裏磐梯のホタル

水路沿い、木立ちの中での乱舞
 

 裏磐梯の水はブナの森より流れ出て、または浸透し、沢水や湧き水となって裏磐梯三湖(桧原湖、小野川湖、秋元湖)より猪苗代湖へと注ぎ込み、
さらに阿武隈川からは太平洋へ、阿賀野川からは日本海へと流れ出ています。
 この広い流域の源流が裏磐梯となる訳ですから、水が綺麗でなければなりません。

 ホタルは綺麗な水のバロメーターであるとよく謂われます。ホタルは通常、光り舞う姿しか印象に無いために陸生昆虫と思われがちですが、
実は一生の大半を水中で過ごす「水生昆虫」なのです。

 都会においては川が汚染されているため、「水が綺麗にならなければホタルは棲めない」という当然の事が、ここ、裏磐梯では沢や湖水が綺麗過ぎるため
「もっと水が汚くならなければホタルは棲めない」という状況になってしまいます。
 ホタルも生き物である以上、餌となる貝、そのまた貝の餌となる植物、といった食物連鎖からは逃れられないので、少しだけ富栄養化した水域を棲家として
選ぶ事となるからです。

 裏磐梯で現在、確認されたホタルはゲンジボタル、ヘイケボタル、クロマドボタル、オバボタル、ベニボタルの5種類です。ヒメボタル生息の可能性が有りますが
未確認です。

 ゲンジボタルは上記の理由等から沢や湖水ではなく、湖を結ぶ水路や側溝に生息しています。
ただし、水路といっても渓流の面影を持った水路であったり、側溝といってもサラサラ流れる小川のような側溝だったりします。
 飛翔期にはカジカ蛙の鳴く漆黒のせせらぎで何百、何千の大きな火の玉のような力強い光りの舞いが見られます。

 ヘイケボタルは沼や湿地に生息し、ハンノキの林の中をフワリフワリと飛び回ります。「飛ぶ」というより「浮遊する」という表現が似合います。

 他のホタルは陸生ホタルで夜間に発光飛翔する種ではないため、別の機会に記述します。



                                        裏磐梯の夏の夜
                 


         飛び立ち



ホタルの語源「火垂る」 雄と雌の出会い




    ゲンジボタル


   ヘイケボタル

 裏磐梯のホタルは1990年頃までは多くの地域で大量に見る事が出来ましたが、以後、徐々に減少し、地元の人達の関心も薄れ始めていました。

2000年になり、ホタルが道路から離れた水路の奥で大量に生息しているのが発見され、観察が開始されました。

2002年、ホタルが移動し、水路に架かる車道の橋付近に生息するようになると見物人が増えてきました。
 裏磐梯は観光地でも有り、更に夏の行楽時期に重なると地元の口コミが数十倍の観光客を集めてしまいます。
「裏磐梯の素晴らしい所を見て欲しい!」という気持ちは立派でも、保護の準備が出来ていないと再び「絶滅」の危機を招きかねないのです。
 「うちの宿泊施設でお客様が捕ってきた沢山のホタルを室内に放したら綺麗だったよ。」という悲しい話も聞きました。
ホタルの生息場所で虫取り網を振り回している人に注意したことや、懐中電灯を持ってホタル捕りに向かおうとする修学旅行生1クラスを制止した事もあります。

 「昔は良かったよ。団扇でホタルを追いかけて、捕まえたホタルはホタルブクロの花に閉じ込めて持って帰り、寝るときに蚊帳の中に放すと綺麗だったなぁ。」
確かに、味あわせてあげたいような回顧の場面ではありますが、上記の文節はどれを取ってもホタルにとっては残虐物語のようです。
 ホタルを見に来た方が全員同じ様に懐かしがってホタルを持って帰ったら、裏磐梯のホタルはひと夏で絶滅してしまいます。

 昔、関西や中部地方でホタル生息数数十万匹を誇っていた名所が今や軒並み絶滅地域となっているのも観光客や地元捕獲業者の仕業と聞いています。
「今、欲しい。」とか「自分だけがよければ。」とか、我欲が集団に紛れて罪悪感とならないのは原始社会の話です。
 現代は「人間をも含んだ大自然の共生」が求められています。食物連鎖と関係なく断たれた自然界の糸は断層となっていつか我々自身に却ってくるからです。
 
2003年、「ホタルと人間の共生」、「ホタルの保護」をテーマとし「裏磐梯ホタルの会」が発足しました。同会は各ホタルイベントや観察会を催す他、
社会への学習啓蒙やホタル環境の調査、保護等を行う団体です。

2005年、夏、裏磐梯ホタルの会の力は未だ及ばず、ホタルの生息地となった真上の橋はウィンカーを点灯させた車で長蛇の列となりました。

願わくば今後、「人間社会」と「ホタルの世界」の別をわきまえた「共生のルールを守る観察者」
が増加してほしいと考えるばかりです。

10年後、20年後にも裏磐梯でホタルの乱舞する光景を見ていたいのです。


              ホタルの生態      
工事中
    ホタルの観察    
工事中


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