会「医師の倫理」第2章第8節
[96] 日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[97]日本医師会医療安全対策委員会答申(1998年3月)
[98] 2001年5月に厚生労働省に設置された「医療安全対策検討会議」(座長:森 亘 日本医学会会長)において、今後の医療安全対策の目指すべき方向性と緊急に取り組むべき課題について検討を行い、2002年4月17日に取りまとめられた。
[99] 2002年4月17日付
[100] 厚生労働省医政局総務課に医療安全推進のための企画、立案などを行う「医療安全推進室」が設置され、さらに幅広い分野の専門家による「医療安全対策検討会議」も開催された。
[101] 「社会保険旬報」(2003年5月11日発行)による
[102] 2003年5月1日現在で、24都県で設置済み(二次医療圏を含む完全実施は12都県)。2003年度中に37都道府県で設置を完了し、2004年度以降は全都道府県が設置する見通し。
[103] 2003年5月1日時点で未設置だったのは、北海道、岩手、秋田、山形、茨城、栃木、神奈川、福井、山梨、愛知、鳥取、島根、広島、山口、徳島、香川、愛媛、佐賀、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の二十三道県。
[104] 2001年10月から始まり、現在も進行中。既に5回にわたる集計・分析がなされている。
[105] 厚生労働省医政局医療安全対策検討会議「ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」による。同部会は2003年5月に第4回が開催された。
[106] 厚生労働省医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会による(2001年9月11日策定)
[107] 1995−2001年において「医療事故調査会」(代表:森功医師)に依頼された539件の鑑定結果のうち、「非過誤」とされた事例を除く453件の中での件数を示す
[108]「SOAP方式」とは、S:Subjective=患者から得られる主観的情報と、O:Objective=客観的情報を、A:Analysis,Assessment=分析・評価し、そこから問題点を発見し、その問題点解決のためのP:Process=プロセス等を記載していく診療録の記載方式
[109] 日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[110] 小海正勝弁護士(東京都医師会顧問弁護士)による(Doctor’s magazine 2000年4月号の特集「医療過誤」)
[111] 国立病院勤務の、ある外科医の言葉(Doctor’s magazine 2000年4月号の特集「医療過誤」)
[112] 1998年3月 日本医師会 医療安全対策委員会答申。そしてさらに「過去に起きた事故の発生原因を究明する際に、最終的な行為者を特定し、その個人を非難し問責することは、事故の再発防止にとっては役立たないだけでなく、妨げることにすらなり得る」とする。
[113] 都立病院勤務の、ある整形外科医の言葉(Doctor’s magazine 2000年4月号の特集「医療過誤」)
[114]小児科医の大矢幸弘・赤澤晃による「わが国の小児救急医療―外国との比較」(英米独との比較研究)より
[115] 高松高裁平成8年判決「フェニトイン等による中毒性表皮壊死(TEN)事件」。被告である国が上告しなかったため、確定した。
[116] 小海正勝弁護士(東京都医師会顧問弁護士)による
[117] 小海正勝弁護士(東京都医師会顧問弁護士)による
[118] 小海正勝弁護士(東京都医師会顧問弁護士)による
[119] 1998年3月日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」より
[120] 「医療機関の有形および無形の資産の保護」、「患者、訪問者、従業員の傷害からの保護」、「事故の原因や紛争の火だねの検出、分析、対策」および「医療の質をモニター・改善することによる事故や紛争の予防」を目的とする。
[121] 病院はリスク・マネジメント活動を行わなければ、病院の免許を州政府から取得、および維持することができない
[122] 病院はリスク・マネジメント活動を行わなければ、メディケア(65歳以上のアメリカ国民を対象にした社会保険)に加入する患者についての医療費の支払いを連邦政府から受けられない
[123] 病院はリスク・マネジメント活動を行わなければ、JCAHO(第三者医療機関評価機構)の認証も受けられない
[124] 外部の専門家を加え、厚生労働省医政局「リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会」が策定
