姿三四郎人形

  戦前、黒澤明の映画がヒットし、戦後にいたってその続編がつくられるや、人気はますます高まった。
 世の中が戦争の傷跡から復興した昭和30年代には、類似の映画、テレビ、小説、漫画等がいっせいに創作されて世の中に出、柔道人気はさらなる高なりをみせる。
  昭和30年2月に出版された、河出書房版の「大衆文学代表全集6 富田常雄集」の巻末には、松沢光平の解説があって、そこに姿三四郎のモデルとなった西郷四郎の故郷である福島県下では、観光バスの女車掌が
    ここは姿三四郎が柔道を習ったところでございます
と説明する場所があることや、その近くで
  三四郎のこけし人形を発売しているという。
と紹介している。
 松田はまだその姿三四郎人形の実物を見ていないようであるが、昭和20年代の後半にはすでに、三四郎グッズの一つとしてこけしが創作され売り出されていたのには驚かされた。
 発売をした場所は、姿三四郎のモデルになった西郷四郎の出身地というより、観光バスが巡るような会津であろう。
 このこけしについて、詳細に記したものはなく、制作者、販売先、形状、値段等、全く判っていない。
  
  今から紹介する人形も、来歴は不明である。
 品川区の大井競馬場で催されているフリーマーケットで、平成10年5月に150円で購入したものである。
 高さは6センチ弱、台下の直径は2センチ弱、親指ほどの大きさで、こけし人形としては最小の部類のものである。
  首を胴体にはめ込んで、回転するように作られている。彩色は、素木に、白、黒、赤の三色を使用して柔道着姿の三四郎を表現している。三四郎とわかるのは、太もも付近に「姿」と字が書いてあるからである。
 単純な色つけであるが、はだけた胸付近には筋が描かれている。胸毛と言う者もいたが、筋肉であろう。
 ざんばら髪が、素直でぼくとつな三四郎のイメージとよくあっている。

 今でも売られているものなのだろうか。今度、その来歴を調べるため、会津を訪れてみたいと思っている。
2007・2・20