[125] 患者の権利法をつくる会「医療事故被害防止・補償法要綱案」(2001年9月30日)
[126] 1998年3月 日本医師会 医療安全対策委員会答申
[127] 「国民の生命を預かり健康を増進する使命を担う医師は、何よりもまず人の生命に対して畏敬の念を抱くべきであることはいうまでもない。医師は医療サービスの担い手であるという視点に立てば、患者が安心して医療を受けられる環境を整え、提供することが求められよう。旧くヒポクラテスの誓いを引くまでもなく、医療を通じて患者に加害することは最も避けるべきという当然の理を再確認しておかなければならない。」
「患者が安心しうる環境とは、医師と患者の間に信頼関係が醸成されていることを前提とする。患者からの医師への信頼には、『医師の技術、判断が的確で誤りがないこと』が基本的な前提となる。そのうえで、『患者と医師との意思疎通が円滑に行われること』も求められるというべきである。」
「患者は医療を提供する医師に対して何を最も求めているのか、医師としての基本的な姿勢はどうあるべきかを、ここで今一度すべての医師が自問すべきである。」
[128] 「誰しも自ら犯したミス、エラーや事故の情報を進んで他人に知らせたくはないものである。しかし、国民の生命を預かる医師としては、あらゆる事故の先例を教訓とし同じ過ちを繰り返さない努力をなすべきである。教訓となるべき事故やミスの先例に関する情報は、それを犯した医師本人が、他の医師の学習のためにも進んで提供することが求められる。こうしたマイナス情報が行為者自身から積極的に発信されるためには、医療現場に自由な発言を容認する雰囲気を育てていくことが必要である。」
[129] 「事故の原因検討は、往々にして行為者本人を特定し、その者の不注意や不手際を指摘して反省させるという手法に終始しがちである。しかし、真の事故原因は、何故その行為者がかかる不手際、不注意を犯したのか、それをもたらした原因は何か、という点にあるというべきである。すなわち、原因究明において重要な視点は「誰が事故を起こしたか」ではなく、「何が事故を招いたか」であることを銘記すべきである。また、医療現場の管理者を含む多くの関係者が、率先してこのような視点をもつことは、ひいては先に挙げた自由な発言を許す雰囲気へとつながり、事故予防に有用なマイナス情報を数多く吸い上げることが可能となる。原因追及を続けると、労務管理、人事管理、薬品管理など病院全体のシステム管理が問題になることもあり得ることを指摘したい。」
[130] p「上記(イ)(ウ)で挙げた諸点に配慮し、事故やミス、エラーに関する偽りのない情報を集積しうる体制が整えば、これらの情報をもとに具体的な事故予防対策を整えることが可能となる。」
「こうした事故防止の対策は、個々の医療施設においてそれぞれの設備、人員、その他の事情を考慮して、独自に作成することが望ましい。また作成した事故防止対策は、マニュアルやチェックシートなど、簡明にして実際に活用しやすい形態にまとめることも肝要である。そのうえで予防対策の使用にあたっては、不都合な箇所、不足する箇所等を絶えずチェックし、修正しながら用いていくことが重要である。」
[131] アメリカ医師会は既に1997年9月に、医療事故に関する情報収集とその防止を目的とした財団 The National Patient Safety Foundation at AMA (NPSF) を発足させている。
[132] スタッフへの徹底は大切である。2002年7月12日に厚生労働省の社会保障審議会医療分科会は、東京女子医大病院に、全国で初めて「特定機能病院」の承認取り消しを決めた。手術ミス・隠ぺいの代償として、大学側が申し出ていた自主返上をはねつけて選んだ処分であった。女子医大は事故の報告制度や事故防止のための安全管理委員会を設けていた。しかし、社会保障審議会医療分科会の委員からは「管理者にも、個々の医療者にも安全に対する切迫感が欠けていた」「ルールがあっても、魂を入れていなかった」と、制度が機能しなかったという指摘が続いた。
[133] 1、医療被害例の原因究明(死因検討会を含む)と再発防止義務
2、医療被害者への医療記録の開示義務、報告と説明義務
3、医療被害例の機構への報告と調査協力義務
4、苦情対応窓口の設置
5、事故防止体制の確立
(1) 専任リスクマネージャーの配置 (2) 偶発事象等(インシデント)の集積と分析
(3) インフォームド・コンセントの徹底 (4) 事故防止マニュアルの作成
(5) カルテ監査 (6) 安全教育の実施 (7) 医療の標準化の推進その他診療の質の向上のための研鑽
[134] 日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[135] 患者の権利法をつくる会「医療事故被害防止・補償法要綱案」(2001年9月30日)
[136] 30年以上医療過誤事件を手がける吉川孝三郎弁護士の弁(Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」より)
[137] Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」
[138] Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」
[139] Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」
[140] ある国立病院勤務の外科医の弁(Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」)
[141] 日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[142] 納得感; 一般的には患者の「満足度」という語が用いられるが、「満足度」は一過性のものであり、医療提供側に真に求められているのは、医療の結果に対する最終的な患者の「納得感」であるとの認識に立ち、あえてこの言葉が使われる。
[143]東京高昭61・8・28判決(判時1208号85頁[II226頁])
[144]東京高昭61・8・28判決(判時1208号85頁[II226頁])
[145] 釧路地裁網走支判昭54・1・19(下民集31巻9〜12号1195頁)
[146]東京地昭60・10・29判決(判時1213号98頁)
[147] 民事訴訟法343条
[148]広島地判昭61・11・21(判時1224号76頁)
[149]東京地判平6・3・30(判時1523号106頁)
[150]東京地判平6・3・30(判時1523号106頁)
[151] 小海正勝弁護士(東京都医師会顧問弁護士)による(Doctor’s magazine2000年4月号の特集「医療過誤」)
[152] webzine「医療改善のために」第1号(2001年5月31日)勝村久司の文による
[153] 「裁判問題を前提とする場合は、この指針の範囲外であり指針は働かない」
[154] 特定非営利活動法人「患者の権利オンブズマン」池永満理事長「医療記録開示の法制化を求める意見書」(厚生労働省の「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会」に宛てた文書)(2003年1月23日)
[155] 以上、社団法人全日本病院協会「病院のあり方に関する報告書(2002年版)」(2002年9月)
[156] 社団法人・日本看護協会が2002年秋に行ったアンケート(記入・看護部長)では、回答のあった3434病院のうち、カルテ開示の「規定(指針・手順)がある」と答えたのは49.2%であった。病院別でみると、カルテ開示は国立(回答206病院)では95.6%、日本赤十字などの公的施設(同202)は81.2%など徐々に浸透している。しかし、大多数を占める民間や個人病院(同1739)は30.6%と低い割合にとどまっている。
[157] 厚生労働省医療審議会中間報告
[158] 厚生労働省医政局「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会」(座長:大道久 日本大学医学部教授)
[159] 2003年5月29日
[160] 「第三者の利益を害する場合」「患者本人の心身の状況を著しく損なう可能性がある場合」は、医療機関はカルテ開示を拒みうる。
[161] 個人情報保護法第30条:「個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない」。医療機関は、個人情報取扱事業者に当たる。
[162] 個人情報取扱事業者の義務に関する部分は「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」となっている。
[163] 病院側はミスを否定している。
[164] 「医療従事者の良心的行動を支援する会」(Some-CA/Supporters of Medical Professionals' Conscientious Actions)
[165] 社団法人全日本病院協会「病院のあり方に関する報告書(2002年版)」(2002年9月)
[166] 日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[167]日本医師会医療安全対策委員会答申「医療におけるリスク・マネジメントについて」(1998年3月)
[168] 患者の権利法をつくる会「医療事故被害防止・補償法要綱案」(2001年9月30日)
[169] ジャミックジャーナル(2003年5月号)
[170] 1999/4/6(Tue)15:15頃、営団地下鉄日比谷線上野-入谷駅間の車内で、会社員が喫煙者に喫煙をやめるよう注意したところ、いきなりアイスピックで左胸を数カ所を刺され、約二週間の怪我を負った。
[171] 最高裁事務総局調べ
[172] 1998年3月 日本医師会 医療安全対策委員会答申